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山下晃和の「“キャンプ”ツーリングの達人」<7>「三種の“寝具”」スリーピングバッグの選び方 適応使用温度を見極めて温かく軽量化

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 自転車でのキャンプツーリングの内容もグググっと本質に迫り、アウトドアやキャンピングの知識を要するようになってきました。前回は「三種の寝具」のうちの一つ、宿泊するテント等の種類について書きましたが、いずれの宿泊スタイルでもあった方が良いものがスリーピングバッグ(寝袋)です。絶対に寒くならない時期や、近くにすぐ駆けこめる施設がある場合にはタオルケットやサバイバルブランケットといった物でも良いのですが、山岳地域にあるキャンプ場や河原などは地面からの冷気もあるので、文字通り全身をすっぽりと包むことができるスリーピングバッグがおすすめです。そのスリーピングバッグもたくさんの種類があります。「価格の違いでしかわからない」という人のために、詳しく説明していきます。

いよいよ夏目前で、もっとも自転車キャンプツーリングが良い季節になりました。薄着でいけるので荷物の量も減り、スリーピングバッグも夏用で良いので、荷物のかさがぐっと減るのでペダルも軽やかになります Photo: Akikazu YAMASHITA

「封筒型」と「マミー型」の違い

 まずは「キャンプ用」と「縦走登山用」の2つのタイプがあることを理解しましょう。それらは全く異なるもので、いわゆるキャンプ用はファミリーキャンプを想定したもので、「封筒型」と呼ばれる四角い形状をしています。

文字通り四角い形をした「封筒型」。ジッパーを開くと普通の布団として使えるので、春先は布団カバーに入れて家で寝るときに使っています。ファミリーキャンプや家で使う際は重宝します Photo: Akikazu YAMASHITA

 これはジッパーを全部開くと掛け布団のように使えたり、ファミリーで寝る際に連結させて家族揃って川の字になって寝られる、ということでこのような形になっています。

 一方、ミイラのような形から「マミー型」と呼ばれているのが縦走登山用のスリーピングバッグです。こちらは身体にフィットする仕様になっているため体温を溜め込むパワーが高く、冷気に強い。また素材の違いもありますが、小さくコンパクトになり、何より軽量であることが特徴です。よって、自転車キャンプツーリングの場合はこちらのマミー型に軍配が上がります。

国産の羽毛布団メーカーが手がけるトップブランド「ナンガ」。国産製造にこだわり、縫製の美しさはピカイチ。この「ミニマリスム180」は0℃対応で、重さはわずか325g。ウルトラライトハイカーだけでなく、バイクパッキング、自転車キャンプツーリング愛好家には待望のダウン寝袋と言えるでしょう。価格は4万9000円(税抜) Photo: Akikazu YAMASHITA

自分は寒さに強いのか?暑さに強いのか?

 次に自分がどれくらい寒がりなのか、暑がりなのかを考えます。私の場合は体脂肪率が8%前後なので、いわゆる「痩せ型」。とても寒がりなので、常に最悪のケースを想定しています。最悪のケースとは、大雨が降っていて、気温が低くなり、身体がかじかんで動かなくなる「低体温症」になることをいいます。

ナンガの「ミニマリスム180」にクライミットのマット「スタティックV」を併せたことで、寒がりな私でも真冬対応できました。スリーピングマットについては次回で詳しく説明します Photo: Akikazu YAMASHITA

 縦走登山のように遭難などの危険性は低いのが自転車キャンプツーリングですが、山岳地帯にあるキャンプ場などは標高が高いところにある場合もあるので、「100m上がることに0.6℃下がる」ということを考えておいた方が良いでしょう。つまり、夏場の平地で25℃であっても、2000m上れば13℃になることもありえます。大雨が降ればさらに下がることでしょう。

 私はどちらかというと暑さは耐えられる身体なので、夏場でも3℃前後対応の物を使っています。体感温度は人それぞれで違うと思うので、日頃の生活で自分が着ている衣服を見直すと良いと思います。通勤・通学時に人が羽織っている物よりも自分は薄着なのか厚着なのか、比べてみると良いでしょう。

チェックすべきは適応使用温度

 自分が寒がりか暑がりかがわかった上で、次は各メーカーの適応使用温度を見ます。

 英字で「FP」(フィルパワー)と書いてある数字は羽毛の「かさ高性」の単位で、一定の荷重をかけた時の膨らみ度合いを示しています。この膨らみ度合いが、保温力につながります。「700FP以上が高品質」といわれていますが、この単位はそれほど気にする必要はありません。なぜなら自転車キャンプツーリングは遭難して死に至るケースが少ないから。登山のような過酷な状況になる可能性が少ないので、フィルパワーは目安くらいに考えておいて大丈夫です。

ファイントラックの「ポリゴンネスト」。化繊でありながらー12℃が適応使用温度になっているので非常に暖かいです Photo: Akikazu YAMASHITA

 その代わりに「適応使用温度」をじっくり見ましょう。例えばモンベルではナンバー「#0」が−10℃前後の寒冷地を想定しており、「#7」が15℃前後の一番温暖な地域での使用を想定しています。私の場合は、海外ツーリングをメインに旅をしてきたため、スリーピングバッグに関しては前述の通り「−20℃」前後に対応できる物を使っていました。とくに難しかったのは北半球と南半球で、夏と冬が逆転することを考える必要があったという点です。

モンベルの「ウルトラライトダウンハガー」。生地に伸縮性があるので、寝袋内で寝返りが打てます Photo: Akikazu YAMASHITA

 例えばグァテマラを11月に走行したときは赤道に近いため気温が高いはずでしたが、国内第2の都市ケツァルテナンゴは標高が2300mあったのでとても寒かった。日本のような高品質のエアコンがある宿などほぼ無いため、室内も寒く、スリーピングバッグに包まって寝ました。

 その後、ペルーに飛んだのですが、そこからは南半球。一気に冬になるはずが、こちらも赤道に近いため気温が高かった。標高が低い海沿いの砂漠を旅したので、極寒のスリーピングバッグの出番はほぼありませんでした。つまり、自転車キャンプツーリングでは旅をする地域や季節によって寒暖差が激しいということです。日本一周ツーリングや海外ツーリングをする人は特に寒い方を想定しておきましょう。

11月、グアテマラのケツァルテナンゴは朝晩がとても冷え込み、現地の人も皆ウールのセーターを着込んでいました。真冬用のスリーピングバッグが無かったら、夜は眠れなかったと思います Photo: Akikazu YAMASHITA

体に合ったサイズを選ぶ

 メーカーによっては女性用モデルがあったり、身長の高低に応じてショート・ロングの設定があるブランドもあります。自転車キャンプツーリングの場合は、コンパクトになればなるほど快適に移動できるので、カップルやご夫婦でおそろいの物を使うよりは、それぞれ自分のサイズに合った物を購入した方が良いでしょう。

「自転車のキャンプツーリングのスリーピングバッグ選び」のポイントまとめ

・登山用のマミー型で軽量なダウン素材のものを選ぶ
・自分が寒がりなのか暑がりなのかを知り、その上で適応使用温度を見て選ぶ
・体の大きさに合ったサイジングの物を選ぶ

 次回は睡眠の快適さを大きく左右する「スリーピングマット」について紹介します。

山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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