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山下晃和の「“キャンプ”ツーリングの達人」<番外編>お荷物拝見! 一歩先行く“先輩旅サイクリスト” のキャンプツーリングスタイル

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 隔週水曜にお届けしている旅サイクリスト山下晃和さんの人気連載『“キャンプツーリング”の達人』。今回はゴールデンウィーク番外編として、一歩先ゆく“先輩旅サイクリスト”のキャンプツーリングスタイルをご紹介します。紹介するのは荷物の積載を優先したキャリア仕様のアドベンチャーバイク、軽量走行を極めたロードバイクと、荷物も走る場所も妥協しないマウンテンバイク(MTB)のバイクパッキングスタイルの3人。それぞれの荷物の中身と積載方法、そして「これだけは譲れない」というマストアイテムを聞きました。

一歩先ゆく先輩旅サイクリスト3人のツーリングスタイルを紹介

冒険心を増幅させるアドベンチャースタイル

 トップバッターの先輩サイクリストは、旅歴40年(ブランクあり)という大ベテランの藤咲義信さん(57)。最近はキャンプツーリングと登山を組み合わせた「サイ山」(サイクリング+山)という自転車の新ジャンルを楽しんでいるという、根っからの冒険派サイクリストです。

藤咲義信(ふじさく よしのぶ)さん(57)。会社役員。愛車は国内に9台しかないというアドベンチャーバイク「スペシャライズド・セコイア・メルツ」。フレーム本体はクロモリでフォークは専用のカーボン、そしてチェーンステーにはステンレスが採用されている

 そんな藤咲さんの愛車は、伝説のフレームビルダー、ジム・メルツの名を冠したスペシャライズドのアドベンチャーバイク「Sequoia Merz」(セコイア・メルツ)。フロントラック用のダボ穴が付いているカーボンフォークやフロントシングルの変速機がついたスチールバイクは珍しく、2017年に発売された同モデルは藤咲さんにとって「ツーリングバイクとして欲しいものが揃っていた」そうです。

テントはウルトラライトで定評のある「ビッグアグネス」の山岳用テント「フライクリーク UL1」(1人用)。半自立式、ダブルウォールで1kgを切る軽さ
「クルマでは入れないが、歩きでは遠すぎる“秘密の場所”を求めて走る」という藤咲さんの旅スタイル

 「自転車でのキャンプは自分の速度で道中も楽しめて“1粒で2度おいしい”魅力があり、なおかつ自分の脚だけで目的地まで行く満足感でキャンプの醍醐味が何倍にも増す」という藤咲さん。旅の手段として「自転車以外は考えられない」と断言します。

「ORTLIEB」のパニアバッグはペアで25L。「Surly Porter House」の巨大なフロントバッグの容量は藤咲さんいわく「たぶん40Lほど」。荷物の総重量は25~30㎏(バックを含む)で、キャリアスタイルならではの積載力

 藤咲さんが選ぶ「これだけは欠かせない」というマストアイテムは、スイス生まれの焚き火台「ピコグリル398」です。

藤咲さんのマストアイテム、薄くて軽い焚き火台「ピコグリル398」

 メイドインスイスの精密部品の美しさはもちろん、なんといっても秀逸なのは収納サイズのコンパクトさ。横33.5×縦23.5×薄さ1cmで、重量わずか448グラムと超軽量! 「バイクキャンプと言えど外せないのが焚火」というほど焚き火フリークの藤咲さんは、この焚き火台をもつためにキャリアスタイルを選択しているそうです。

 ちなみに、フロントに荷重を集中させる理由については「リヤにも積載すると完全なキャンパースタイルなので、現代のバイクキャンプはシンプルにカッコよくフロント集中でと思ってます」とのこと。ご覧の通り、ハンドル操作のテクニックは要するそうですが、藤咲さんいわく「ヒルクライムもラク…な気がする」そうです。

(画像提供:藤咲義信)

