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日本人がまだ知らない「e-BIKEの世界」<3>e-BIKEと電動アシスト軽快車は何が違う? 欧州モデルとの違いは?

by 難波賢ニ / Kenji NANBA
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 アップダウンのある市街地でのスタンダードとなりつつある電動アシスト軽快車(通称:電動アシストママチャリ)とe-BIKEは何が違うのでしょうか? その違いを明らかにしつつ、日本と欧州のe-BIKEの違いについても触れていきます。

e-BIKEとは何か

 e-BIKEとは、私達が普段乗っているロードバイクや、MTB、クロスバイクなどのスポーツサイクルに、スポーツサイクル用に開発されたドライブユニットを搭載(もちろんユニットとバッテリーを搭載するためにフレームは専用に開発されます)することで、スポーツ用の電動アシスト自転車としたもののことを指すと考えるとわかりやすくなります。

e-BIKEと電動ママチャリの違いを定義から見ると、e-BIKEらしさとは何かがわかります Photo:Kenji NANBA

 普通の軽快車(通称:ママチャリ)を電動アシスト化したものが電動アシスト軽快車です。もちろんその最大の目的は実用です。実用での使いやすさやコスト、汎用性を意識して開発されたフレームとドライブユニットを装備する電動アシスト軽快車と、スポーツ用途のe-BIKEでは根本的に目的が異なります。

ヤマハのドライブユニット。BB軸で直接アシストできる機構となっているのがe-BIKEの特徴 Photo:Kenji NANBA

 e-BIKEのドライブユニットの中で、一番多いタイプは、ボトムブラケット部分にドライブユニットを装着したミッドマウントタイプです。ドライブユニットメーカーはシマノ、ボッシュ、ヤマハ、パナソニック、バーファンが国内でも欧州でも強く、欧州に行くと他にもブローゼやファズーアなど日本に参入していないメーカーがあるものの、シマノ、ボッシュ、ヤマハが3強という状況には変わりありません。

 e-BIKE用のドライブユニットは、大トルク、レスポンス、軽量化の面で軽快車用のユニットとは大きく異なり、ヤマハの例を挙げると、BB軸をギアを介して直接アシストすることでスポーツ用のレスポンスを実現しています。

 一方で軽快車用のユニットでは二軸式という機構を多くのブランドが採用しており、これはBB軸ではなく、ドライブユニットの後ろにアシスト軸があり、こちらからチェーンを引っ張ることでアシスト力を得ています。しかし、レスポンスの鈍いマイルドなアシスト感はスポーツとは程遠いものがあります。

 また、スポーツ用途を想定していないので、フレーム設計への影響も大きく、軽快車用のユニットではリアセンターを詰めたスポーティなフレームジオメトリーを実現することは不可能です。一方でバッテリーをシートポスト後ろに積載できる仕様で、ステップインフレームの設計を考えており、e-BIKE用のドライブユニットとは根本的な設計思想の違いも見て取れます。

いわゆるママチャリタイプではリアセンターを詰めたジオメトリ―は不可能 Photo: Kairi ISHIKAWA
ドライブユニットの後ろにアシスト軸 Photo: Kairi ISHIKAWA

中間カテゴリーも存在

 この電動アシスト軽快車は日本独自の文化として育ってきた自転車です。日本ではこれほど見かける車両形態でも、そもそも超短距離の移動のための電動アシスト自転車という需要が存在しない欧州では事実上存在しません。一方で、ヤマハで言えばPAS CITY-X、パナソニック・ジェッターなど、スポーツ用のe-BIKEと電動アシスト軽快車の中間のようなカテゴリーの自転車のことをe-BIKEと呼ぶのかどうかについては議論が別れているのが現状です。

電動アシストサイクル「ジェッター」(右)と「ハリヤ」 Photo: Yoshiyuki KOZUKE

 話が脱線しますが、この議論については「onion」という英単語について考えてみるとわかりやすいかもしれません。英語圏で「onion」と言ったときにほとんどの人が思い浮かべるのは日本語で言うところの「玉ねぎ」です。さらに、長ネギや細ねぎも「(green)onion」と呼ばれることもありますし、ニラを端的に表すのは「leek」ですが「onion」の一種とも考えられなくもないです。広義ではニンニク(一般的にはガーリックと呼ぶ)辺りも「onion」の類でもあるけど、やはり一般的には「onion」と言ったら玉ねぎを指します。

