アムステル・ゴールド・レース2019常識を覆すファンデルプールの大逆転勝利 ラスト7kmで1分差を独力で追いつきスプリントを制す

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 アルデンヌクラシック初戦となるUCIワールドツアー「アムステル・ゴールド・レース」が4月21日に、オランダ・リンブルフ州で開催された。ラスト7km、1分以上後方のメイン集団からほとんど先頭固定で追走を試みたマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)が、ラスト100mで先頭に追いつき、そのまま集団スプリントを制して勝利した。

驚異的な追い上げを見せ、スプリントを制したマチュー・ファンデルプール Photo: YSP

アラフィリップとフルサングが先行

 アムステル・ゴールド・レースは1000のカーブを持つと言われ、コースプロフィール上で名前のついた上りが35区間登場する265.7kmのレースだ。無数のコーナーの加減速とアップダウンを繰り返す非常にタフなコースであり、終盤はサバイバルな展開になることが予想されていた。

 レースは序盤に11人の逃げ集団が形成。グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ)、ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)、ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)らワールドチームの選手を含むメンバーで構成。最大8分程度のタイム差を築いた。

 中盤から終盤にかけてアスタナプロチームが積極的にメイン集団をけん引。逃げ集団とのタイム差を徐々に縮めながら、ラスト44km地点のグルペルベルグ(登坂距離0.6km、平均勾配5.7%)に突入した。

 すると、上りの中腹でファンデルプールがアタック。早めタイミングで積極的な動きを見せると、対応できたのはゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナプロチーム)のみ。ゴルカはファンデルプールと共に、集団から抜け出したものの、集団内にチームメイトを残しているため、積極的にペースアップはしない。ファンデルプールの動きは失敗に終わり、次の上り区間が登場する前に集団に引き戻された。

 メイン集団先頭の好位置を確保していたのはドゥクーニンク・クイックステップだ。クライスベルグ(登坂距離0.6km、平均勾配8.8%)に突入すると、ドリス・デヴェナインス(ベルギー)が今大会優勝候補筆頭のジュリアン・アラフィリップ(フランス)を引き連れてペースアップ。集団からの抜け出しに成功した。

先頭集団を形成するジュリアン・アラフィリップとヤコブ・フルサング Photo: YSP

 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナプロチーム)が追従し、4人の精鋭グループは逃げ集団を吸収しながらレースの先頭に躍り出た。

 クライスベルグを終え、すぐ登場する残り36km地点のアイゼルボズウェグ(登坂距離0.9km、平均勾配9.1%)に入ると、アラフィリップがアタック。フルサングは反応するも、トレンティンは遅れてしまう。

 一方でメイン集団から抜け出したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)とマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)が先頭から遅れたトレンティンに合流。3人で追走グループを形成し、先頭のアラフィリップとフルサングを追う展開となった。

 取り残されたメイン集団は追走体制を整えるのに時間を要し、残り30km地点で先頭2人と3人との差は15秒程度、先頭とメイン集団との差は50秒程度となっていた。

逃げ切り濃厚の展開から一転

 残り28km地点の最大勾配22%のクーテンベルグ(登坂距離1.2km、平均勾配5.9%)に入った。勾配の厳しい区間で、追走グループからウッズが脱落。

 メイン集団では追走または先頭グループにブリッジをかけようと、マイケル・マシューズ(オーストラリア、チームサンウェブ)やマクシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)などアタックをかける動きが見られるものの、集団から抜け出すには至らない。

追走集団からマイケル・ウッズが脱落し、ミカル・クウィアトコウスキーとマッテオ・トレンティンが先頭を追う Photo: YSP

 ラスト20km地点のアムステル・ゴールド・レース名物のカウベルグ(登坂距離1.5km、平均勾配4.7%)まで下り基調の道が続いたため、クウィアトコウスキーとトレンティンの追走グループは先頭2人とのタイム差が10秒を切った。一方、メイン集団は先頭とのタイム差が50秒程度と、やや拡大。

 すると、やや停滞気味のメイン集団からイエール・ファネンデル(ベルギー、ロット・スーダル)がアタック。この動きは失敗に終わるも、カウベルグを越えてからシャフマンが再度抜け出しを図り、さらに追ってバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)とサイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)が飛び出しに成功するなど、集団が活性化した。