山下さん「随所に感じる‟こだわり”キャンプスタイル」

 フロントフォークはカーボンなのにダボ穴がある自転車はそれほどないと思うので本当に希少です。また、積載方法、アイテム選びどれをとっても申し分ないですね。フロントに全てを集約して積載する方法は、かつてのスポルティーフ(700cを装着した旅自転車)などでありましたが、直進走破性と前進能力が非常に高いのでスピーディーに移動できます。アイテムに関しても、グラナイトギア、山と道などのUL系ブランドで軽量化をしているところと、木の器などで食にも重きをおいているところがオシャレ。ソロキャンパーに絶大なる人気のピコグリルで焚き火を楽しむあたりも◎。登山の経験があるとのことなので、非常にレベルの高いスキルをお持ちなのだと思います。

風のように軽快なロードスタイル

 続いて二人目の先輩はロードバイクの旅サイクリスト、南部真さん(44)。京都市にある自転車ショップ「サイクルハテナ」の店長で、旅人歴20年のベテランです。「レースと違って競争のない、旅の自由さを楽しんでいる」という南部さん。旅の行程によって変えるバイクやギアの選定、その旅の想像を膨らませながら準備することも楽しみの一つだといいます。

南部真(なんぶ まこと)さん(44)。旅人歴20年。バイクショップ「サイクルハテナ」店長。愛車は「RITCHEY ROAD LOGIC」

 そんな南部さんのスタイルは、荷物の積載容量を極力減らした“軽快走行性”重視のバイクパッキング。テントとスリーピングマットをタープとハンモックで代用するというかなりの上級者。春~秋はこのスタイルで行き、寒くなってきたら冬用のアンダーウェアや寝袋、ダウンジャケット、場合によってはテントを追加して対応するそうです。

ハンモックとタープで極力積載容量を減らした軽快走行スタイル。冬はハンモックとタープがテントに変わる
「RAW LOW MOUNTAIN WORKS」(ロウロウマウンテンワークス)の「Bike’n Hike Bag」。バックパックにもなる2WAY仕様。容量は8~10L

 身につけるウェアや装備も旅先でのさまざまな動きを想定したセレクトで、財布など身体に負荷がかからない重量の荷物はウエストポーチに収納。速乾・防臭・撥水などアウトドアに役立つ機能性を持ったカジュアルウェアをベースに、足元は歩行しやすく防水性を備えたグラベルシューズ&MTBビンディングという、無駄を省いた効率的なチョイスです。

足元はイギリスの自転車用革靴ブランド「Quoc Pham」(クオック・ファム)の「グランツアラー」。オフロードを含むあらゆる環境に対応するビンディングシューズ
身体に負荷がかからないレベルの荷物はまとめてウエストポーチに収納
フロントバッグ:タープ、ハンモック、コッヘル&バーナー&カトラリー、ソーラー携帯バッテリー、携帯工具&ポンプ、替えチューブ、パンク修理キット、ヘッドライトを収納。サドルバッグ:シュラフ、アンダーウェア、レインウェア上下、緊急用保温シート、パスタ、缶詰を収納。これで重量は4.82kg(バッグ重量含)

 南部さんが選ぶマストアイテムは「ROAD RUNNER BAGS」(ロードランナーバッグス)のフロントバッグ「The Jammer Bag」 (ジャマーバッグ) 。キャリア不要のマウントながらドロップハンドルと相性が良い縦ロールトップ機能で、最大10リットルと見た目以上に高容量です。

南部さんのマストアイテム「ROAD RUNNER BAGS」のフロントバッグ「The Jammer Bag」

 このツーリングスタイルは1泊2日の旅を想定したものだそうですが、南部さんによると「食糧の消費・補充を繰り返し、速乾性の高いアンダーウェアを一日ごとに洗濯し続ければそれ以上の旅も問題ない」とのこと。これまでこのスタイルで最大1週間ほどのツーリングをしたこともあるそうです。

(画像提供: 南部真)

山下さん「センスが光るアイテムチョイス」

 クロモリのロードバイクに余計な物を一切積まない走り重視スタイルで、参考になります。Raw Low Mountain Worksはアウトドアフリークを唸らせる物がたくさん出ていて、ここ最近非常に人気です。最初に背負える大型サドルバッグを作っていますし、アイディアとセンスが抜群。LAでハンドメイドで作っているROAD RUNNER BAGSのフロントバッグもツリーカモ柄でオリーブのシャツの雰囲気に合っていると思います。ハミングバードハンモックとタープで軽量化していて、風に揺られながら、コーヒーを飲むなんて最高です。気温によって、ナンガの寝袋を使ったり、SOLのエマージェンシーブランケットを使って調整することで、荒天に備えているように思いました。

