ジロ・デ・イタリア2019展望<2>オールラウンダー集結のマリアローザ争い スプリンターやTT巧者らひしめく有力選手

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ジロ・デ・イタリア2019展望、前回のコース解説に続き、第2回は有力選手にスポットを当ててみたい。獲得標高4000~5000mにのぼる難度の高い山岳コースが多いだけでなく、今回は個人タイムトライアルステージもポイントとなり、総合力が試される大会だ。それに合わせるかのように、オールラウンダーが集結。マリアローザ争いは混戦必至だ。また、スプリンターやタイムトライアルスペシャリストも続々とエントリー。出場が決まった日本人2選手の動向も含めて、その走りを占ってみよう。

大激戦となったジロ・デ・イタリア2018年大会。今年も有力選手が顔をそろえる。前回の個人総合上位3人のうち、トム・デュムラン(左)とミゲルアンヘル・ロペス(右)は再びスタートラインに並ぶ =2018年5月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

優勝経験誇るニバリ、デュムランら マリアローザ候補

 各チームの出場選手確定に先立ち、主催するRCSスポルトが今大会の注目選手をピックアップ。イタリア期待のエースたちから、ジロではおなじみの顔、さらには歴史を変える可能性を秘める気鋭のライダーまで、幅広く選出した。選手たちのコメントと合わせて、紹介したい。

2016年以来3度目のジロ制覇を目指すヴィンチェンツォ・ニバリ。開催地イタリアで最も期待を集めるエースだ =ジロ・デ・イタリア2016第21ステージ、2016年5月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 まず、ジロ最大の栄誉である個人総合時間賞「マリアローザ」候補から。開催地イタリアにとって、最も期待を寄せるライダーと言えば、2013年と2016年と2度の制覇を誇るヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)だ。個人総合3位となった2017年大会以来の参戦となる今回は、前哨戦のツアー・オブ・ザ・アルプスを同3位とまとめ、好調のままジロへと突入する。

 スペイン・カナリア諸島での高地トレーニングを経て迎える今大会へは、「タイムトライアルが総合争いのカギを握る」と分析。上級山岳ステージがない大会第1週での総合系ライダーによる奇襲作戦もあり得るとして、大会序盤から気を引き締めて走ることを誓っている。今シーズンで現チームとの契約が終わるため、移籍の話題も飛び交うが、本人は「仮にこの大会でどんな結果になろうとも自分の価値は変わらない」と淡々。34歳という年齢も、3週間の戦いにあってネックにはならないだろう。

2017年ジロ覇者のトム・デュムラン。グランツールでいま最もハイクオリティな走りを見せているオールラウンダーだ =2017年5月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 タイムトライアルで圧倒的な力を見せる選手といえば、トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)の名が真っ先に挙がる。2017年大会を制して以来、2018年大会は個人総合2位、直後のツール・ド・フランスでも同2位と、いまやグランツールでは最もハイクオリティな走りを見せる選手となった。

 デュムラン自身は現状との比較対象として、ジロ制覇を果たした2年前を挙げ、コンディションとここまでの成果ともに当時以上のものであると自信を口にする。今年はUAEツアー個人総合6位、ティレーノ~アドリアティコ同4位、ミラノ~サンレモは11位だったが見せ場を作るなど、出場レースで“外し”はない。レース数を絞り、高地トレーニングで仕上げた姿を披露する時がやってきた。「よい状態でボローニャ入りできそうだ」そのボローニャで行われる大会初日の個人タイムトライアルで、彼の3週間を見通すことができるだろう。

個人総合優勝候補筆頭との呼び声も高いプリモシュ・ログリッチェ。大会直前のツール・ド・ロマンディでも総合を制し絶好調だ =ツール・ド・ロマンディ2019第4ステージ、2019年5月4日 Photo: STIEHL / SUNADA

 ボローニャでの8km個人タイムトライアルの優勝候補はもう1人、今シーズン絶好調のプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)だ。2016年大会の初日に個人TTで2位となり、さらには第9ステージで初優勝。センセーショナルなグランツールデビューを果たした時以来のジロ参戦だ。

 デュムランと対峙したUAEツアー、ティレーノ~アドリアティコともに個人総合優勝。今大会の直前に行われたツール・ド・ロマンディでは、全6ステージ中3ステージで優勝。最終日のTTステージも快勝している。今回は、ティレーノ後に高地トレーニングを実施し、タフな山岳ステージに対応できる体づくりを心掛けた。「3回の個人TTはいずれも勝てるチャンスがある。山岳の比重が高いあたりも自分向き」と自信を見せる。TTはもとより、急坂でのパンチ力、驚異のダウンヒル能力、そして小集団であれば勝ちきることのできるスプリント力と、多くの得意分野を持ち合わせている点も強み。本場ヨーロッパでは、個人総合優勝候補筆頭に挙げる声も高まっている。