 しかし、依然としてアラフィリップとフルサングの2人は快調なペースで先頭をひた走る。一時は先頭2人に肉薄したクウィアトコウスキーとトレンティンの第1追走グループは、先頭2人とのタイム差が徐々に開いていく。その2人を第2追走として単独で追うシャフマン、第3追走グループのモレマとクラーク、そしてメイン集団は先頭から1分ほど遅れてファンデルプールを含む20人弱の小集団と化した。それぞれのグループに大きな変化はないまま、レースは最終盤を迎えた。

 残り8km地点、最後の勝負どころとなるベメレルベルグ(登坂距離0.9km、平均勾配4.5%)に入ると、先頭のフルサングがアタック。しかし、アラフィリップは難なく対処した。

 第1追走のクウィアトコウスキーとトレンティンは同じ上りでやや失速。先頭2人とのタイム差が40秒以上に拡大し、もはや先頭2人の逃げ切りは確実だと思われていた矢先、メイン集団からファンデルプールが猛烈なペースアップを図った。

 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥゼール ラモンディアール)らを含む4人の選手が反応し、第4追走グループを形成。ファンデルプールはほとんど先頭固定のまま、先頭の2人を標的に一気にタイムを縮め始めた。

驚異の追い上げでファンデルプールが勝利

 追走の勢いは凄まじく、残り2.5km地点で第3追走のモレマとクラークを吸収。なおもファンデルプールが先頭固定のまま、残り2kmを切ったところでシャフマン、トレンティンに追いついた。カウンター気味にクウィアトコウスキーが飛び出して、単独で先頭2人を追っていく。

レースの常識にとらわれない積極的な走りが光るマチュー・ファンデルプール Photo: YSP

 先頭では、どうにかアラフィリップを振り切りたいフルサングが平坦路でアタックを仕掛けるなど動きを見せるが、振り切ることはできない。残り2kmを切ってマッチスプリントに向けて、お互いがややけん制状態となり、スピードが落ちてしまった。

 ラスト1kmのアーチをアラフィリップとフルサングが先頭で通過。5秒後にはクウィアトコウスキーが単独で追いかけ、さらに数秒後方をファンデルプールが率いる精鋭集団が迫っていた。

 残り800mで、とうとうクウィアトコウスキーが先頭2人に追いついたが、ファンデルプールの勢いは止まらない。

 残り300mでファンデルプールは腰を上げ、2秒ほど前方の先頭3人を目がけてスプリント開始。先頭ではアラフィリップが先行してスプリントを開始するも、ファンデルプールの凄まじい勢いは衰え知らず。背後のシャフマンやトレンティンが遅れるほどの加速を見せた。

 ファンデルプールはラスト100mでアラフィリップをかわして先頭に出ると、そのままフィニッシュ。260kmを越える厳しいサバイバルレースにもかかわらず、ラスト7kmで1分のビハインドをほとんど独力でひっくり返す、大逆転勝利を飾った。

 本人も信じられないといった様子で、頭を抱えながらフィニッシュラインを越えると、精魂尽き果てた姿で地面に倒れ込んでいた。レース後のインタビューでは、「信じられない勝利だ。調子は良かったので、グルペルベルグで仕掛けたが失敗してしまった。最後はフルガスで追いかけたけど、先頭がお互いにけん制している様子を見て、もしかしたら勝てるかもしれないと思った。でも、信じられないよ」と語っていた。

 ファンデルプールの父・アドリも元プロ選手で、1990年にアムステル・ゴールド・レースを勝利した経験を持つ。親子2代に渡って同レースを勝利したこととなった。

左から2位のサイモン・クラーク、優勝したマチュー・ファンデルプール、3位のヤコブ・フルサング Photo: YSP

 ラスト7kmの異次元の追い上げ、常識を覆す勝ち方に、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、トマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)などが相次いで驚きのコメントをSNSに投稿。

 ピーター・ステティナ(アメリカ、トレック・セガフレード)に至っては「過去最高のフィニッシュだ!もし見てないなら、ラスト10kmを見返した方がいいよ」とまで語っている。

 世界中のファンのみならず、プロ選手たちも驚きを隠せない歴史的な勝利だったといえよう。

アムステル・ゴールド・レース2019結果
1 マチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス) 6時間28分18秒
2 サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) +0秒
3 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナプロチーム)
4 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
5 マクシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
6 ビヨルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル)
7 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)
8 ヴァレンタン・マデュア(フランス、グルパマ・エフデジ)
9 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥゼール ラモンディアール)
10 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)

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