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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<295>ジロ・デ・イタリア2019序盤戦あれこれ 初山コメントやスプリント議論など

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 5月11日に開幕した、2019年最初のグランツール「ジロ・デ・イタリア」。3週間をかけてイタリア国内3578.8kmを走る戦いは、まだまだ始まったばかり。とはいえ、序盤戦といえども、次々とビッグトピックが生まれるのがグランツール。そこで今回は、「これぞジロ」と言わんばかりに現れているさまざまな話題を挙げ、この先に控えるステージを観ていくうえでの楽しみとしたい。

ジロ・デ・イタリア2019第3ステージで単独逃げで見せ場を作った初山翔。日本に明るい話題を届けた =2019年5月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

ロングエスケープで世界に存在をアピール 初山コメント

 ジロ序盤戦で日本に明るい話題が届いた。第3ステージでの初山翔(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)の単独逃げは、初山個人や3年ぶりジロ参戦のチームを全世界にアピールするとともに、日本人ライダーがグランツールでもチャレンジできることを示したものになった。

着々とレースをこなしている初山翔。大会期間中、さらにトライする場面が見られるはずだ =ジロ・デ・イタリア2019第2ステージ、2019年5月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このステージは、かねてからスプリンター向けと言われていたこともあり、有力スプリンターを抱えるチームを中心にメイン集団のコントロールがなされたが、初山のレース後コメントにもあるように、逃げのオーダーが出ていた中でそれを忠実に実行したあたりはチーム内での評価も高まっていることだろう。

 海外メディアによるインタビューでは「疲れた」と口にしていた初山だったが、同時に「ジロは長いので、今後もできる限りのことはしていきたい」とコメント。この先のステージで、再びトライする姿が見られそうだ。

 チームのリリースによる初山のコメントをお伝えしよう。

初山翔のコメント

 監督のマリオからは「逃げに乗れ」と言われていた。昨日も同じオーダーが自分とチーマに出ており、昨日はチーマが乗ったので、今日はお前が行け!という感じだった。風もあったので集団にいてもラクではないと思っていたので、スタート直後からアタックを仕掛けた。誰も付いてこなかったので、タイム差が1分ほど開いたところで少し後ろを待ったが、誰も来ず、これはもう一人で行くしかないと思った。この状況で逃げ切りの可能性はないと思っていたが、できるかぎり逃げたい、ゴールから近い位置で捕まりたいと考えながら走り続けた。無茶に踏んでいっても、捕まることはわかっていたし、今日のゴールまでの展開や、まだ3週間レースが続くということも考慮して無理をしない程度に温存しながら走った。

 今日、逃げに乗れたことは良かったと思う。携帯がなりやまないくらいの大きな反響をいただいていて嬉しい。明日からもエネルギーを温存できるところはとことん温存しながら、逃げなのか、何かできることをしたい。今日1日で3週間分の仕事をしたとは思っていないので、また明日からも引き続き頑張りたいと思う。

高度なテクニックが求められるスプリントをいかに戦うか

 第3ステージのスプリントでは、トップでフィニッシュしたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が他選手の進路をふさいだとして降着になった。

ジロ・デ・イタリア2019第3ステージのスプリントフィニッシュ。1着でフィニッシュしたエリア・ヴィヴィアーニ(右から2人目)だったが進路妨害があったとして降着になった =2019年5月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 これは、フィニッシュ前100mでヴィヴィアーニが加速すると同時に、進行方向左へ急速にラインをとり、後方からスピードを上げていたマッテオ・モスケッティ(イタリア、トレック・セガフレード)の動きを侵害していたとジャッジされたもの。実際にヴィヴィアーニとモスケッティは接触しかけており、モスケッティの走行ラインにも乱れが生じている。

 スプリントにおけるさまざまなトラブルは、ジロにはつきものといえる。進路妨害や大規模なクラッシュはこれまでにも数多く起こってきた。その原因として、最終局面でのテクニカルなレイアウトを挙げる指摘は多く、この日も最後の直線に入るシケインが混乱を招いたとの旨をフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAE・チームエミレーツ)が語っている。

繰り上げで第3ステージ勝者となったフェルナンド・ガビリアだが、ポディウムでは硬い表情のままだった =2019年5月13日 Photo: Gian Mattia D'Alberto - LaPresse

 技術を要するポイントを経て目指すフィニッシュへは、集団内でのポジションが悪かった場合に多少強引にでも前へ上がっていこうという意思が働くのは、選手である以上は仕方のないこと。一方で、選手によってはそんな状況下でもスマートに戦って勝つこともあるだけに、どれが正解かを見出すことは難しい。ただ、今大会の第3ステージでの裁定だけを見るならば、ヴィヴィアーニの走行ラインに問題があったと捉えるべきだということだろう。この判定に関して、最終ストレート直前のシケインの存在は大きな要因にはなっていないと筆者はみている。

 今後もテクニカルな区間を抜けてフィニッシュを迎えるステージが数々控えている。それらが果たしてどんな結果をもたらすのか、注視していきたいところだ。

 なお、ヴィヴィアーニは降着処分により、ポイントが50点減点に。第3ステージを終えてポイント賞首位のマリアチクラミーノを着ることになったガビリアとの差が82点となってしまい、事実上同賞争いからは脱落。今後は、ステージ優勝にターゲットを絞り、開催地イタリアの期待に応えていくことに集中することになるだろう。

