フレーシュ・ワロンヌ2019アラフィリップが“激坂王座”防衛 頻発したライバルのアタックに動じず王者の走り

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 丘陵地帯が舞台となるアルデンヌクラシック、2019年シーズンの2戦目「フレーシュ・ワロンヌ」がベルギー現地時間4月24日に開催された。名物「ユイの壁」が勝負どころとなったレースは、激坂ハンターによる優勝争いへ。これを制したのは、前回覇者でもあるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。今大会はこれまでになく攻撃的なレース展開となり、強力なライバルのアタックが頻発したが、王者らしい走りによって牙城が揺らぐことはなかった。

フレーシュ・ワロンヌ2019、昨年に続く2連覇を達成したジュリアン・アラフィリップ(右)。ユイの壁に設けられたフィニッシュに真っ先に飛び込んだ Photo: STIEHL / SUNADA

最大勾配26%「ユイの壁」を3回通過

 ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)主催のもと、ベルギー南部のワロン地域で開催されるこの大会。例年200km前後のレース距離が設定されており、今年も195kmと慣例通り。アルデンヌクラシックの2戦目として、前戦「アムステル・ゴールド・レース」と、最終戦「リエージュ~バストーニュ~リエージュ」との間の水曜日に開催されるあたりも、いつもと変わらず。

レースを前に笑顔を見せるペテル・サガン Photo: A.S.O. / Gautier DEMOUVEAUX

 その中にあって大きな変化といえば、昨年までリエージュ~バストーニュ~リエージュのフィニッシュ地点が設けられていたアンスを、今回のスタート地にした点。時計回りを描くようにワロン地域を進行し、アンスからは南西に位置するユイへと向かう。

 このレースの華である「ユイの壁」ことミュール・ド・ユイは、登坂距離1.3km、平均勾配9.6%。上りの後半部分に最大勾配26%に達する激坂が待ち受ける。レース後半は、29kmの周回コースをおおよそ2周半。その間、ユイの壁は3回通過するが、最終回の頂上にフィニッシュ地点が設けられる。

スピードの上がる集団内でクラッシュ多発

 レースは5人の逃げグループ形成で幕を開ける。アクチュアルスタートからしばし続いた出入りから、20km地点を迎える頃にクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)、ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)、ロビン・カーペンター(アメリカ、ラリー・UHC)、ケニース・ファンローイ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)、トム・ヴィルトゲン(ルクセンブルク、ワロニー・ブリュッセル)が集団からリードを奪うことに成功。5分前後のタイム差で進行する。

レース序盤に形成された5人の逃げグループ Photo: A.S.O. / Gautier DEMOUVEAUX

 以降、プロトンに大きな変化が見られなかったが、ユイを基点とする周回コースに入ると、メイン集団からチェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ウィレム・スミット(南アフリカ、カチューシャ・アルペシン)、ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス ソルシオンクレディ)が抜け出し、追走を開始。やがてスミットが遅れだすが、代わってダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)が合流。3人の追走グループが形成される。

 それからも、集団ではアタックが散発。自然とペースが上がり、先頭とのタイム差も縮小傾向に。こうした動きから、ネイサン・ハース(オーストラリア、カチューシャ・アルペシン)のアタックをきっかけに4人が追走の3人に合流。ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ プロチーム)も後追いで追走グループへとジョイン。力のある選手が前線へ上がっていったこともあり、メイン集団はドゥクーニンク・クイックステップやモビスター チーム、ミッチェルトン・スコットといった有力チームが牽引を開始。この間、アラフィリップがバイク交換を行い、後方へと下がったが、レースペースの変化に冷静に対処。問題なく集団復帰を果たしている。

ユイの壁を上るプロトン <br />Photo: YSP

 各チームの思惑が見え隠れする中、プロトンに不穏なムードが漂う。2回目のユイの壁を目前に、集団前方でクラッシュが発生。下りコーナーでバランスを崩した数選手が絡み、ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ プロチーム)も巻き込まれてしまう。これをきっかけに集団が割れ、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やダニエル・マーティン(アイルランド、UAE・チームエミレーツ)が脱落した。

 別の高速コーナーでは、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ディメンションデータ)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)が落車。さらには優勝候補の呼び声も高かったアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)も地面に叩きつけられてしまい、戦線を外れることとなった。

 クラッシュを避けた集団は、2回目のユイの壁を前に追走グループを吸収。ユイの上りに入ると、ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル)が集団から抜け出し、約20人が追随。ただ1人逃げ続けていたロスコフを頂上過ぎに捕まえ、新たな先頭グループを形作る。メイン集団とは10秒前後のタイム差で最終周回を進んだ。