キャンプの衝動に応えるMTBスタイル

 最後にご紹介する先輩はMTBの旅サイクリスト、伊井晶仁さん(26)。南部さんと同じバイクショップ「サイクルハテナ」のスタッフで、26歳にして旅人歴は7年に及びます。

伊井晶仁(いい あきひと)さん(26)。バイクショップ「サイクルハテナ」のスタッフ。旅人歴7年。愛車は「KONA UNIT-X」

 キャンプの“ギアいじり”や、焚火や野外で寝起きするというキャンプそのものが好きという井伊さん。「キャンプに行く手段」として自転車は手軽かつ短期間で行ける点が自身のスタイルにフィットしているとのこと。ちなみにキャンプに出かける頻度は月1~2回ほど。仕事終わり(夜)に一晩だけキャンプしたり、気軽に楽しんでいるそうです。

テントは「SixMoonDesigns」の「スカイスケープトレッカー」(重量680g)

 キャンプツーリングを始めた最初の数年は「キャリア+パニアバッグ」がメインだったそうですが、ここ数年でバイクパッキングスタイルに。舗装路からトレイルまでフィールドを選ばず走れるフルリジット・27.5TBの「KONA UNIT-X」は5カ所のボトルマウントが付属しており、走破性に加えてキャリア無しでも積載能力充分なところが「重宝している」そうです。

「KONA UNIT-X」は「APIDURA」製大型のハンドルバーバッグとも相性抜群
右フォークに寝袋。左フォークにはテント用のグランドシートと調理器具を収納したバッグを積載
ハンドルバーバッグ:ロールマット、テント、ダウンベストを収納。ハンドルバーポーチ:財布、携帯、前後ライト、マルチツールなどの小物を収納。サドルバッグ(Porcelain Rocket ):レインウェア、ライト、カトラリー、食料品を収納。荷物の総重量は5.92kg(バッグ重量含)

 井伊さんがチョイスするマストアイテムは、米国のウインタースポーツブランド「VOILE」(ボレー)の「RACK IT STRAP」というストラップ。

米国のウインタースポーツブランド「VOILE」(ボレー)の「RACK IT STRAP」。もともとはスキーの板を固定しておくために発明されたシンプルなストラップだそう

 もともとはスキーの板を固定しておくために開発されたシンプルなストラップですが、井伊さんはダウンチューブ下のナルゲンボトルをマウントするストラップとして使用しています。「他の場所にも使いまわすことができ、キャンプではあると何かと便利」だそうです。

 今回の荷物は1泊2日を想定したものだそうですが、伊井さんいわく「バックにまだ余裕があるので、着替えや食料を追加すればこのスタイルで2泊3日ほどの旅も可能」だそうです。

(画像提供: 伊井晶仁)

山下さん「走りと積載を両立した好バランス」

 KONA UNIT-Xというクロモリ製のMTBで、27.5インチのタイヤを履かせているのでトレイルも楽しめそうですね。リジットフォークで左右にBlackburnのアウトポストケージを装着しているのは僕も同じです。自転車とアウトドアの街ポートランド発のSixmoondesignsは自立式のテントではないですが、680gはとんでもない軽さなので魅力的。フラットバーハンドルだと横に広いAPIDURAの大型フロントバッグも装着できるので、テントのポールやロールマットなどの長物を入れられて良いと思います。お店とのコラボデザインも多いVOILEのストラップは多用途で2本セットで手に入れておくと便利ですね。

山下晃和さん「経験の中から自分に必要なものを」

 キャンプと自転車という組み合わせの旅は経験値があればあるほどアイテムが削ぎ落とされます。すなわち旅の回数で改善されていきます。そして、正解はあっても不正解はありません。

 今回ご紹介した3人のサイクリストもおそらくたくさん旅をしてきたからこそ、出てきた答えであって、最初は模倣から始めるのも良いですが、後々は自分にとって必要な物は何かというところを取捨選択して、自分なりのスタイルを見つけてもらいたいと思います。

 その試行錯誤が楽しくてのめり込んでいくのでしょう。ぜひ、みなさまもキャンプ道具の泥沼にハマってください!

山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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