ログリッチェの判断は? 気になるマリアローザの行方

 ボローニャでの開幕ステージを制したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)は、第4ステージを終えた時点で個人総合首位の証であるマリアローザを守っている。相次ぐクラッシュの発生で波乱となった第4ステージでも集団前方でこれらのトラブルを回避。総合争いのライバルに対してリードをさらに広げることに成功している。

第1ステージの個人タイムトライアルで快勝したプリモシュ・ログリッチェ =2019年5月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このところの充実が、自信を生んでいることは確かだ。自らの走りはもとより、風が強かった第3ステージでのチームの走りにも手ごたえ。「チームはオランダにベースであり、強風下のレースにおける対処法を熟知している」とコメント。リラックスして220kmのステージを走り切ることができたとしている。

 個人総合優勝を狙う選手が大会序盤からリーダージャージを着用し、それを勝負どころまで守り続けるべきかの議論はさまざまなされるが、本人は「毎ステージ、レースの展開を見ながらどうするべきかを考えたい」とコメント。いまのところ、ジャージをキープし続ける意思があるか、または戦術的な理由で一度手放す考えがあるのかについては明言していない。

 リーダーチームの責任として、プロトンを統率するのが暗黙の了解とされているあたりがこの競技の特性でもあるが、今大会の序盤戦を見る限り、スプリンターチームが毎ステージ早い段階で集団コントロールを引き受けており、ログリッチェ擁するユンボ・ヴィスマが多くの仕事をしている様子は見受けられない。ようやく第4ステージで集団コントロールを行う時間が増えてきた印象だが、それでもある程度力をセーブしつつレースを進められているものとみられる。

アシストに守られながら走るマリアローザのプリモシュ・ログリッチェ(左から4人目) =ジロ・デ・イタリア2019、2019年5月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 また、大会第1週のロードレースステージの難易度は高くても星3つ。さらには、個人総合2位につけるサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)とのタイム差は35秒。これらの要素を鑑みつつ、トラブルなく順当に走れば、ログリッチェがしばらくの間マリアローザを着続ける可能性が高い。何らかの動きがあるとすれば、34.8km個人タイムトライアルで争われる第9ステージとなりそうだが、タイムトライアルに絶対的な自信を持つログリッチェであれば、さらにリードを広げることも十分に考えられる。

 まだまだ先は長く、大会第2週以降に控える本格的な山岳ステージで大きな動きが待っていることだろう。それでも、現時点でジロ全体の方向性がログリッチェやユンボ・ヴィスマにかかっていることは確か。彼らが大会前半戦をどうこなしていくかで、“本番”とも言える山岳での戦いも少しずつ見えてきそうだ。

 ちなみに、大会の最初から最後までマリアローザを着続けたのは、1919年のコンスタンテ・ジラルデンゴ、1927年のアルフレッド・ビンダ、1973年のエディ・メルクス、1990年のジャンニ・ブーニョの4人。ログリッチェがジロ史上5人目となる偉業に挑戦できる有資格者であることは、この先に待つ総合争いに向けて頭の片隅にでも置いておきたい。

今週の爆走ライダー−エディ・ダンバー(アイルランド、チーム イネオス)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 一度は目標の修正を余儀なくされていた。シーズン初めにターゲットに据えたジロは、2月のレースで負ったけがの回復が思わしくなかったことから諦めていた。スケジュールを変更し、新たな目標に向かって気持ちを切り替えていた。

ツール・ド・ヨークシャー最終日のポディウムに上がったエディ・ダンバー(右から2人目)。アシストとしてチームの勝利に大きく貢献。自らも個人総合3位と好リザルトで終えた =2019年5月5日 Photo: SWPix

 その矢先、ジロを控えたチームの状況は大きく変わった。総合エースを予定していたエガン・ベルナル(コロンビア)のけがにより、チーム方針の大幅な切り替えが必要な状況となったのだ。ベルナルの離脱を惜しみつつ、いったん手放していた希望を再びつかむチャンスであることも分かっていた。だから、「ジロに出たい」とインタビューを通じて公言した。

 ツール・ド・ヨークシャーでは、チームの勝利を決定づける最高のアシスト。クリストファー・ローレス(イギリス)を個人総合優勝に導き、自らも3位フィニッシュ。ホームレースでの勝ち星にとどまらず、その働きでジロのメンバー入りを手繰り寄せたのだった。

 脚質はクライマー。若いメンバーで臨んでいるこのジロでは、山岳をメインにアシスト役を担う予定だ。総合エースのタオ・ゲオゲガンハート(イギリス)が第3ステージで遅れをとったが、そこからの巻き返しを狙う。きっと、逆襲の先鋒にはダンバーの姿があることだろう。

 昨年、所属していたアクアブルースポートが資金難でシーズン途中で解散するなど、苦労した時期もあった。オールラウンドに力を発揮できる選手として見込んだ今のチームへの強い忠誠を誓っている。クリストファー・フルームやゲラント・トーマス(ともにイギリス)といった王者が身近にいて、同年代の実力者たちと切磋琢磨できる環境にモチベーションは高い。思いがけず取り戻すことになったジロの舞台から、彼の未来は大きく広がっていくことだろう。

グランツールデビューを飾ったエディ・ダンバー。ジロ・デ・イタリアからキャリアを大きく広げていくつもりだ =2019年5月11日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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