ツール・ド・ふくしまは全戦が公道で1周28kmを封鎖した「ツール・ド・かつらお」 参戦でみえた公道レースの魅力と開催の難しさ

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 ロードレースといえば、ツール・ド・フランスを代表するように街中や公道で行われるのが一般的と思われますが、現状は道路使用許可や警備の問題などで、国内ではなかなか開催に至らない現状です。しかし、全戦を公道で行うシリーズ戦「ツール・ド・ふくしま」が福島にはあります。実際に初戦へ参戦し、公道レースの何が課題で、何が魅力なのかを現地で取材しました。

「ツール・ド・かつらお」の入賞選手が一堂に集う Photo: Shusaku MATSUO

まるでステージレースな2日間

 ツール・ド・ふくしまは2019年は全7戦で開催されるシリーズ戦。初戦となった「ツール・ド・かつらお」は4月13、14日の2日間に渡って開催されました。場所は福島県の東部にある葛尾村で、四方を里山に囲まれたとても静かな村です。

大会は終始アットホームな雰囲気で進む Photo: Shusaku MATSUO
パレード走行へスタートする選手たち Photo: Shusaku MATSUO
個人タイムトライアルエキスパートの部3位の高岡亮寛選手(Roppongi Express) Photo: Shusaku MATSUO

 年代別やエキスパートクラスなど、いくつかカテゴリーが設けられましたが使うコースは共通。葛尾村役場近くの「葛尾村復興交流館あぜりあ」を拠点に、1日目は1周11km、2日目にはなんと1周28kmの公道コースを贅沢に使用します。筆者は両日ともにエキスパートクラスにエントリーしたため、初日は33km(11km×3周)、同コースを1部使用した個人タイムトライアル、2日目には56km(28km×2周)を走るという充実した内容となりました。

各クラスで白熱の勝負が展開された Photo: Shusaku MATSUO
2日目のロードレース2周の部で独走勝利を果たした尾形尚彦選手(中央大学) Photo: Shusaku MATSUO

 さて、公道レースの魅力とは何なのでしょうか。2日間存分に堪能してこう感じました。まず、普段の走りではNGな走り方で走って良い、という点が一つ挙げられます。警察が立会いの下、完全に道を封鎖しているので、反対車線までダイナミックに使ったラインを取れ、安全にほかの選手と競うことができます。

 また、常設の周回コースとは違い、都度レイアウトに合わせた走りが要求されます。今回は28kmという大周回の中に、厳しい上りやテクニカルな下り、幅が狭い林道、連続するアップダウンやコーナーなど、豊かなコースレイアウトが用意。選手は自身が持つ体力をマネジメントしながら、目の前に現れるコースに合わせて走行しました。ラインレースには及ばないまでも、「次は何が現れるのだろう」と想像しながら走るのも魅力と言えるでしょう。

「私が責任を取ります」が大事

 現在、国内では数々の公道レースが開催されていますが、多くはヒルクライムレースではないでしょうか。公道を使ったイベントも開催されていますが、完全に封鎖をしていないライドイベント(レースではない)がほとんどでしょう。それでは、なぜ公道を使ったロードレースが普及しないのでしょうか。ツール・ド・ふくしまを主宰するLinkTOHOKU代表の鵜沼誠さんに話を聞きました。

ツール・ド・ふくしまを主宰するLinkTOHOKU代表の鵜沼誠さん Photo: Shusaku MATSUO

 「公道は警察が管理しており、使用するには道路使用許可を取得しなければなりません。これを取るには警察の理解が必要となりますが、一般的にはこれがとても難しい作業となります」と鵜沼さんは切り出します。レースの安全性を説明するため、警備計画やレースの内容を理解してもらう必要があるといいます。

