ロンド・ファン・フラーンデレン現地観戦リポートクラシックの王様を現地観戦!現地でしか見えない選手の姿と本場ベルギーの人々の雰囲気とは?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
  • 一覧

 UCIワールドツアー「ロンド・ファン・フラーンデレン」(ツール・デ・フランドル)が4月7日に開催されました。筆者は、かねてからワールドツアーを現地観戦したいと思い、どうせ行くならと「クラシックの王様」とも呼ばれる格式の高いレースを観戦しようと計画しました。今回は終盤の勝負どころである「オウデ・クワレモント」で現地観戦した様子をリポートしたいと思います。

ロンド・ファン・フラーンデレンの勝負どころの一つ「オウデ・クワレモント」を走る選手たち Photo: Yuu AKISANE

多くのファンで賑わうオウデ・クワレモント

 日本からのアクセスは、ベルギー・ブリュッセルへの直行便を利用するパターンが最速ですが、筆者が行くタイミングではフランス・パリ経由でベルギー入りした方が安かったため、そちらのルートを選択しました。

現地のファンも大勢シャトルバルを利用。というより、この人たちの大半は飲むために行くので、自転車や自家用車は使えないという言い方が正しいかもしれない Photo: Yuu AKISANE

 パリからはTGVとフランス・ベルギー国鉄を乗り継いで2時間程度で、ベルギー・コルトレイクに到着。こちらで前泊して、翌日にオウデ・クワレモントへの無料シャトルバスが出ているオウデナールデまで電車で20分弱です。

 オウデナールデ駅前には何もありません。フィニッシュ地点まで移動すれば出店などあるようでしたが、そちらには立ち寄らず、バスに乗ってオウデ・クワレモントへ向かいます。車内ではすでにビールを飲んでいる人もおり、なかにはケースごと缶ビールを持参している人もいました。

 現場へ到着すると食べ物や飲み物を販売する屋台と、大勢の人々で賑わっていました。ベルギーといえばビールとポテトです。筆者はアルコールがそれほど得意ではないので、サンプリングしていたノンアルコールビールをゲットして、屋台でポテトを調達しました。

 ベルギーではポテトにマヨネーズが一般的ですが、カクテルソースやサムライソースといった怪しげなソースも目に入ります。ここは冒険して、ハンニバルソースを選択。スパイシーな味わいのマヨネーズでして、揚げたてポテトに絶妙にマッチしていました。

ベルギーの2大ビールメーカーの一つ「マース」が無料配布していたノンアルコールビール。キンキンに冷えていました Photo: Yuu AKISANE
ベルギー国民食といっても過言ではないフライドポテト。現地風にいうと「フリット」。特徴は二度揚げしてカリカリに仕上がっていることと、付け合せのソース Photo: Yuu AKISANE

 そうこうしているうちに、オウデ・クワレモントのコースに到着。いままで映像や写真でしか知ることができなかった、ゴツゴツの石畳を踏みしめながら、選手になった気分で坂を上っていきます。石と石の隙間が大きく、歩きづらいです。こんなところを自転車で走るなんて、正気の沙汰とは思えません。

 山頂に向かって歩いていると、開けた観戦スペースがあります。山頂に向かって右側はVIPゾーンとして確保されており、一般の観客は立ち入ることができません。左側はフリー観戦スペースとして開放されており、自由に場所取り可能となっていました。

オウデ・クワレモントの石畳。実際に見ると石と石の隙間が大きく、徒歩でも歩きづらいほど Photo: Yuu AKISANE
急勾配区間を越えたあたりの開けた草原に設けられた観戦スペース。大型ビジョンそばの好位置は埋まっていました Photo: Yuu AKISANE

 筆者が現地に到着した時刻は午前11時頃でしたが、柵沿いで大型ビジョンの見える好位置は現地の人たちによって確保済み。それでも、せっかくなので柵越しの至近距離で選手の走る姿を見たいと思い、大型ビジョンは遠くてあまりよく見えませんが、山頂寄りの沿道に場所を確保しました。

目の前の石畳を高速で走り抜ける選手たち

 オウデ・クワレモントは男子レースは3回、女子レースは1回通過します。最初は男子レースが午後1時30分頃に通過予定でした。

 選手がやってくるわかりやすいサインは、レース関係車両の通過と上空のヘリコプターです。コミッセールカーなどの自動車が大量に通過してしばらくすると、空撮映像を撮るヘリコプターが上空にやってきます。自分たちの真上を通過したなと思ったタイミングで、先頭の逃げ集団がやってきました。

最初にオウデ・クワレモントに登場したアスタナのユーゴ・ウル Photo: Yuu AKISANE

 観客の歓声で気付けるかと思っていましたが、ヘリの音や選手の前を通過するカメラバイクやコミッセールカーの騒音にかき消され、突然選手たちが現れた感覚でした。なので、結構身構えていないとすぐに気付けないので要注意です。

 さらに自分がいた場所は、オウデ・クワレモントの上りの終盤で、比較的勾配が緩やかな区間でした。石畳とはいえ、選手たちは相当なスピードで走り抜けます。さいたまクリテリウムのように道幅が広いわけでもないため、本当に目の前を一瞬で通り過ぎる感覚でした。

 選手のゼッケンナンバーなど認識する間もなくひたすらカメラのシャッターを切るも、被写体が速すぎてブレブレ。と同時に、こんな歩きづらい石畳を高速で走り抜ける選手たちの凄さに感動です。

