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案外深いディスクロードの世界<6>結局、リムブレーキとディスクブレーキはどっちを選べばいいのか

by 安井行生 / Yukio YASUI
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 さて、最終回です。「ディスクブレーキの将来の動向」と「リムブレーキとディスクブレーキ、どっちを選べばいいのか」について書いてみようと思います。まず将来の動向ですが、ディスクブレーキ化が進むのは間違いないでしょう。

プロレースのディスクロード解禁をうけ、市民レースでもディスクロードが見られるようになった Photo: Masahiro OSAWA

リムブレーキモデルはなくなるのか

 プロレースでも解禁されたことですし、商品数は一気に増え、ディスクロードがより安全で万人向けの乗り物になることは間違いありません。ただ、リムブレーキもそうそう簡単にはなくならないと思います。23Cタイヤが、機械式変速機が、スチールフレームが、チューブラータイヤがなくならないように、リムブレーキも細々と生き残るでしょう。「軽い」「乗り味がいい」「自分でいじれる」「構造体としてスマート」など、理由はたくさんあります。

ホイールの着脱、ブレーキのあたり調節が簡単にできるのもリムブレーキモデルの魅力 Photo: Masahiro OSAWA

 だから、「リムブレーキ用のパーツがなくなるんじゃ?」と思っている人は、心配しなくていいと思います。だって今世界中にあるロードバイクの98%くらいはリムブレーキでしょう。それが5年後に全部使えなくなるなんてありえません。少なくともみなさんが元気に自転車に乗っている間は問題なく運用できるはずです。「早いとこリムブレーキ手放してディスクロード買わなきゃ」なんて焦らなくていい。リムブレーキに満足してるなら、愛車をかわいがってあげてください。買い替えのタイミングが来たときに、ディスクロードを候補に入れればいい。

今買うならどちらを買うべきか

 では、最後のテーマ。今買うとしたら「どっちを買うべきなのか」。

 えー、ここでちょっと僕の思い出話に付き合ってください。

 「ロードに乗って金もらえるって最高じゃね?」というシンプルかつ軽薄な理由でメッセンジャーになったのが2002年くらいのことでした。当然ですが雨でも雪でも、カオスな都心の道路を、それなりのスピードで走らなければなりません。

 で、メッセンジャーになって初めての雨の日、こう思いました。あ、こりゃそのうち死んじゃうな、と。ロードバイクブームは影も形もなく、メッセンジャーの認知度はかなり低い時代で、ドライバーはおしなべて「チャリンコは歩道走ってろよ」的なメンタリティ。ドア開け、幅寄せ、急停車に急左折なんて、文字通り日常茶飯事でした。そんな状況では、当然ですが一日に何度も急制動をしなければなりません。

雨天時にリムブレーキモデルは制動力が低下する Photo: Shusaku MATSUO

 なのに、リムブレーキは雨になると制動力が低下します。先輩たちは勘と度胸とテクニックでなんとか走ってましたが、僕は「これは危ない」と判断し、すぐにディスクブレーキ台座が付いたMTBフレームを買ってドロップハンドル&STIレバーで組んで雨専用デリバリー車を作りました。“ディスクロード”なんて言葉もなかった時代ですから、これはディスクロードの先駆車と言えなくもありません。

 MTB用のブレーキキャリパーを使っていたのでいわゆるカックンブレーキでしたし、「乗り味」なんてものはないも同然でしたが、そのときの僕は、「走る楽しさ」よりも、「雨天時の安全性」を重視したのです。おかげで、雨の日は一度も事故りませんでした。

 でも今、僕はディスクロードには乗っていません。それは、今は「雨の日には乗らない」と決めているからであり、今は「乗り味や軽さ、要するに“走る楽しさ”を重視している」からです。今の僕の使い方では必要ないというだけです。

正解は目的によって人によって変わる

 何が言いたいのかと言うと、「正解は目的によって変わる」ということです。「残念ながら唯一絶対の正解はない」ということです。

 どんな目的で使うのか。自分のテクニックと体力ではどんな機材が扱いやすいのか。自分は自転車に何を求めるか。どんな自転車が好きなのか。それによって答えはコロコロ変わるからです。

リムブレーキとディスクブレーキはどちらがいいとは言えない。人によって正解は変わるはず Photo: Kenta SAWANO/Shusaku MATSUO

 よく「ディスクロード嫌いなんですよね?」と言われます。ディスクロードのデメリットをあちこちで書いているからでしょう。でも、嫌いなんじゃありません。メリットとデメリットを分析して読者の皆さんにお伝えするのはそれが今の僕の仕事だからであって、ディスクロードを攻撃しているわけではありません。ディスクロードの利点は、もう痛いほど分かっているつもりです。だってあのとき僕がディスクロードに乗っていなかったら、もうこの世にいないかもしれないんですから。

 どちらを買うべきか自分で決めたいという人は、それぞれの構造や特徴を理解して、試乗会などでいろんなバイクに乗って、好みと目的にあった一台を見極めてみてください。

 「詳しくないし自分じゃ決められない」という人は、信頼できるショップで、自分の目的や悩みなどを伝えて、相談してみてください。

 大切なのは、業界のトレンドではありません。自転車ライターが何をほめようが何をけなそうが関係ありません。あなたに合った、あなただけの答えです。

 もちろん、「雨の日には乗らないし、ディスクブレーキの制動力なんて自分には必要ないけど、最新のディスクロードってヤツに乗ってみたい!」という純粋な好奇心だって、それは立派な「ディスクロードを選ぶ理由」だと思います。

 リムブレーキでもディスクブレーキでもいい。次にみなさんが選ぶ一台が、自転車人生最高の伴侶になりますよう。ご清読、ありがとうございました。

安井行生
インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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