案外深いディスクロードの世界<4>ディスクロードのホイールは何が違うのか

by 安井行生 / Yukio YASUI
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 フレームの次はホイールの違いについて。第4回は、リムブレーキとディスクブレーキでホイールがどう変わるのかについて書いてみます。

リムブレーキとディスクブレーキでホイールがどう変わるか Photo: Masahiro OSAWA

ディスクブレーキ化で変わるホイール

 ディスクブレーキ化によって、フレーム以上に変わるのがホイールなんです。その理由は、制動力の伝わり方が全然違うから。

リムブレーキモデルの前輪スポークはハブから放射線状に伸びる Photo: Masahiro OSAWA

 リムブレーキは、制動力がブレーキキャリパー~リム~タイヤ~地面という流れで伝わります。スポークを介さない。だから、リムブレーキ用のフロントホイールは少スポーク&ラジアル組み(ハブから放射線状にスポークを配置する組み方)で十分なんです。そのほうが軽さとエアロダイナミクスを両立させられますし。リアホイールはハブをねじる力(駆動力)がかかるので、左右どちらかをクロスにするスポークパターンが多いんです。

 一方、ディスクブレーキは、ブレーキキャリパー~ローター~ハブ~スポーク~リム~タイヤ~地面という流れになります。

前輪スポークがクロス組になっているディスクロード Photo: Masahiro OSAWA

 制動力が伝わる道のりが長いうえ、制動によってハブをねじる大きな力がかかり、しかもスポークを介して制動力が伝わります。だからリムブレーキ用ホイールよりスポーク本数を増やし、ラジアルではなくクロス組みにする必要があるんですね。これは某メーカーのエンジニアに聞いたことなので間違いないと思います。力の伝わり方は目に見えないので、なかなか理解しづらいですが。

ディスクブレーキ最大のメリット

 また、ローターを固定するため、ハブの作りはゴツくなります。よってホイール重量は増えます。スポーク本数が増えるので空気抵抗も大きくなります。

 しかし、ディスクブレーキという制動システムは、ホイールにも大きなメリットをもたらします。それはリムへの攻撃性がゼロになること。

 この間、ある自転車業界人と話をしていて、あぁなるほどと思いました。彼が言うには、ディスクブレーキの最大のメリットは、「カーボンリムでも安心して長い下りをこなせるようになること」なんだそうです。

キャリパーブレーキモデルのカーボンリムには摩擦熱に耐える耐熱性が求められる Photo: Masahiro OSAWA

 CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の耐熱性が向上した現在でも、下りでカーボンリムを破損させてしまう人は多いと聞きます。下りでブレーキをかけ続けることで、摩擦熱によって制動面がどんどん高温になり、耐熱温度以上になるとリムが変形してしまいます。クリンチャーの場合は内圧に負けてタイヤがバーストするのでさらに危険です。高速で下っている最中にそれが起きると、下手すりゃ(というか下手しなくても)命の危険があるレベルですから。

 そんなわけで、自転車を長くやっていると、自然と「カーボンリムの扱い方」が身に付くものです。ブレーキを左右交互にかけ、片輪ずつ放熱させるなどの工夫ができるようになる。カーボンホイールとは「そうやって工夫して使うのが当たり前」だった。

 でも、ロードバイクが一般化し、カーボンホイールが大衆化した現在、様々な人たちがカーボンホイールを使うようになった。下りでブレーキをかけ続けるユーザーも出てくる。それでカーボンリム破損が多発する。これはスポーツとして、というか乗り物として由々しき問題です。

 でも、ディスクブレーキならリムに熱が入らないので、そんな心配は無用になります。誰でも安心して下れるようになる。しかもリムが摩耗しなくなるため、ホイール本体の耐用年数は大幅に伸びるでしょう。雨でも通勤でもガンガン使える。これはリムブレーキが逆立ちしても不可能な、絶大なメリットです。

リムを軽くできるディスクブレーキ

 「ディスクブレーキならばリムを軽くできる」とも言われますね。僕もずっとそう思ってきましたが、最近考え方をちょっと変えました。

 確かにディスクブレーキになれば、ブレーキシューがリムを挟む負荷を考えなくてよくなりますし、耐熱性も必要なくなります。しかし、フロントフォーク同様、走りの要であるリムは、制動力を受ける・受けないにかかわらず、高い強度・剛性が必要とされる部分です(リムブレーキ用ホイールのリムも、「走行性能のために強化すべき場所」と「制動性能のために強化すべき場所」が一致するところと言えますね)。

 ディスクブレーキ化したからといって、極端にリムを軽量化すれば、走行性能が犠牲になってしまうはず。実際、リムを過度に軽量化した超軽量ホイールは走りがダメなものが多いです。

 なので、リムが今より劇的に軽くなることはないんじゃないかと思います。ただし、制動面を作らなくてよくなるため、リムの形状自由度は上がります。

リムブレーキ用のホイールはブレーキシューとの受ける平らな面が不可欠 Photo: Masahiro OSAWA
ディスクロードのホイールはリムブレーキモデルよりも設計の自由度が高くなる Photo: Masahiro OSAWA

 また、ディスクブレーキ用ホイールは、リムブレーキ用よりリムをワイド化したモデルが多くなっています。これは、ディスクブレーキの高い制動ポテンシャルを生かすためにワイドタイヤの装着を前提にしているからでしょう。

進化のスピードが速いディスクロード用のホイール

 さて。そういう設計の違いは、実際の走りにどう影響しているのか。

 全てのホイールに乗ったわけではありませんが、現状をざっくり俯瞰すると、「ディスクブレーキ用ホイールのほうが重くて硬く、リムブレーキ用のほうが快適で軽快」という傾向にあると感じます。また、ハンドリングが左右で違うものも見受けられます。左側にローターが付くので、前輪のオチョコ量が左右で変わり、剛性感に左右差が生じてしまうからでしょう。

 しかし、最近デキがいいものも多くなってきました。フレーム同様、ホイールもまだ各メーカー試行錯誤の段階にあり、フレーム以上に玉石混交という印象ですが、そのぶん進化のスピードが速いんでしょう。

ディスクロードのホイールは玉石混淆の状態だがデキのいいものが増えてきた。写真はロヴァール Photo: Masahiro OSAWA

 マヴィックのキシリウムプロカーボン系や、シマノのC40/RS770、カンパニョーロのボーラやシャマル、ロヴァール、ボントレガーなどの完成度は非常に高く、「これなら文句なし」と言えるレベルに達しています。ディスク化に伴って不可避に発生する剛性向上を、「反応性向上」というメリットへと上手く結びつけているモデルも出てきています。今後、ディスクブレーキ用ロードホイールは加速度的によくなっていくと思います。フレームの進化同様、非常に楽しみです。

 次回は、スルーアクスルの規格&メリット・デメリット、ディスクロードの運用面の注意点などについて書く予定です。

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