前回13日間マリアローザを着用したサイモン・イエーツ。総合制覇に再挑戦する =ジロ・デ・イタリア2018第15ステージ、2018年5月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 勢いに乗る若きグランツールレーサーも見過すわけにはいかない。昨年、13日間にわたりマリアローザを着続けたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は、再度の王座挑戦となる。

 前回は最終日2日前にまさかの大陥落。マリアローザはおろか、総合上位争いからも脱落してしまった。その失敗をバネに、ブエルタ・ア・エスパーニャでグランツール初戴冠。大会中盤以降はリーダージャージをキープ(途中戦術的に手放した2日間こそあったが)し、頂点に上り詰めた。TTではデュムラン、ログリッチェには届かないが、第1、第9ステージは上り基調であることは好材料か。勝負へ見据えるは山岳が厳しい最終週。険しい山々でライバルに差をつけたい。今シーズンはここまで目立った結果はないものの、「アプローチは昨年のジロ同様。レース数も変えずにここまできている」と落ち着きを見せる。

好調アスタナ プロチームが自信を持って送り出す総合エース、ミゲルアンヘル・ロペス。昨年以上の好成績を目指す =ボルタ・ア・カタルーニャ2019第4ステージ、2019年3月28日  Photo: YSP

 今シーズン破竹の勢いのアスタナ プロチームは、25歳のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)を総合エースに立てる。昨年はジロ、ブエルタともに個人総合3位。ステージ優勝こそなかったが、山岳ステージで大崩れすることなく上位固めを演じた。

 今年はボルタ・ア・カタルーニャで個人総合優勝。ハードな山岳ステージが連続するスペインのステージレースを制し、自信を深めた。TTに課題があるが、山岳で仕掛けていくことだろう。「昨年に並ぶ成績かそれ以上のものを目指したい。チームとしてはジロの記憶に残る結果にすることを目標とする」と語っている。

 同じく好調のドゥクーニンク・クイックステップは、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)がマリアローザを5日間着用した2017年大会以来のジロ復帰。この春は北のクラシックでチームに貢献したが、その後はこの大会に向けたトレーニングに集中。グランツールにしっかり合わせてくるモビスター チームは、ミケル・ランダ(スペイン)を軸に、アンドレイ・アマドール(コスタリカ)、リチャル・カラパス(エクアドル)と、ともに個人総合4位を経験している実力者がメンバー入り。

 選手層の厚さでは引けを取らないボーラ・ハンスグローエも、リエージュ~バストーニュ~リエージュ2位が記憶に新しいダヴィデ・フォルモロ(イタリア)、実績十分のラファル・マイカ(ボーランド)で勝負をかける。山岳・TTのバランスに長けるイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)も好調ならば上位戦線に位置するだろう。

ポイント賞防衛戦はあるか TT巧者もエントリー

 スプリンターも強力な選手たちがそろった。彼らはポイント賞のマリアチクラミーノを目指し走ることになるが、今年は第11ステージを終えると山岳地帯へと入っていくため、その後のレースプログラム次第では早々に大会から引き上げるスプリンターも出てきそうだ。また、山岳ステージの結果次第でマリアチクラミーノが総合系ライダーにわたる可能性もあることから、このジャージの動向もスプリンターが大会に残るかどうかの判断材料となるかもしれない。さまざま注視すべき要素はあるが、ひとまずは有力スプリンターを見ていこう。

ジロ・デ・イタリアに向けて新調されたエリア・ヴィヴィアーニのイタリアチャンピオンジャージ Photo: Sigfrid Eggers

 マリアチクラミーノ2連覇がかかるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)は、イタリアチャンピオンジャージでジロのスタートラインに並ぶ。必然的に、自国では最も期待されるスプリンターとなる。今シーズンは4勝と、チームの勝利量産に貢献。直前のツール・ド・ロマンディでは途中リタイアだったが、心配はなさそうだ。今大会に向け、イタリアントリコロールのジャージを新調。ビジュアル面でも注目される戦いは、ファビオ・サバティーニ(イタリア)やフロリアン・セネシャル(フランス)といったリードアウトマンをそろえ、万全の態勢でスプリントに向かう。

 ライバル1番手となるのが、2年前のマリアチクラミーノのフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAE・チーム エミレーツ)。今年はシーズン序盤の3勝以来勝ち星を挙げられていないが、予定ではジロとツールの連戦となる見通しで、それに向けた調整を進めていたと考えれば、ここまでの結果にも納得ができる。チームはステージ狙いを公言しており、まずはガビリアでのスプリント勝利を狙って動いていくことになる。

