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山下晃和の「“キャンプ”ツーリングの達人」<5>バッグ別3つのツーリングスタイル できること・できないこと

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 前回は、キャンプツーリングを変える「ウルトラライトな“三種の寝具”」についてご紹介しました。アウトドアギア、キャンプギアを軽量化したら、次はそれらを積載するバッグ類が必要。ということで今回は、キャンプツーリングのためのバッグスタイルについてご紹介します。ここで紹介する以外にもさまざまなスタイルがありますが、私の持論として、大まかに3タイプのバッグスタイルに分けて解説したいと思います。

前後両サイドのパニアバッグにフロントバッグを着けた“最強”の5バッグスタイル Photo: Akikazu YAMASHITA

一番手軽なバックパックスタイル

 まず、手軽さという点では、バックパックを背負っていくスタイルがあります。自転車専用のバックパックもありますが、自転車に乗るためにシェイプされている低容量のものがほとんど。容量を求めると縦走登山用のバックパックになります。テント、マットレス、スリーピングバッグが入り、さらに身支度品や衣類などが入る容量を確保しなくてはなりません。旅をする季節や日数によって必要な容量は変わると思いますが、概ね40リットル以上はあると安心です。

 最近注目しているのがトレッキングでトレンドになっている「フレームレスバックパック」。従来は重い荷物を背負うとバックパックの形状を保つのが難しくなるため、背骨に沿ったフレームが必須でした。それが2000年代に入り、アメリカのロングトレイルを歩く「スルーハイカー」が進化させた「U.L」(ウルトラライト)という考え方によって覆されています。その代表格として「Go Lite」や「グラナイトギア」といった米国のブランドをご存知の方も多いかと思います。フレームレスバックパックは前傾姿勢をとっても窮屈にならず、雨蓋もないので自転車に乗る際にヘルメットの後頭部に当たることはありません。

ウルトラライトなバックパックを数多く扱っている「グラナイトギア」のバックパック Photo: Akikazu YAMASHITA

 最近では国内外問わずガレージブランドも増え、玉石混合ではあるものの、ヨットの帆に使われている「X-pac」、「キューベンファブリック」、「ダイニーマ」といったハイテクノロジーな素材を用い、耐久性や背負い心地を保ちつつ軽量化されています。その重さは1kg以下は当たり前。平均では500g前後です。

 しかし、このバックパックスタイルには“落とし穴”もあります。ここまで読んで感じている方もいると思いますが、登山と違って自転車乗りならではの“お尻痛問題”が生じます。荷物の重さが全てお尻一点にかかってくるため、長時間、長距離を走ると痛くて耐えられなくなります。なので旅のスタイルとしては輪行をメインに、走行距離が10km以下、走行時間が30分くらいであればギリギリ我慢できるとは思います。これはご自身の体重も影響してきますが、僕は体重が75kgなので、この距離、時間が限度です。

積載量不問の“最強”パニアスタイル

 では、お尻が痛くならないためはどうしたら良いのか。それは自転車に荷物を積載することです。「パニアバッグ」、「サイドバッグ」というスタイルを耳にしたことがあると思いますが、これらを使えば長距離でも長時間でもツーリングができます。背負うスタイルと比べると重心が下がるため、直進での走りに影響が出ないのもこちらです。自転車旅というとこのスタイルを思い浮かべる人も多いでしょう。

オーストリッチの特大パニアバッグはその容量が左右合わせて74リットル。外側のポケットやキャリアの天板に載せれば、さらに積載できます Photo: Akikazu YAMASHITA

 最大積載容量もこのパニアバッグスタイルなら必要十分。私が以前に中南米を旅した時に使っていたオーストリッチのパニアバッグの特大サイズは、これ1つで74リットルもの容量があります。2泊3日でテント泊縦走登山するバックパックと同等の大きさになります。

Photo: Akikazu YAMASHITA

 さらにフロントにもサイドバッグを2つ装着する「フォーサイド」と呼ばれるスタイルもあります。ハンドルの前にフロントバッグを付けると5つになり、積載容量はさらに増加。リアキャリアの上にも載せられるので、6つのバッグにすれば最強です。これだけ積載できれば世界一周も可能。荷物の積載量を問わないだけでなく、バッグから中の物が出しやすいのも長所です。そのおかげでキャンプの設営、撤収も素早くできます。