 このような具合で「e-BIKE」と一言で言ったときには、スポーツ用の電動アシスト自転車を表すと考えるのが一般的ですが、広義では実用の電動アシスト自転車や、それをもう少しスポーツ風味に仕立てたものもe-BIKEと呼んでも良いというのが欧州でのe-BIKEの呼び方の現状です。

 「水着」と言ったときに、水泳をしている人なら競泳用の水着を思い浮かべますが、一般的には「水着」と言ったらビキニも含めて水着です。そうした議論と同じで、狭義でスポーツ用電動アシスト自転車を指すならスポーツ用のe-BIKE、もしくはスポーツe-BIKEと呼ぶと考えても良いのかもしれません。

欧州仕様との違いと日本仕様の良さ

 さて、そのe-BIKE。日本仕様と欧州仕様の差についての議論が良く聞かれるが、同じユニットで欧州仕様と日本仕様を乗り比べた人は、そんなに多くないはずです。

 日本と欧州のレギュレーションの違いは、日本はアシスト比率で規制しているのに対して、欧州は出力で規制しているという点が大きく異なります。

 日本仕様では、ライダーの出力に対してユニットは2倍までアシストすることができますが、欧州仕様では250Wのアシストが最大(これを超えると日本で言うところの原動機付き自転車、通称:原付き扱いになるのは欧州も同じ)です。そして、日本仕様ではアシスト力は10km/hを超えると24km/hに向けて逓減する必要があり、アシストの上限速度は24km/hまでとなります。一方で欧州仕様は25km/hを超えたら直ちにアシスト停止となり、ほんの少しだけアシスト上限速度が低いのが日本仕様の特徴です。

 この法律の差が実際のバイクでどう現れるのかと言うと、勾配20%ぐらいの坂道で時速10km/h程度で走っている分にはユニットが同じなら欧州仕様も日本仕様も大して変わりません。一方で、日本仕様は緩い坂道で18km/h程度になると明確にアシスト力が減ることを感じますが、欧州仕様は23km/h程度でもどんどんアシストされます。

 よって、緩い坂道を走っている時の巡航速度が欧州仕様のほうが5km/h程自然に速くなりますが、心地よいスピードで走っている限りは日本仕様も欧州仕様もものすごく坂道が楽という点については共通しています。

アシスト上限速度は海外のほうが高いものの、バッテリー稼働時間を考慮してアシストを落としたモードで乗車しているライダーが多くいます Photo: Kenji NANBA

 そして、スリックタイヤの付いたe-BIKEでロードバイク的な走り方をしようとすると、どちらもアシスト上限速度が全然足りず、乗っていて辛いという点では変わりません。日本仕様の方が18km/h-24km/hでのアシストが低い分、電池の持ちは良いと言うのも特徴です。

 とはいえ、実際色々なユニットを乗ってみると、法規制自体の差よりもユニットのトルクや性能差が大きく、乗り慣れてくると日本仕様でなんの過不足もないというのが現実です。バッテリーが今の2倍ぐらいの容量が普通になってきた頃には物足りないと感じる日も来るかもしれませんが、現状のバッテリーだと500Whタイプですら、1充電で乗れる時間は約4-5時間程度です。これが欧州仕様で常にアシスト最高モードだと各社2.5時間程度しか乗れないことを考えると、日本仕様の方が良い気もしますし、実際ヨーロッパでも多くのユーザーは、バッテリーを節約するためにアシストは少し落としたモードで乗っている人が多いのが現状です。

難波賢二
難波賢二(なんば・けんじ)

自転車ジャーナリスト。1979年生まれ。国立大学在学中より自転車専門誌などに寄稿。e-BIKEの黎明期よりその動向を取材してきたジャーナリストとして知られ、日本で最初のe-BIKEオーナーとして知られる。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られるなど、世界の自転車業界に強いコネクションを持っている。

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