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日本人がまだ知らない「e-BIKEの世界」<2>e-BIKEはなぜ海外で流行ったのか、若者も楽しむドイツの事情

by 難波賢ニ / Kenji NANBA
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 いくらインターネットとスマートフォンで世界中の情報が手に入る時代になったとはいえ、世界各国の現地の様子は伝聞だけではなかなか伝わって来ないのが現実です。e-BIKEの欧州での爆発的な普及についても、遠く極東の日本にいる限りはどんなに普及していると言われても、イマイチ実感がないのが現実でしょう。しかしながら、e-BIKEの本場、ドイツを含む欧州での出荷台数はシマノの調査によると昨年213万台を記録したといいます。

欧州ではe-BIKEが爆発的人気に Photo: Kenji NANBA

e-BIKEを語るうえで外せないドイツ

 EU圏内でのモーターサイクル(125cc以上)の出荷台数は、年によって増減があるものの、およそ90万台から100万台のレンジで推移していることを考えると、213万台という数字がいかに大きな数字かがわかります。

 その中でも、中心となるのはドイツとベルギー・オランダ・ルクセンブルクを合わせたベネルクス三国です。特にドイツでは昨年ついに出荷台数が70万台を突破し、今年も出荷台数は2018年を二桁パーセントの増加ペースで推移しているといいます。

 2010年頃までは「ほぼ存在しなかった」と言っても良いe-BIKE市場が、どうしてものの10年で人力のスポーツサイクルを大きく上回るシェアを獲得するようになったのかというと、ドイツの国民性とe-BIKEの素性がマッチしていたということに尽きるでしょう。

ドイツのサイクルショップでは「E-BIKE」の文字で大々的にアピール Photo: Kenji NANBA
ドイツのサイクルショップ店内の様子 Photo: Kenji NANBA

 ロジカルで勤勉、そして大らかさが特徴のドイツは、そもそもスポーツサイクルの出荷台数で世界2位の大国ですが、イタリア、フランス、スペインなどのラテン各国のように「自転車=レース(もしくはスポーツ)」という構図とは少々異なり、「自転車=アクティビティ」となっています。ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャが3大ツールですが、出荷台数世界2位のドイツのレースがそこに存在していないことも、「自転車=アクティビティ」を表しています。

 もちろんドイツでもロードレースはありますし、MTBのワールドカップだって毎年開催されていますが、あくまでそれは観戦するスポーツであって、自転車レースを観戦する人でも、自転車の楽しみ方はスポーツではなくアクティビティもしくはフィットネスというのが主流です。90年代の後半から2000年代の前半にロードレース界を震撼させたドーピング問題(ヤン・ウルリッヒらドイツの主要選手がライセンスを剥奪された)も、真面目なドイツ人の脱レース化トレンドを加速させたと言えます。

最初から人気爆発? ドイツのe-BIKE事情

ボッシュのドライブユニット Photo: Kenji NANBA

 さて、そうした中で主にアクティビティとして自転車を楽しんできたドイツ人ですが、e-BIKEが登場した2010年頃に突然全員がe-BIKEに飛びついたかというと、そうではありませんでした。今の日本人、もしくは昨年の日本人と同じようなメンタルで既存のサイクリストの多くはe-BIKEに否定的でした。もちろん一般の非サイクリング層の人達がe-BIKEの存在に気がつくわけもなく、2011年のBOSCH(ボッシュ)のアクティブラインの市場投入で本格的にスタートしたe-BIKEも静かな出だしでした。

 とはいえ出荷台数世界2位のスポーツ自転車大国なので、自転車に乗っている人は非常に多く、ベテランの数たるや相当なものです。60歳を超えて、70歳が見えてくると誰もが関節のどこかに慢性的な故障を抱えたり、心肺能力に不安を覚えたりするものですが、そうしたベテランシニアの心を鷲掴みにしたのが初期のe-BIKEだったのです。

 こうして2013年頃まではe-BIKEといえばお爺さんサイクリストの乗り物だったのだが、徐々にe-BIKEに対する認知が上がるにつれて、ハードコアなサイクリストの中で「ひょっとしてe-BIKEを購入したら彼女とスイスの峠に走りに行けるかも?」という思考が生まれてきて、プレゼントにe-BIKEを購入する人が現れ始めました。

 購入したe-BIKEをプレゼントして、二人で峠に走りに行くのですが、当の本人は人力です。欧州仕様の多くは日本仕様と同じく最高250Wのアシストなのでプロレベルで自転車に乗っている人でなければe-BIKEに乗った彼女(もしくは奥さん)について行けるわけもなく、購入した翌週には自分のe-BIKEも買いに来るというトレンドとなりました。

 2014年頃のこの流れに合わせてドライブユニットメーカーも本格的なe-MTB用のユニットを投入したため、既存サイクリストの心を捉えて、主に40代、50代のサイクリストがこぞってe-BIKEに乗り換え始めました。こうして自転車マニアの間でe-BIKEに火がつくと、誰でも登れるその性能から、今まで自転車に乗っていなかったけど、ハイキングやジョギングなどのレジャーを楽しんでいたアクティブな人達にも、e-BIKEは広がりを見せて今日に至っています。

アクティビティとしてe-BIKEは欧州で普及しつつある Photo: Kenji NANBA

 ドイツでは主にこうした広がりを見せてきましたが、それ以外の欧州でも数年遅れで波及的にトレンドは広がっており、右肩上がりの出荷台数となっているのが現状です。e-BIKEをレースや本気のスポーツ走行をするための乗り物と捉えている人は少数で、多くの人は気楽に山を登って、綺麗な景色を眺めたり、リラックスしたりすることのできる乗り物だと考えています。

 ドイツでも「自転車=スポーツ」と捉えている人は、一人で乗るときは人力のMTBやロードバイクに乗ることが多いですが、そうした人にもグループで山へ走りに行くならe-BIKEを選ぶという考え方が出始めています。

難波賢二
難波賢二(なんば・けんじ)

自転車ジャーナリスト。1979年生まれ。国立大学在学中より自転車専門誌などに寄稿。e-BIKEの黎明期よりその動向を取材してきたジャーナリストとして知られ、日本で最初のe-BIKEオーナーとして知られる。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られるなど、世界の自転車業界に強いコネクションを持っている。

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