盤石のアシスト陣がアラフィリップをお膳立て

 有力チームの多くが先頭グループに選手を送り込んだこともあり、それを追うメイン集団を牽引するのはモビスター チームのみ。それでも、早い段階で追撃ムードに持ち込んだこともあり、労せずキャッチに成功した。

 残り20kmを切ったところで、今度はトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・スーダル)が単独でアタック。これに続くようにしてマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)も1人で飛び出す。10kmほど進んだところでモホリッチがマルチンスキーに追いつき、2人で先を急ぐ。

勝負どころに向かって優勝候補が前方へ。(右から)ジュリアン・アラフィリップ、ミカル・クウィアトコウスキーらが並んで走る Photo: BELGA / SUNADA

 先頭2人の動きをよそに、戦況を整えていったのはアラフィリップ擁するドゥクーニンク・クイックステップ。ドリス・デヴェナインス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)のペースメイクで先頭とのタイム差を一定に保つと、ユイへ向かう最後の登坂区間であるコート・ド・シュラブでエンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ)がペースアップ。マルチンスキーとモホリッチを集団へと引き戻した。

 最後のユイの壁を前に、ドゥクーニンク・クイックステップに加え、ボーラ・ハンスグローエ、ロット・スーダル、アスタナ プロチームが前方で主導権争い。いずれも優勝を狙えるスーパーエースを擁するチームだ。さらに、ユイの街に入るとチーム スカイが先頭へ。ロット・スーダルも前を譲ることなく、激しいポジション争いを繰り広げたままユイの壁へと突入した。

 激坂ハンターたちが満を持して迎える勝負のとき。各選手が仕掛けどころを図りながら進む中、最大勾配26%区間を利用してアタックしたのはヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)。ライバルの不意を突く一瞬の攻撃で、グイグイを前へ進んでいく。

 フルサングのアタックに対応できたのは、アラフィリップただ1人だった。ダンシングで加速し追いつくと、後続との差を確かめながら先頭に出るタイミングをうかがう。そして残り150m、ついに本領発揮。

 先頭へ出ると、あとはフィニッシュラインへまっしぐら。フルサングの粘りにあい、引き離すまでには至らなかったが、勢いを保ってトップを堅守。最後は力強い勝利のポーズで優勝を決めた。

フィニッシュ前150mでトップへ出たジュリアン・アラフィリップ。2連覇に向かって突き進んだ Photo: STIEHL / SUNADA

女子はファンデルブレッヘン5連覇 與那嶺42位

 激坂ハンターたちによる競演は、アラフィリップの2連覇で幕を閉じた。フレーシュ・ワロンヌ防衛を果たした王者は、初制覇だった昨年とまったく同じ、残り150mからのスプリントで勝利を決めた。もはや、このレースにおける勝ちパターンを完全に確立したといえよう。アシストを含め、ライバルのアタックが頻発したレース後半にも全く動じなかったあたり、ドゥクーニンク・クイックステップの強さと各選手の自信を証明するレースともなった。

上位3選手の表彰。左から2位ヤコブ・フルサング、1位ジュリアン・アラフィリップ、3位ディエゴ・ウリッシ Photo: STIEHL / SUNADA

 勾配が最も厳しい局面でのアタックが決定的な攻撃となったフルサングは2位。先日のアムステル・ゴールド・レースでも自らの仕掛けから3位を確保しており、好調なチームのけん引役としてふさわしい走りを披露している。また、3位には単独で前の2人を追ったディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAE・チームエミレーツ)が続いている。

 また、男子に先立ち、女子レース「フレーシュ・ワロンヌ・フェミニン」(UCIウィメンズワールドツアー)も開催された。118.5kmで争われ、こちらもユイの壁で激闘が繰り広げられた。優勝は、ロード世界女王のアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス サイクリングチーム)の手に。前人未到の5連覇を果たしている。日本勢唯一の参戦となった與那嶺恵理(アレ・チポリーニ)は、ファンデルブレッヘンから2分17秒差の42位でレースを終えている。

男女の優勝者が揃って。女子はアンナ・ファンデルブレッヘン(左)が5連覇を達成した Photo: A.S.O. / Gautier DEMOUVEAUX

フレーシュ・ワロンヌ2019結果
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4時間55分14秒
2 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +0秒
3 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAE・チームエミレーツ) +6秒
4 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル) +8秒
5 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
6 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
7 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
8 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)
9 イエール・ファネンデル(ベルギー、ロット・スーダル) +11秒
10 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ディメンションデータ)

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