 両者による“マリアチクラミーノ攻防戦”に待ったをかけるのは、「ポケットロケット」ことカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)。フィニッシュ前での爆発的なスピードは知られるところだが、意外にもグランツール出場はこれが3度目。2年前にはステージ1勝を挙げているが、新天地で迎える今大会は果たして。レース数を抑えてジロに向けた調整を進めてきたが、出場したレースでは確実にステージ上位を確保している点はプラス要素。過去2回のグランツール出場では、いずれも途中で大会を去っており、マリアチクラミーノへの挑戦は3週間を走り切るスタミナが大前提となる。

2017年大会でポイント賞を獲得したフェルナンド・ガビリア。再びジャージ争いに加わることができるか =ジロ・デ・イタリア2017第21ステージ、2017年5月28日 Photo: Yuzuru SUNADA
ポイント賞争いに加わりたいカレブ・ユアン。今シーズンは出場レースで確実に上位を押さえている点で評価が高まる =ツアー・オブ・ターキー2019第6ステージ、2019年4月21日 Photo: STIEHL / SUNADA

 チーム事情によりジロに集中することになったアルノー・デマール(フランス、エフデジ)も有力。今年はここまで未勝利。シーズン初勝利をジロで挙げられるか。この大会特有のフィニッシュ前のテクニカルなレイアウトへは、ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)やイグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア)、ラモン・シンケルダム(オランダ)といった、リードアウトのスペシャリストが巧みにコントロールするはずだ。

 そしてもう1人、ビッグスプリンターが今大会のスピードマン争いに名乗りを挙げる。好調のボーラ・ハンスグローエが送り出すエーススプリンターは、パスカル・アッカーマン(ドイツ)。ここまで大事に育てられた生え抜きの25歳が、満を持してグランツールデビューを果たす。直前のエシュボルン・フランクフルトをはじめとする今季3勝は、いずれもワンデーレースによるもの。ここ一番での強さを発揮するメンタル面も注目。スプリントステージが続く大会前半の主役となる可能性は大いにある。

強力アシストをそろえてスプリントに挑むアルノー・デマール =ツール・ド・フランス2018第18ステージ、、2018年7月26日 Photo: Yuzuru SUNADA
抜群の勝負強さを発揮しているパスカル・アッカーマン =エシュボルン・フランクフルト2019、2019年5月1日 Photo: STIEHL / SUNADA

 今大会のタレントは総合系ライダー、スプリンターだけにとどまらない。4月16日にブラッドリー・ウィギンスが持っていたアワーレコード(54.526km/h)を更新する、55.089km/hの世界新記録をマークしたヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)のジロ参戦も決定。狙いは3つの個人タイムトライアルステージに絞られるが、デュムランやログリッチェらとのTT頂上決戦の色合いを濃くする1人。第1ステージを制しての今大会最初のマリアローザ候補でもある。

大会初日の個人タイムトライアルの優勝候補、ヴィクトール・カンペナールツ。4月にはアワーレコードで世界新記録をマークしている =ティレーノ〜アドリアティコ2019第7ステージ、2019年3月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 また、エガン・ベルナル(コロンビア)の落車負傷による離脱で戦術変更を余儀なくされたチーム イネオスは、タオ・ゲオゲガンハート(イギリス)が総合成績を狙う見通し。ツアー・オブ・ザ・アルプスではステージ2勝を含む個人総合2位と好調。この大会を制したチームメートのパヴェル・シヴァコフ(ロシア)や、クライマーとして期待されるイヴァン・ソーサ(コロンビア)もメンバー入り。24歳のゲオゲガンハート、ともに21歳のシヴァコフ、ソーサといった若い布陣は、25歳以下対象のヤングライダー賞「マリアビアンカ」獲得が現実目標となりそうだ。なお、ベルナルに代わる枠は、これまた22歳のエディ・ダンバー(アイルランド)が埋めることになった。

初山・西村の走りに高まる期待

 このほどNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネのジロメンバーに、初山翔と西村大輝が選出されたことが発表された。日本はもとより、アジアやヨーロッパで実績を積んできた両者がいよいよ、最高の舞台であるグランツールを走ることになる。

 チーム発表や水谷壮宏監督、大門宏マネージャーのコメントによれば、2人に与えられる役割はアシストとなりそうだが、これまでの積極的な姿勢や求められた役割以上の結果を残してきたことが評価されているところからも、ジロにおいても果敢な走りが期待できそうだ。

 日本でもおなじみのマルコ・カノラ(イタリア)やフアンホセ・ロバト(スペイン)、今シーズン好調のジョバンニ・ロナルディ(イタリア)らが結果を残すとなれば、それはきっと初山と西村の援護あってのものだろう。

NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネからは日本人2選手がメンバー選出。初山翔(左)、西村大輝ともにヨーロッパ、アジアで実績を積んできた両者がいよいよグランツールへ挑む Photo: NIPPO - Vini Fantini - Faizane

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