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山下晃和の「“キャンプ”ツーリングの達人」<6>衣食住の「住」を司るテント 用途と環境に応じた種類と、その選び方

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 前回はキャンプツーリング用途のバッグ類について語りましたが、今回は「3種の寝具」のうちの一つ、衣食住の「住」のメインである「テント等」について説明します。「テント等」と書いたのには理由がありまして、自転車でのキャンプツーリングに使える宿泊スタイルは大きく分けて4種類あると思ったからです。それは、テント、タープ、ツェルト、ハンモックです。もちろん夏場の気持ちの良い時期であれば、芝生の上に寝そべっただけでも寝られると思いますが、ここでは「野宿」ではなく「キャンピング」の観点からご紹介します。

鹿児島県の南に位置する開聞岳をバックにコーヒーを飲む朝。「プロモンテ」のVL14テントにて宿泊 Photo: Akikazu YAMASHITA

とにかく“安心”のテント

 日本国内でキャンプをすることを前提とすれば、海外と比べて治安面ではそれほど問題ないので、前述の通り、芝生の上に寝そべったり、固い地面でもダンボールを下に敷いて、その上にスリーピングバッグで寝たりしても何かが盗まれていることはほぼないと思います。ではなぜテントを使うのか、それは雨風をしのげるからです。

キャンプ場のアプローチは山間部へ向かうこともあり、天候が急変することも多い。晴れ予報なのに、いきなり豪雨となった和歌山県の高野龍神スカイラインの途中 Photo: Akikazu YAMASHITA

 キャンプ場は山間にあることも多いので、急な落雷、そして近年夏には必ずといっていいほど起きるゲリラ豪雨などにも備える必要があります。自然の中に入れば入るほど、虫や動物などがいる場所も多いでしょう。また、気圧の上昇・下降が激しいのは日本特有の天候ですが、梅雨などの雨季が始まると、シトシトと降り続ける雨もあれば、土砂降りになることもあり、時に風が強く吹くこともあります。そういった天候の急変時に備えてもっとも心強いのがテント泊です。

 特に「山岳テント」と言われるタイプのものは、3000mから4000m近い山岳地帯、すなわち、木々や草などが育たない森林限界(風を防ぐものが岩や石しかない世界)でのテストを重ねているため強風や豪雨に耐えられるようになっています。これは「耐水圧」という数字で見ることができますが、ある程度名の知れたアウトドアメーカーであれば安心できます。

自立・非自立式の長所と短所

 テントのタイプには「自立式」と「非自立式」があることは以前お話しました。自立式はペグというアンカーで固定(ペグダウン)しなくても立てられるタイプで、非自立式は、ペグとガイラインという紐で引っ張った状態で立てるタイプです。1本のポールで立てる「ワンポールテント」も非自立式です。それぞれについて詳しく説明していきましょう。

 2本のポールをクロスして立てる「クロスポール」型が自立式の代表格です。ポールが2本ある分、多少重量はアップしますが、芝生だろうが、河原だろうが、砂利だろうが、アスファルトだろうが、地面を選ばずに立てられるという長所があります。

クロスポールのダブルウォールテントの代表的な形。こちらはNEMO(ニーモ)イクイップメントというアメリカのブランドの物。テント本体はメッシュ部分が多い。この上にフライシートをかけて出来上がり Photo: Akikazu YAMASHITA
女性ソロキャンパーに非常に人気が高いワンポールテントは、テンマク(天幕)デザインの「PANDA」(パンダ)。これで1万9800円(税抜)は破格。イラストレーターで女子キャンパーの代表的な存在「こいしゆうか」さんがデザインしたソロテント。広くて快適な前室が特徴 Photo: Akikazu YAMASHITA

 次にバイクパッキングやスルーハイカー(アメリカのロングトレイルをウルトラライト装備で縦走登山するスタイルのハイカー)に人気の「フロアレステント」、「タープ」があります。フロアレステントは文字通り、地面に生地がないテントです。

