雨中の激闘6時間半を制しモニュメント初戴冠フルサングが最後の上りから12km独走でリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ初優勝

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 ロードレース、春のクラシックシーズンの最後を飾るUCIワールドツアー「リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ」が4月28日、ベルギー南部のワロン地域を舞台に行われ、最後の上りで独走態勢に持ち込んだヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)が、2位に27秒差を付けて初優勝を飾った。34歳にして初めての“モニュメント”(5大クラシックレース)戴冠。キャリア最大の勝利を手に入れた。

最後の上りで独走態勢に持ち込んだヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) が優勝 Photo: STIEHL / SUNADA

冷たい雨の中でのレース

 初開催が1892年で世界最古のクラシックレースともいわれ、今回で第105回の開催を迎えたこの大会。その歴史はツール・ド・フランスよりも古く、「ラ・ドワイエンヌ」(最古参)の異名を持つ。ベルギー・オランダの丘陵地帯で行われるアルデンヌクラシック3連戦の最後を飾り、その特徴はとにかく厳しい上り。256kmの長距離に合計11の登坂区間が設けられ、後半100kmはアップダウンがほぼ連続。獲得標高合計は4500mを超えるといわれ、上りの厳しいアルデンヌクラシックでも最上級の厳しさを誇る。

 今年は終盤のレイアウトが近年のアンスに至るコースから、リエージュへのゴールに変更。また最後の登坂区間、コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンの山岳ポイントの直後に、さらに約2kmの“本当の最後の上り”が付く形になった。ラスト10km余りは下りと平坦を経てフィニッシュとなる。

ほぼ最初から最後まで雨のレースとなった Photo: BELGA / SUNADA

 レースは冷たい雨の中をスタート。直後から複数のアタックがかかり、プロコンチネンタルチームを中心とした逃げグループが作られた。リリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル ディレクトエネルジー)ら8人は、メイン集団から最大9分のタイム差を得て、中盤までに設けられた上り2つをまとまってクリアしていった。

 後半100km、9つの連続山岳に差し掛かるころには、先頭とメイン集団のタイム差は約3分にまで減少。メイン集団は今季も絶好調のドゥクーニンク・クイックステップ勢が激しいけん引を見せる中、ダニエル・マーティン(アイルランド、UAE・チームエミレーツ)、そして世界王者のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)といった過去優勝経験のある有力選手が、勝負どころを前に途中リタイアした。

集団の主導権はドゥクーニンクからアスタナへ

 3つ目の登坂区間、コート・ド・モンルソア(距離1.7km・平均勾配7.9%)では逃げグループからジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)が、単独抜け出して先頭に立った。ベルナールはそのまま3つの山頂をトップ通過。しかしメイン集団もスピードアップを緩めず、結局6つ目の登坂区間、コート・ド・ラ・オートルヴェ(距離3.6km・平均勾配5.6%)の頂上までに全ての逃げは吸収された。

アシストに守られながら走るアラフィリップ Photo: BELGA / SUNADA

 続く7つ目の登坂、コル・ドゥ・ロジエ(距離4.4km・平均勾配5.9%)では、集団先頭を再三うかがっていたタネル・カンゲルト(エストニア、EFエデュケーションファースト)がアタック。オマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム)を従えて集団から抜け出した。さらに複数形成された追走が追い付き、10人の逃げグループとなった。メイン集団は今季ここまで絶好調のジュリアン・アラフィリップ(フランス)擁するドゥクーニンク・クイックステップが、変わらずコントロールを担う。

 いつしか雨が上がり各選手が防寒着を脱ぎ始めた中、カンゲルトが9つ目の登坂区間、コート・ド・ラ・ルドゥット(距離2.0km・平均勾配8.9%)で仕掛け単独先頭に立った。カンゲルト以外の逃げメンバーは全員がメイン集団に吸収。続くコート・デ・フォルジュ(距離1.3km・7.8%)ではメイン集団からパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が約20秒先行するカンゲルトへのジャンプに成功。一方メイン集団ではここまで息を潜めていたアスタナ勢が、本格的に集団先頭を占めて最後の上りに向けて勝負の態勢を整えた。

後半、積極的な走りを見せたファンアーフェルマートだが、最後の上りで前には残れなかった Photo: BELGA / SUNADA

 メイン集団からはティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)とダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)も追走アタックに成功。逃げる先頭グループはカンゲルト、コンラッドと合わせて4人となった。いよいよ最後の登坂区間、コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(距離1.3km・平均勾配11.0%)では先頭でウェレンスがアタックして抜け出す。が、ここで一気に追い付いてきたのがメイン集団。猛烈な勢いでカンゲルトら3人、さらにウェレンスまでを飲み込んで、勝負はいよいよ大詰めを迎えた。コンディションは再び雨交じりとなっていた。

最後の上り2連発でライバルを粉砕

 急勾配区間で先頭に立ったのはフルサング。力強いペダリングでペースを刻んで、マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)を従えて、集団から抜け出すことに成功した。4日前のフレーシュ・ワロンヌを含め、幾度もフルサングのアタックを封じてきたアラフィリップは、集団中盤に埋没。苦しんでいる様子をうかがわせていた。

フォルモロ、ウッズを従えて先行するフルサング Photo: BELGA / SUNADA

 丘の頂上を通過し、先頭3人に対してダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)とディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)の追走2人、そしてアラフィリップやヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)らの小集団という体制。わずかに下った後に、公式の登坂区間に数えられない約2kmの“最後の上り”へと突入した。

 ここで力を発揮したのはやはりフルサング。先頭でペースを上げるとまずウッズが、頂上近くではフォルモロが遅れ、フルサングがついにライバル全てを打ち負かして単独先頭に立った。早々にフォルモロから20秒、後方の追走集団からは約40秒の差を持ったフルサングは、ウエットな下りコーナーで一瞬スリップする場面はあったものの、力強いペダリングは最後まで衰えず、そのまま先頭を守って6時間37分に及ぶ長いレースを歓喜のガッツポーズで終えた。2位は粘ったフォルモロが取り、集団での3位争いはマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が制した。

独走でリエージュのゴール地点へと姿を現したフルサング Photo: STIEHL / SUNADA
粘って2位に入ったフォルモロ Photo: STIEHL / SUNADA
アダム・イェーツらとのスプリントを制したシャフマンが3位 Photo: STIEHL / SUNADA

 モニュメント初制覇となったフルサング。今年はフレーシュ・ワロンヌや、ストラーデビアンケなど、ビッグレースで攻めるもののアラフィリップに敗れて2位という結果が目立っていたが、春のクラシックシーズン最後にしてついに大きな栄冠を勝ち取った。ワールドツアーは今後、5月のジロ・デ・イタリアなど、ステージレースのシーズンへと移っていく。

表彰台(左から)2位のフォルモロ、優勝のフルサング、3位のシャフマン。ボーラ・ハンスグローエが2、3位を占めた Photo: STIEHL / SUNADA

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2019結果
1 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) 6時間37分37秒
2 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) +27秒
3 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +57秒
4 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
5 マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)
6 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)
7 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)
8 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1分0秒
9 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) +1分5秒
10 ワウト・プールス(オランダ、チーム スカイ) +1分26秒

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