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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<30>クルマなどではたどり着けない、パタゴニア秘密のペンギンコロニー

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 世界中で、動物園でしか見たことがないような動物を野生でたくさん見てきたけれど、これほどまでに愛くるしい生き物がいたのかと、一番癒しを与えてくれた動物がペンギンだ。といっても、自転車で通る地域でペンギンを見られる地域は、南米、南アフリカ、オーストラリアなどごく僅かに限られる。僕は、南米のパタゴニアと、南アフリカでペンギンを見た。寒いところに生息しているイメージがあるペンギンだが、南アフリカでみたケープペンギンは暑い中、まるでバカンスでも楽しんでいるかのように青い海を気持ち良さそうに泳いでいた。それでもそれ以上にパタゴニアで見たペンギンは忘れられないものになった。

驚かせないように四つん這いでゆっくりと進む。この近さで観れるのは本当に感動的だ Photo: Gaku HIRUMA

口コミで広がったコロニー情報

 2011年当時、パタゴニアを走るサイクリストの間でとあるペンギンコロニーが話題となった。1~2年ほど前、偶然ひとつのコロニーのペンギンたちがある海岸に住み着くようになったのだ。公共の交通手段が全くないところにあるため、サイクリストかライダーしかいけない秘密のコロニーは口コミのみで知られるようになった。

南アフリカのケープペンギンはまるでバカンスを楽しんでいるようだった Photo: Gaku HIRUMA

 しかもそのペンギンはパタゴニアで気軽に見られるマゼランペンギンではなく、日本の旭山動物園で冬になるとよちよちと散歩している、あのキングペンギンだった。野生のキングペンギンを柵も何もないところで独占的に見られると思うと、苦労して走っているのも報われる気分で、暴風のパタゴニアを多少寄り道するのも全く苦にはならなかった。

 この時すでに規制が入りそうという噂があったが、この翌年に見事に規制が入ることになり、チリのプンタアレーナスからツアーで行かなければいけなくなったらしいので、本当に奇跡的なタイミングだった。

サイクリストへの最高のご褒美

 そのコロニーはパタゴニアの最果ての島、フエゴ島にある。島なので南米大陸と陸続きではないが、一般的に南米大陸の最南端はこのフエゴ島のウシュアイアという街という認識なので、ほとんどのサイクリストは最後か最初にこの島を走行する。ウシュアイアのさらに南に位置するチリ領の島のプエルトウイリアムスという、元は軍事施設しかなかった場所が近年人が住み、村になってきているので、こちらが本当の最南端だと主張しているが、一般的にはウシュアイアが南米大陸の最南端という認識が一般的だ。

 プンタアレーナスからフェリーでフエゴ島のポルベニールに入り、ウシュアイア方面に進む。国道257号線の合流地点の「Onaisin」の交差点から「Cameron」方面に15kmほど進むと、そのコロニーがあるという。たまたま発生したコロニーなので、なにも標識が建っているわけではないが、サイクリストからの情報を頼りに、そこと思しき場所に辿り着いた。

曲がらずにはいられない標識。南アフリカはペンギンにもクジラにも出会える Photo: Gaku HIRUMA

 自転車を道路から見えないところに止め、ペンギンがいるとされる海岸線に歩いて行くも、全然その姿は見えなかった。30分以上探し、半分あきらめかけた時、ふと見た海岸線とは逆の草原に20羽くらいのペンギンが固まっているのが見えた。この時は本当に嬉しかった。

 はやる心を抑え、ゆっくりと近づいてもペンギンたちは驚く様子もなく、ただただよちよちと歩いているだけだった。さらに驚かせないように四つん這いでゆっくりと近づくと、その愛嬌のある姿に見惚れた。

よく見ると下腹部の抱卵嚢という部分が膨らんでいる。雛か卵を温めているのだろうか Photo: Gaku HIRUMA

 水の抵抗をなくすための流線型のフォルムがなんとも愛らしく、毛皮なのに水を吸い込むことなく、粒としてひとつひとつ胸に付いている水滴さえも良く見え、まるでウエットスーツの様だった。羽毛の白と黒とグレーと引き立て役のオレンジのグラデーションは、自然界にあるものとは信じられない位センス良く配置され、とても美しかった。

よちよち歩く姿が本当に愛らしい Photo: Gaku HIRUMA

 カメラに興味津々で逆に近づいてきてくれる個体もいれば、数体の個体でよちよちと散歩に出かけては戻ってくるようなグループもあった。彼らと過ごした時は、時間の流れと写真の枚数を完全に忘れさせるほど、穏やかに過ごした時間で、苦労して走ってきたサイクリストへの最高のご褒美だった。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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