title banner

栗村修の“輪”生相談<153>30代男性「上り勾配がきつくなってくると集団から遅れてしまいます」

  • 一覧

 
スポーツバイク歴は10年くらい、ロードバイクに本格的に乗り始めてからは、5年くらいになります。現在は平日は室内でのローラー、休日等は仲間とロング等を楽しんでいます。

 ヒルクライムについてお聞きします。

 練習会等で集団で走っていて、平地や緩い感じの勾配の道なら気にならないのですが、勾配が一桁後半辺りからの坂道になると、どうしても遅れ気味になり付いて行くのが辛くなります。

 もちろん、体重差があるので多少の差はあると思っていますが、個人的に脚力差はそんなに無いと思ってはいます。クライマーになりたいとかは思ってないけど、もう少し速く上りたいとは常々思っています。

 少し抽象的かもしれませんが、何が原因だと思いますか? 具体的なやり方等あれば、アドバイスをお願いします。

(30代男性)

 上りとは不思議なもので、一口に「得意・不得意」とは言えないんですよね。

 基本的なことですが、上りの得手不得手は、まずは体重の影響が考えられます。重い人ほど、勾配がきつくなるにつれて不利になります。しかし、質問者さんはそのことは自覚されたうえで「脚力差はそんなにない」と書かれているので、別のところに理由を求めたほうがよさそうです。

 実は現役時代の僕は比較的上りが得意な選手でした。身長171cmでベストの体重が56kgと言えばクライマー寄りだったことがわかるでしょうか。

 ところが面白いことに、得意な上りもあるんですが、なぜかダメな上りもあるんですよ。たとえば、きつい上りで知られる日本CSCは大得意だったんですが、同じく上りが目立つ群馬CSCでは先頭集団に入れないこともしばしば。また、同じ日本CSCでも逆回りになるとやはり僕には向いていないように感じられるんです。

 日本CSCの正回りは短いけれど勾配がきつい上りが繰り返し現れるのが特徴です。そういう上りは僕に向いているんですが、もっとスピードが出る群馬CSCや日本CSCの逆回りはアドバンテージが低下する感じがするんですね。逆に、日本CSCではさっぱりなのに群馬ではいつも強い選手もいました。

 上りって、実はとても多様なんです。勾配の違いはもちろん、その長さや現れ方によって求められる走り方が大きく変わるからです。そして、選手の脚質も厳密に分類すると「30分以上の上りが得意な選手」「1分程度の激坂が得意な選手」「勾配が激しく変わる上りが得意な選手」などと分けられるはずです。

 その理由はいくつかあると思いますが、その一つにダンシングの得意不得意があるように感じます。

上り坂は勾配や長さに応じて、適した上り方が変わってくる Photo: Yuzuru SUNADA

 勾配がきつくなるほどダンシングの重要性が増します。シッティングとは異なる筋肉や体重を使うダンシングはどんな場合でも重要なテクニックなのですが、速度が出る平坦や緩い上りでは欠点も目立ってしまいます。第一に、上体が起きるので空気抵抗が増えます。第二に、平地のように慣性が働いている状況ならシッティングのほうが効率的です。だから平地でのダンシングは、スプリントや加速時を除くとあまり有効とはいえません。

 ところが、速度が落ちる激坂だと上に書いたダンシングのウィークポイントがほぼなくなるんですね。したがって、ダンシングの重要性が増すというわけです。激坂では、ダンシングスキルがパフォーマンスにかなり影響します。

 長々と解説してきましたが、僕はシッティングが苦手で、ダンシングが得意な選手でした。短い激坂が続く日本CSCが得意だった理由はここにあると思っています。ヨーロッパの選手も、激坂を得意とする選手はダンシングを多用する傾向にありますよね。

 この輪生相談でもなんどもお伝えしたことですが、ダンシングの重要性は見落とされている気がします。たとえば、パワーやパワーウエイトレシオにこだわる方は多いと思うのですが、その「パワー」はシッティングでしか計っていないんじゃないでしょうか。しかし、上りで5分なりの全開走をするとして、シッティングで走った場合よりもダンシングの場合のほうが良いタイムがでる方は絶対にいると思うんです。現役時代の僕のように。

 というわけで、質問者さんはダンシングのスキルを磨いてみてください。ダンシングはシッティングとは別物なので、慣れていないならトレーニング次第でかなり上達します。短い峠を、フォームを意識しながらダンシングだけで上ってみるといい練習になりますよ。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

栗村修の“輪”生相談

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載