案外深いディスクロードの世界<5>スルーアクスル、ディスクローターの規格を知る

by 安井行生 / Yukio YASUI
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 文字数の関係で、前回(第4回)では触れられなかったことがあります。それはフレームとホイールの固定方法について。初期のディスクロードはエンド幅や固定方法の規格が乱立していましたが、現在はフロント12mm×100mm、リア12mm×142mmのスルーアクスルという規格に収斂しつつあります。

スルーアクスルだけを掘り下げてもディスクロードの世界は広がる Photo: Masahiro OSAWA

クイックレリーズのメリットとデメリット

 このスルーアクスル、従来のロードバイクに使われていたクイックレリーズとは固定方法が全く違います。当然、互換性もありません。そもそもクイックレリーズとは、その名の通り素早い脱着ができるように作られたもの。ハブシャフトのサイズがフロント:直径9mm×幅100mm、リア:直径10mm×幅130mmで、それをフォークとフレームのエンドの溝にはめ、クイックレリーズレバーで左右からギュッと挟みこんで固定します。

キャリパーブレーキタイプのロードバイクにはクイックレリーズレバーが使われています

 最大のメリットは脱着が簡単なこと。慣れれば数秒でホイールを外すことができます。また、ハブもレバー本体も軽くできます。しかしその反面、固定力が弱いと走行中にずれる可能性がある、ホイールがずれたまま固定される可能性がある、フォークとフレームのエンド部分に切り欠きがあるため固定部の剛性を高くしにくい、などのデメリットがありました。

 現在のディスクロードに採用されているスルーアクスルは、まずフォークとフレームのエンドが完全な円になっており、そこに直径12mmの中空ハブシャフトをセットします。エンド幅はフロントはリムブレーキと同じ100mmですが、リアは142mmと広くなります。

 スルーアクスルの端には雄ネジが切ってあり、それをフレームのエンドに設けられた雌ネジに挿入して固定します。だからホイールがずれで固定されてしまうことがなく、強い力がかかってもホイールがずれません。誰が取り付けてもちゃんとセンターがでますし、固定部の剛性が上がります。

スルーアクスルの先には雄ネジが切ってある Photo: Masahiro OSAWA
雌ネジにスルーアクスルを挿して固定 Photo: Masahiro OSAWA

 このエンド部の剛性強化が走行性能に好影響を与えるという意見もあります。確かに、クイックレリーズよりスルーアクスルのほうが構造的に有利であることは間違いありません。実はこのスルーアクスル化によるエンド部剛性の向上というのは、ディスクブレーキ化とは直接関係ないのですが(だってリムブレーキのスルーアクスル仕様も実現可能だから)、「リムブレーキ=クイックレリーズ」「ディスクブレーキ=スルーアクスル」という現状では、これもディスクブレーキのメリットの一つとして数えるべきだと思います。

 スルーアクスルの規格は収斂しつつある、と書きましたが、スルーアクスルの軸の長さやネジのピッチはフレームによってバラバラ。なかにはスルーアクスルながらクイックレリーズのような素早い脱着性をもたせたR.A.T.という規格もあります(フォーカスやメリダなどが採用)。

R.A.T規格のスルーアクスル。通常のスルーアクスルと異なり先端部分が雄ネジではない Photo: Masahiro OSAWA
R.A.Tのスルーアクスルの受け手 Photo: Masahiro OSAWA

 クイックレリーズはどんなフレームにも使えるため、「チタンシャフトの軽量クイックに交換する」などのチューンナップが人気ですが、スルーアクスルはフォークやフレームの付属品となるため、そういう楽しみ方はしにくくなりますね。

 いずれにせよ、ディスクロードのホイール固定方法は<フロント12mm×100mm、リア12mm×142mmのスルーアクスル>に決まりました。規格戦争に巻き込まれる心配はもうないでしょう。

ローター径と制動力の関係

 ディスクロードの規格について、もうちょっと説明します。

 まずはローターの径。現在のディスクロードの主流は140mmと160mmの2種類。160mmのほうが制動力が高くなる傾向にありますが、組み合わせは「前後とも160mm」「前160mm、後140mm」「前後とも140mm」など様々で、正解は好みや目的や体重によって決まります。

 コントロール性を重視する場合や体重が軽いライダーは「前後140mm」、制動力を重視する場合や体重のあるライダーは「前後160mm」というのが指標。バランスの取れた「前160mm、後140mm」という組み合わせも多いですね。

円盤状のディスクローターにも規格があり、主流は140mmと160mmの2種類あります

 ホイールには140mmも160mmも両方付きますが、フレームは両方に対応しているものもあれば片方しか付かないものもあるので、購入時には確認が必要です。

 また、ローターをハブに固定する方法も、6本のボルトで固定する「インターナショナルスタンダード(6穴と言ったりもします)」と、ロックリングで固定する「センターロック」の2種類があります。インターナショナルスタンダードは緩みにくい、センターロックは作業がラク、という傾向がありますが、ロードバイクではセンターロック式が主流です。

運用の注意は?

 さて、ディスクロードデビューに際して誰もが気になる運用面の注意点に触れましょう。

 まず、ハードな制動をした後にローターに触れないこと。かなり熱くなっているので、火傷します。脚を付いたときにスネがローターに当たってジュッ!なんてことも十分考えられるので注意を。また、ローターには絶対に油分を付けないように。制動力がガクンと低下してしまいます。リムブレーキでリムにオイルを塗るのと同じですから。

 「バイクを逆さまにできない」「ホイールを外した状態でレバーを握ると一巻の終わり」などという思い込みによって輪行派に敬遠されがちな油圧ディスクブレーキですが、ポイントを押さえておけば全く問題ありません。

ホイールを外して運搬するときはパッドの間に専用スペーサーを入れておきます Photo: Masahiro OSAWA

 バイクを逆さまにしても全然大丈夫です。ホイールを外した状態でレバーを握るとパッドが戻らなくなることがありますが、タイヤレバーなどで押し戻してやればOK。ホイールを外して運搬するときは、パッドの間に専用のスペーサーを入れておけば安心です。あとはローターでフレームや輪行袋を傷つけないように注意すること。

 要するに慣れですね。ウェブサイトのリニューアルだって、最初はみんな「分かりにくい」「見づらい」「前のほうがよかった」なんて言うものですが、3日もすれば慣れて前のなんか忘れてしまうでしょう。携帯やテレビやパソコンの買い替えだって、最初は操作方法に戸惑いますがすぐに慣れて使いこなせちゃう。それと同じことだと思います。ちょっとした注意点を覚えておけば、ディスクロードだってリムブレーキと同じように運用できるでしょう。

 次回(最終回)は、「結局、リムブレーキとディスクブレーキ、どっちがいいのよ?」という問いに対して、結論めいたものを出してみたいと思います。

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