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安井行生流ロードバイクの選び方<1>ロードバイクカタログとどう向き合うか 理想の一台を見つけるための考え方

by 安井行生 / Yukio YASUI
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 「自転車なんてなんでもいい。それで何をするかが大事なんだ―」。自転車に関してよく言われる格言です。機材そのものよりも、それでどんな経験をするか、それで何を達成するか、そのほうが重要なんだと。確かにそれは一つの真理だと思います。でも、僕は「自転車はなんでもいい」とは思いません。「何をするか」と同じくらい「何に乗るか」は大事。そう思ってます。自転車乗りですから。

 じゃあ安井よ、そういうオマエはどうやって自転車を選んでるんだ。この連載では、そんな問いにお答えしようと思います。

ショップには様々な価格帯のロードバイクが並ぶ Photo: Shusaku MATSUO

“自分だけの一台”が大事

 思えば、これまでたくさんの自転車を買ってきました。稼ぎははっきり言って人並み以下ですが、自転車エンゲル係数がすさまじく高く、自慢じゃありませんがギャラから生活費を引いた残りをほぼ全て自転車につっ込んできました(総額は考えたくもありません)。今まで買った自転車は50台以上になると思います。60台くらいかな。中古も多分に含まれますが。

愛車のタイム「アイゾン」(左) と「VXRS」Photo: Yukio YASUI

 最初にお断りしておきますが、そんな僕の「自転車の選び方」を知ったからといって、それが皆さんの参考になるとは限りません。選ぶ基準なんてまさに人それぞれ。これはあくまで僕の主観、偏見、思い込み、固定観念に過ぎません。普遍性のある論ではないので、「なるほどそんな考え方もあるのね」程度に思っていただければ。

 自転車を選ぶ際、まず決めるべきは予算と目的…なんですが、サイクリストの読者である皆さんは、おそらくそういうことを知りたいんじゃないでしょう。そこはもう決まってるでしょうから。

 しかも、「予算と目的」だけでは選択肢を絞り切れません。例えば「30~35万円で、アルテグラか105を搭載した、長距離を快適に走れるカーボンバイク」って、世に何台あるでしょう。その中から、どうやって“自分だけの一台”を選ぶのか。大切なのはそこです。

カタログ重量にこだわらない理由

 フレーム選びからいきましょう。

 まず、僕はカタログスペックはほとんど気にしません。さすがにフレーム重量が1kg違うと登坂性能は変わりますが、850gと650gで走りが変わるかというと、ほとんど変わらないでしょう。もちろん、剛性などの性能が全く一緒であれば、自転車は軽ければ軽いほどいいです。でも実際はそうじゃない。

 重量差があるということは、設計や素材や製造方法が違うはずなんです。それによる走行感の差が数百gの重量差なんか飲み込んじゃう。それに、カタログ重量と実際のフレーム重量が一致するとは限りません。そもそもカタログに華々しく掲載されているその重量は、どんな条件の数字なのか分かりません。フレームサイズはいくつなのか。塗装済なのか未塗装なのか。シートクランプやFD台座などの小物は付いた状態なのか。色によっても重量は変わります。明るい色は発色をよくするため、暗い色よりも多くの塗料を必要としますから。

カタログのスペックはひとつの指標でしかない

 固体差だってあります。ご存知のとおり、カーボンフレームは手作りです。機械でガチャポンガチャポンと自動的に出来上がるわけではありません。プリプレグを切って、人が手で金型にペタペタ貼り付けていくんです。工場内の気温は常に一定にしてあるとはいえ、季節によって成形時の樹脂の流れ方が変わったりもするでしょう。完成後は表面にできた小さな穴をパテで埋めることもある。個体によって重量が増減して当然なんです。

 だから重量なんて細かく気にしてもしょうがない。僕は重量でフレームを選んだことはありません。自分のフレームが何gかなんて気にしたこともないし測ったこともないし知りたいと思ったこともない。好きになった子の髪の長さが50cmだろうが51cmだろうがどうでもいいでしょう。そういうレベルの話だと思ってます。

カーボンフレーム作りは料理と同じ

 カタログにはよくカーボン繊維の種類も載ってますね。「○トンカーボン使用」みたいに。確かに、高価な高弾性糸を使えばフレームは軽く、硬くなります。でも、その○トンをフレームのどこにどれだけ使っているのかまでは公表されていないことが多い。「当社のフレームは○トンを使っておるんだぞ」と言いたいがために、○トンのプリプレグのカケラを一枚貼っただけ、なんてモデルもないとは言い切れないんです。

 素材に関していろんなメーカーのエンジニアに質問すると、判を押したように同じ比喩で答えが返ってきます。

 「カーボンフレーム作りは料理と同じだ。いい食材を手に入れたからといって、必ず美味しい料理が作れるわけではない」

製造環境によっても個体差が生まれるカーボンフレーム作りは料理と同じと言われる

 言い得て妙だと思いませんか。実際、24トンカーボンなのにめちゃくちゃよく走るフレームもあります。60トン以上の超高弾性糸を使っているはずなのに大したことないフレームもあります。自転車の走りは重量や素材じゃ決まらないんです。

スペックとの向き合い方

 だからスペックを気にしてもしょうがない。フレームのスペックって、人間で言えば学歴とか身長とか体脂肪率とか年収のこと。それらもまぁ大事っちゃ大事ですが、それで人間が決まるわけじゃない。大切なのは人となりでしょう。一流大学卒で容姿端麗で高給取りのやつが、必ずしもいい友人・いい配偶者になるとは限らないように、スペックが優れている自転車が自分にとっていい自転車になるとは限らない。

 スペックを完全に無視していいとは思いません。カタログには、少なくとも真っ赤な嘘は書かれてませんから。スペックはスペックとして頭の中に入れておき、必要なときに取り出して、一つの判断材料として使用する。そういう感じでいいと思います。

 次回は、具体的なフレームの選び方について書く予定です。

安井行生
インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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