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日本人がまだ知らない「e-BIKEの世界」<1>e-BIKEは一体何が面白いのか?

by 難波賢ニ / Kenji NANBA
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 2017年の末から国内仕様のe-BIKEが続々と登場して、昨年は「e-BIKE元年」と騒がれました。そろそろe-BIKEという単語を聞いたことがあるという人は増えてきたのではないでしょうか? この連載ではe-BIKEの魅力や海外トレンドなどについてお伝えして行きますが、まずはe-BIKEって結局の所、今までのサイクルスポーツと何が違って、何が面白いの? という点について紹介しましょう。

e-BIKEはこれまでのサイクルスポーツと何が違うのか Photo: Kenji NANBA

サイクリングの楽しみを別物で考える

 まず読み進める前に一つ意識して欲しいことは、今までのロードバイク(もしくはMTB)という考え方を一度忘れてリセットして、一体、サイクリングは何が楽しいのかという点に原点回帰してe-BIKEを見つめることです。

 水の中で遊ぶ楽しいスポーツアクティビティと言えば、シュノーケリングやスキューバダイビングを思い浮かべる人が多いと思いますが、一方で水泳、しかも競技に出たり競技を観戦したりすることを趣味としている人は、水と言ったら“競泳”となります。

 筆者自身も競泳部出身のため、体力の限界を追い求めた先にある世界は少しだけ知っているつもりではありますが、一方で競技を辞めて四半世紀も経つと水の中で楽しいことと言えば、めっきりスキューバダイビングになっています。

 もちろんシュノーケリングでも良いのですが、シュノーケリングで遊びに行ける所は水面、もしくは水面から数メートル。機材を装着したスキューバダイビングなら、ずっと深いところにゆったりと潜って、熱帯魚や景色を小一時間眺めて遊ぶことができます。

e-BIKEならではの魅力

 では、2つ車輪のついた乗り物で山の中で楽しいスポーツアクティビティとは何でしょうか? ロードバイクで峠を上って己の限界まで…と思った人はロードバイクのままでも良いのかもしれません。でもサイクリングが自転車熱狂者だけでなく、多くの人のためのアクティビティだと考えると、リラックスして景色を眺めながら乗鞍スカイラインや、富士山五合目に上ったり、はたまた20%近い激坂が連続する道をこなしたりすることを、誰もができるわけではありません。

 そうしたときに、普通に歩けるぐらいの体力がある人がe-BIKEを使えば、誰でも峠や旧道を上ってサイクリングの醍醐味を味わうことができます。

e-BIKEがあれば、誰でも峠を上ってサイクリングの醍醐味を味わえる Photo: Kenji NANBA

 適度なフィットネス強度で、風景や季節の移ろいを楽しみながらグループで休日を楽しむ。アシストによって走行時のペースは誰が乗ってもほぼ同じペースに落ち着くため、山岳地帯を含むサイクリングを体力差があるグループで遊んでも楽しめるのもe-BIKEの魅力の一つです。ちなみにロードバイクでのグループだと誰かが辛い思いをするか、ペースを落として走るかの選択肢になるのは読者の皆さんはご存じのはず。

 アシスト最高速度は日本仕様では24km/h。欧州仕様との差がよく語られますが、欧州仕様も25km/hが最高速度なのでその差はわずかです。アシストがあることが魅力のe-BIKEなので、走っていると自然とアシストを受けて走れるスピードに落ち着いてきますが、このロードバイクの巡航速度からすると少し遅めの速度設定というのも実はe-BIKEの魅力で、坂を上っていると今まで3人以上のグループだと風の音で不可能だった、ヒルクライムしながらのリラックスした会話が可能になってきます。これはe-BIKEならではの魅力と言って良いでしょう。

e-BIKEがロードバイクよりも優れている点

ロードバイクは、そもそも昔はロードレーサーと呼ばれていたことからもわかる通り、限界のスピードを追い求めてレースをするための乗り物に端を発しているため、根本的にはリラックスして景色や季節の移ろいを楽しむ乗り物ではないわけです。一方でe-BIKEは、自転車らしさを失わずにいかに楽に坂を登れるかを追い求めた乗り物。リラックスするために生まれたと言っても過言ではありません。

適度な強度でグループで楽しめるのがe-BIKE Photo: Kenji NANBA

 先ほどのスキューバダイビングの話に戻りますが、水中でまったりと熱帯魚を眺めるために3分間息を止めて人力で素潜りをする人はあまりいないのと同じように、峠をリラックスして語らいながら友達と一緒に上って、豊かな時間を味わうという点においては、e-BIKEはロードバイクよりも優れていると言えます。

キーワードは“ラグジュアリー”

 欧州で大流行しているe-BIKEですが、その多くは、夫婦や友達同士でスイスやオーストリアの山岳地帯に行って坂道をリラックスして上って景色を楽しむこと(法的・フィールド的な条件から舗装路とジープ道を組み合わせた遊び方が多い)として親しまれています。

 普及の初期段階では、欧州でも上級者のサイクリストはe-BIKEに対して非常に懐疑的な意見が多かったのですが、既に欧州では普及し始めてから約10年。爆発的な普及からも約5年が経過しており、多くのベテランサイクリストが、リラックスして友達と走る日はe-BIKE、自分だけで限界まで追い込みたいときはペダルバイク(欧州では近年、人力のスポーツサイクルのことをこう呼ぶ人も居る)と使い分けています。

仲間と会話を楽しみ、心身ともにリフレッシュできる週末ライドがe-BIKEの醍醐味 Photo: Kenji NANBA

 余暇の過ごし方や、そのツール・方法に関しては、我々日本人よりも圧倒的なセンスと情熱を注いでいる西欧でe-BIKEが最初に爆発的な流行になったのは、道具としての生い立ちを考えると納得が行きます。「豊かでラグジュアリーな時間」というのがe-BIKEのキーワードなのかもしれません。

 ロードバイクにはロードバイクの楽しさがありますし、e-BIKEにはe-BIKEの楽しさがあります。競泳とスキューバダイビングを比べてどちらが楽しいかの議論に意味がないのと同じように、同じ道の上をタイヤで走るアクティビティでもまったく異なるものだと考えると素直にe-BIKEを受け入れられる人も多いのではないでしょうか?

 さて、このように欧州でサイクリングの枠を越えて大流行しているe-BIKEですが、一体どれほどの勢いで、どんな国で遊ばれているのかについて次回は紹介してみたいと思います。

難波賢二
難波賢二(なんば・けんじ)

自転車ジャーナリスト。1979年生まれ。国立大学在学中より自転車専門誌などに寄稿。e-BIKEの黎明期よりその動向を取材してきたジャーナリストとして知られ、日本で最初のe-BIKEオーナーとして知られる。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られるなど、世界の自転車業界に強いコネクションを持っている。

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