 ただ、短所としてはキャリアが付いていないとバッグを取り付けられないこと。キャリアを装着できるダボ穴(ネジ穴)が自転車に無ければ、そもそもこのスタイルを選択することはできません。

 「ダボ穴はないけれど、自分の乗っているロードバイクやMTBでツーリングに行きたい」─そんな声に応えて近年人気が高まっているのが、次に紹介するスタイルです。

キャリア不要のバイクパッキングスタイル

 ここ最近増えてきたのが「バイクパッキング」スタイルです。キャリアが無くてもフレームに各種バッグを装着することでキャンプ道具を積むことができます。大型のサドルバッグをメインに、フロントバッグ(またはハンドルバッグ)やフレームバッグ(フレームの三角形の部分に装着)をフォークやダウンチューブなどにストラップを使って括り付けたり、ダボ穴があればケージも取り付けられたり、そこにスリーピングバッグや椅子などを直接マウントすることができます。

大型のサドルバッグに、フロントバッグ。トップチューブにもバッグを積載 Photo: Akikazu YAMASHITA

 バイクパッキングとはそもそも山道のトレイルや未舗装路を走り抜け、キャンプをしながら旅をするスタイルのこと。米国の広大なバックカントリーの舞台で生まれたもので、元来はマウンテンバイク(MTB)を主としていましたが、最近はバッグの種類の増加に伴い、ロードバイクやグラベルロードといった車種に装着する人も増えています。

 バッグは身体に近いところに積載すると走りに影響が出にくいという特徴があるため、パニアバッグに比べて身軽に移動することができます。その分、無駄な物をいっさい省くためにも「三種の寝具」やアウトドアギアの特性、アウトドアウェアの基本を知っておく必要があります。

 サイクルジャージだけでなく、スリーレイヤリング(アウター、ミドルレイヤー、インナー)の中でもインシュレーター(中間着)の軽量化、インナーや下着類でウール製品(防臭効果が高い)などを多用することで着替えを少なくするといった工夫が必要です。当連載2回目で紹介した「縦走登山の哲学」を知っておく必要があります。逆に、縦走登山に慣れている人にとっては、非常に入りやすいのがこのスタイルであると思います。

フロントの空気圧調整で前後のバランスを

 選ぶべきバッグは、乗っている自転車や持っているキャンプ道具によって異なるので、試行錯誤しながら自分に必要なものを取捨選択、ブラッシュアップしていきましょう。それには、自分が日頃の生活で何を使って何を重視しているのか、毎日手に触れる物を考えてその度にリストアップしておくことをおすすめします。キャンプサイトという環境でも、普段していることをルーティンとしてやることによって快適さにつながるものです。

 最後に、どんなスタイルにも共通する「自転車のコツ」を伝授します。キャンプツーリングでは、自転車の荷重は全体の7割ほどがリア(後ろ)の部分にかかります。もちろん自分の体重も加わります。キャンプ道具を積載している時はバックパックでも、パニアバッグでも、大型サドルバッグでも、フロントタイヤの空気圧を少し抜いておきましょう。

タイヤに表記してある35PSI-50PSIの間であれば空気圧は調整できます。体重や積載量にもよりますが、フロントは10PSIくらい落としても良いと思います Photo: Akikazu YAMASHITA

 前後を同じ空気圧にしてしまうとフロントがわずかに上がる状態になるので、前に進みにくくなるのと、フロントから受ける路面状況が手を伝い、疲れやすくなってしまいます。それが、空気を抜くことでサスペンション効果を得られるのです(フロントに重いサイドバッグを積んでいる場合や、フロントに優秀なサスペンションが付いている場合は別です)。

 これは1日や2日程度であれば気づかないのですが、1カ月や2カ月に及ぶ長旅に出ると顕著に違いが現れます。疲労の蓄積は旅先での怪我や病気の原因にも繋がるので、意外と重要です。普段から空気圧をしっかり管理して乗っている方こそ実践してもらいたいことです。

バングラデシュの首都ダッカ手前にいた自転車少年たちもツーリング自転車を興味深そうに眺めています Photo: Akikazu YAMASHITA

 次回は、「テント」について深く掘り下げていきたいと思います。

山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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