 芝生の上や砂の上なら直接マットレスという場合もありますし、岩があったり、アスファルトの場合はグランドシートというシートを敷いたりした方が体にはやさしいと思います。地面がない分軽量ですが、傾斜のあるところだと大雨の際に、雨水が中に入ってきてしまうとうデメリットもあります。フロアレステントを使用する際は、なるべくフラットなキャンプ地を選びましょう。

第7回サイクルキャンプイベントに参加させてもらった時にタープで休んでいた浜松の自転車店の看板犬ポタ。「タープの下は涼しくて快適だワン」と言っていました Photo: Akikazu YAMASHITA

 タープはポール、もしくは木などにガイラインをくくりつけて引っ張って立てる“屋根”です。ファミリーキャンプの時には、テーブルや椅子を置くダイニングスペースを作るために使用されることもあります。ソロの場合はそれほど大きなものは要らないので、なるべく小さくコンパクトな物がオススメです。幕だけなので外から見えてしまいますが、誰もいないプライベートサイトであれば、オープンエアで非常に気持ちがいいです。着替えなどが想定される場合には不向きですが、かなりの軽量化になります。

 「ツェルト」はドイツ語でテントという意味ですが、日本では簡易的な緊急用のシェルターを表す言葉になっています。テントは本体とフライシートという2枚構造になっていて「ダブルウォールテント」と呼ばれていますが、ツェルトは大体1枚で完結。そのため非常に軽量で、平均で500gくらい。軽いものであれば250gとTシャツよりも軽いものもあります。

 ただ、1枚仕立てのために結露が起こりやすくなってしまうという弱点があります。結露は外気温と内気温の差が激しいほど起こりやすく、人間の体から発する湿度によってテント内部が濡れてしまう状態をいいます。また、青々と茂った芝生の上でも植物が放つ水分があるので、地面やテント内部が濡れてしまうこともあるでしょう。夏場でそれほど寒くなく、ある程度換気をしていれば問題ありません。

ファイントラックが出しているツェルトは非常に軽量なラインナップ。ツェルト1は一人用で230g。ツェルト2ロングは二人用で340g。収納サイズは350ml缶よりちょっと大きいくらい  Photo: Akikazu YAMASHITA
天候が安定している季節なら抜群に楽なハンモック。風に揺られながら寝るのも最高。虫が寄ってくるので、いつも蚊取り線香を頭で焚いた。こちらはしまなみ街道の道中にあるキャンプ場でハンモック泊。夜は満天の星空。そしてBGMは波の音のみ Photo: Akikazu YAMASHITA

 最後はハンモックです。こちらも一枚なので非常に軽量で、寝心地も極上。心地良い風が吹いているところでゆらゆら揺られると、まるで揺りかごの中にいるような気持ち良さです。ただし、しっかりとした支柱があるところや木があるところでないと設営できないのと、森の中では、夏場、虫に刺されてしまうというデメリットもあります。

 防虫ネットを顔の上にかける、首の上まで寝袋でしっかりと包みこむなどの対処が必要です。体の近くでモスキートコイル(蚊取り線香)なども焚いた方が良いでしょう。

行き先と趣味・嗜好に応じて選択を

ここ最近のお気に入りは「マウンテンハードウェア」のゴーストUL1テント。ダブルウォールの自立式で751gという驚異的な軽さと白ベースの美しい色が決め手。現在は発売されておらず入手困難 Photo: Akikazu YAMASHITA

 キャンプでの宿泊のスタイルは空間が広い方が良い人、逆に狭い方が安心する人、前室を広くとって料理スペースを確保したい人、周りも気にせずオープンエアでも寝られる人、星空を見ながら寝たい人等々、個人的な趣味・嗜好があると思いますので、自分自身にあったものを選択してみてください。

 次回は、スリーピングバッグについて語ります。

山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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