バスティアネッリを先頭にアタックがかかった女子レース終盤の様子 Photo: Yuu AKISANE

 女子レースは、ラスト20kmを切った勝負どころにオウデ・クワレモントが設定されていました。この日勝利したヨーロッパ王者のマルタ・バスティアネッリ(イタリア、チーム ヴィルトゥ・サイクリング)を先頭に、有力選手たちが苦悶の表情を浮かべながら到来。集団後方には千切れた有力選手の姿も見られ、オウデ・クワレモントの厳しさを実感した瞬間でした。

憧れのトップ選手の決定的瞬間を目撃

 男子レース、2回目のオウデ・クワレモントを目前に、優勝候補のマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)が落車するハプニングが発生。現地でも大型ビジョンや手元のスマホで状況を知ったファンがざわざわしていました。

 集団から飛び出した2人の選手を追って、ドゥクーニンク・クイックステップがコントロールするメイン集団が到達。勝負どころを前に致命的になりかねない遅れを喫したファンデルプールに対しては、「ヘイ!マチュー!」と大きな声援が送られていました。

落車で遅れながらも、集団復帰を果たしたマチュー・ファンデルプール。写真は3回目のオウデ・クワレモントにて Photo: Yuu AKISANE

 この周回からメイン集団から遅れた選手たちも大勢見かけられました。特に印象的だったのは、恐らくファンデルプールの集団復帰をアシストしたと思われるコレンドン・サーカスの選手たちの姿でした。ファンデルプール通過後から1分近く経って、私の前を通過したのですが、その表情が非常に険しかったからです。アシストのキツさに加えて、ファンデルプールを好位置まで引き上げられずに仕事を終えたことへの無念が混じったような表情でした。そういった普段、中継では見られないアシストの一面を知ることができるのも現地観戦の魅力でしょう。

 そして、1時間後ほど経ち、逃げを吸収し集団は一塊となったまま、いよいよ最終局面である3回目のオウデ・クワレモントを迎えます。

 先頭でやってきたのは鮮やかなピンクのジャージのEFエデュケーションファーストの選手でした。後にこのレースを勝利したアルベルト・ベッティオール(イタリア)の決定的なアタックの瞬間だったことがわかるのですが、観戦当時はさすがに把握できませんでした。

 それでもEFの選手を追って、金色の袖が目立つグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)を先頭に、超有力選手たちがペースアップしている姿に大興奮。

3回目のオウデ・クワレモント、集団から飛び出したアルベルト・ベッティオール Photo: Yuu AKISANE

 有力選手たちが通過すると、周りの観戦者たちは一気に大型ビジョンのある広場の方へと移動します。筆者も大型ビジョンへ向かいながらレース展開をスマホでチェック。ちょうどメイン集団がパテルベルグを越えたあたりで、独走しているベッティオールが逃げ切れるかどうかという状況でした。

 しかし、ここはベルギー。世界的レースといえども、観戦者の大半が地元のベルギー人。大型ビジョンにファンアーフェルマートらベルギー人選手が映ると歓声が上がります。イタリア人のベッティオールへの声援は少なく、メイン集団が追いつけるかどうかに注目が集まっていたように思えます。

沿道観戦を終え、大型ビジョンを見つめる大勢のファン Photo: Yuu AKISANE

 追走集団はお見合い状態に陥ってしまい、ペースがなかなか上がらず、ベッティオールの逃げ切りが濃厚に。頭を抱えるベルギー人も見かけられるほどでしたが、いざベッティオールが逃げ切り勝利を決めると、拍手の嵐が巻き起こりました。ベルギーの観客たちは国籍関係なく勇敢な走りを見せた王者を称えていたのです。

現地でしか手にすることができない宝物

 こうして、初めての海外レース現地観戦は終了。オウデ・クワレモントの山頂付近のポイントで、見た景色・エースたちの表情・遅れた選手たちの姿・息苦しいくらいの土埃・レース関係車両や空撮ヘリの爆音など、中継映像ではわかりえない体感が得られました。少なくとも私の手元には、勝利を手繰り寄せるアタックを決めた瞬間のベッティオールの写真と動画があります。それを現地で見た、撮ったという実感は何にも変えられない宝物となりました。

 ちなみに、一部のベルギー人ファンにとってはレース終了後もまだまだ宴会は続く、といった様子で、帰りのシャトルバスの待機列でも飲めや歌えやの大騒ぎをしている人たちもいました。若者だけでなく、おじさんも同じようなテンションで盛り上がっています。

 もちろん現地観戦するファンは、宴会目的の人だけではありません。筆者の左隣にいたファンはイギリスからやってきた親子で、待機中はずっと自転車レースの話をしていました。家族でピクニックのようにしながら観戦しているグループも多々見られました。集団が通り過ぎたあと、子供たちは草の上で寝転んでいたり、サッカーで遊んでいたり、酔いの回った大人たちも爆睡していたり、各自が思い思いにロンドの空気を自由に楽しんでいる様子でした。

 自転車レース界では最も格式の高いレースの一つでもあるロンドですが、熱狂的な自転車ファンだけでなく、非常にライトな層にまで現地観戦の文化が定着していることに、最も感銘を受けました。

 いつか日本にもそのような日がくればいいなと願いつつ、一度はヨーロッパでの現地観戦をして本場の雰囲気を味わうのも粋だなと思いました。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。
  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載