2日目、2周の部では2位集団の中村龍吉選手(中央大学)が先着 Photo: Shusaku MATSUO

 「警察の方の中にはロードレースを『競輪?』と勘違いし、全くご存じない方もまだいらっしゃいます。我々は一から警察の方に説明し、ご理解をいただいてきました。大会を開催する中で数々の失敗を経験しましたが、ノウハウとして積み重ね、県内で“全戦公道”と銘打ったシリーズ戦を開催するに至りました」とこれまでの経緯を語ります。

 鵜沼さんは「理解をしていただくには責任の所在を明らかにすることが大切です。私が全責任を取るという姿勢と仕組みづくりですね」と力説します。「開催地の自治体も警察も責任の所在が分からなければ理解を得られません。LinkTOHOKUは責任を請け負って開催することで、公道レースの開催を実現してきました」と続けました。事故の可能性を抑えるために、警備員やスタッフを増員するだけでなく、適材適所に配置したうえで、責任を明確にすることが開催に至るポイントだといいます。

「責任者として大会を作ることが公道レース開催では必要」と断言する鵜沼誠さん(LinkTOHOKU) Photo: Shusaku MATSUO

 また、鵜沼さんは大会の持続可能性についても熱を込めて語ります。「参加料収入のほか、地元企業やスポンサーなどの収益があるので、無償のボランティアがいないのも我々のレースの特徴です」と説明。立哨員や審判、大会に関わるスタッフには十分な日当も支払われているといいます。「手弁当体制の運営では長く続かないと考えています。スタッフに対するケアも持続可能な大会にするために重要ですね」。

 「私が得た大会運営のノウハウは多くの方と共有したいと考えています。今回の大会も、各地の大会関係者の方々にお越しいただき、スタッフとして参加してもらことで学んでいただいています。将来の自転車業界の発展を第一に考えています」と続けました。

2日間を通して活躍した尾形尚彦選手(中央大学)がツアーリーダージャージを獲得 Photo: Shusaku MATSUO

 「ゆくゆくは東北各地で公道レースを行い、各県の代表者を集めたステージレース“ツール・ド・東北”を開催したいという目標もあります。現在、岩手では話がまとまりつつあります。2020年には開催したいですね。地域に根差すのはあたりまえ。自然とロードレースが受け入れられる空気を作っていければと思います」と今後の見通しを鵜沼さんは示しました。

 ツール・ド・かつらおが開催された2日間、人口1000人ほどの村には参加者約250人が集い、活気づきました。大きなアクシデントもなく、参加者は公道レースを楽しんだように思います。この規模の公道レースが全国で増えるといいなと思いつつも、課題も山積みであることは確かです。

 ツール・ド・かつらおの規模では収益性を保てているので問題ありませんが、人口が多い都市部では警備、運営に割く予算が増えるとともに、地元関係者の数も多くなり、開催へ向けての各種調整も難しくなるでしょう。事故の可能性が限りなく少ないヒルクライムレースや、警備の必要が限られる常設のクローズドコースでのレースが多いのも頷けます。

 しかしながら、公道レースは魅力に溢れていることも確かです。開催地の自治体、警察、コース、収支のバランスを取りつつ、持続性のある公道レースが増えてくれることを個人的に願っています。ツール・ド・ふくしまがひとつのモデルケースになるのではないでしょうか。

筆者も実際にエキスパートカテゴリーで走ったが、結果は伴わず Photo: Shusaku MATSUO

 ちなみに、筆者のレース結果は1日目が惨敗、2日目にグレーチングの隙間でパンクという公道レースならではのトラブルでDNF(未完走)となり、ほろ苦いリザルトで2日間を終えました。それでも楽しめた2日間! 今後のツール・ド・ふくしまのレースにも積極的に参加したいと思います。

松尾修作松尾修作

サイクリスト編集部員。10代からスイスのUCIコンチネンタルチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーにも参戦し、現在は社会人チーム「Roppongi Express」で趣味のレースを楽しむ。JBCFのカテゴリーはE1。数多くのバイクやパーツを試してきた経験を生かし、インプレッション記事を主に担当している。

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