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栗村修の“輪”生相談<151>20代男性「クリテリウムでコーナーの度に離されてしまいます」

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 はじめまして、いつも参考にさせていただいています。

 私のプロフィールとしましては、20代・男性・身長174cm・体重61kg、競技として週20時間程度トレーニングをしているものです。

 悩みとしましては、クリテウムでコーナーを抜ける度に、前の人から離されてしまい、無駄脚を多く使ってしまいます。コーナーリングの技術自体はそれほど問題なく、適正なスピードで曲がることができていると考えています。

 自分の仮説としては、ギヤが重すぎる、ダッシュ力・加速力がない(関係ないかもしれませんが5秒平均1100Wが最高です)等だと思っていますが、ほかに何が考えられるでしょうか。また、これを克服するためには、どのような練習がよいでしょうか?

 ご回答よろしくお願いします。

(20代男性)

 パワートレーニング普及の影で、テクニック不足に悩む方は多いようですね。

 中でもコーナーの処理は、成績を左右する重要なテクニックです。せっかくフィジカルを鍛えても、こういったテクニックが弱いとレース成績に繋がりません。かつて書き下ろしたトレーニング本『栗村修のちょっと本気のロードバイクトレーニング』(洋泉社)でコーナーリングに力を入れて解説したのはそのためです。今回のお答えもその内容に一部被りますが、ご容赦ください。

 今回のお答えを一言でまとめると、「質問者さんによる『コーナーリングの技術』の定義は正しいですか?」ということになります。レースにおけるコーナーリングの技術は、「コーナーを曲がる技術」ではないんです。

 コーナーリングの最中は基本的にペダリングはできませんし、集団内であれば好き勝手にラインも変えられません。要するに、極端な表現をするとコーナーに入ってしまったらやることがないわけです。したがってコーナーを適切に処理できるかどうかは、①コーナー進入時の速度と位置、②コーナー脱出時の位置と加速のタイミング、で決まります。

 つまり、進入前と脱出の仕方が重要です。これを念頭に置いてください。

誰よりも速くコーナーを駆け抜けたい… Photo: Yuzuru SUNADA

 さて、脚を使わない理想的なコーナーリングとは、コーナー脱出時の加速が少ないコーナーリングのことですよね。では加速を少なくするためにどうすればいいかというと、進入時の減速を少なくすればいいんです。たくさん減速するからたくさん加速しなければならず、脚を使うわけです。

 実はこれが答えなのですが、ちょっと不親切すぎるので具体的に補足します。

 ありがちなパターンは、前走者との間を詰めることを意識するあまり、進入時に前との車間が詰まり過ぎてしまい思いっきりブレーキをかけ、また脱出時にフルもがきするケースです。たしかに前走者との距離を開けないことも重要ですが、これをコーナーの度に繰り返していたらあっという間に脚がなくなってしまいます。

 しかし、こういう走り方ならどうでしょう。極端な例ですが、一種の思考実験として想像してみてください。

 コーナーの50m手前で脚を止め、惰性で進む。当然自転車は徐々に減速しますよね。前方では前の選手がコーナーに入り「渋滞の原理」により必要以上にブレーキをかけて急減速しています。惰性で進むあなたはだんだん前走者に近づいていき、コーナーの半ばで前走者にあわや追突!

 しかしその瞬間、コーナーを出た前走者が腰を上げて加速をし始めました。あなたは追突を免れるどころか、それまでのスピードを生かしてほとんど加速をせずに前走者についていけます(高速コーナーではあまり効果がありませんが…)。

 どうでしょうか。こうすれば、非常に楽にコーナーを曲がれます。

 これは自分自身が集団の最後尾にいないとできない極端な例ですが、前走者がコーナーを時速40km→20km→40kmというスピード変化でクリアしたとして、あなたが時速40km→25km→40kmというふうにクリアできれば、時速5kmぶん脚を残せるということです。

 現実的なテクニックとしては、

・ブレーキング時の初動で少しだけ前走者との車間を空ける(間に他の選手が入ってこない程度)

・その車間を利用して前走者よりもほんの少しだけ速い速度でコーナーを回り、できるだけ早いタイミングで加速の態勢に入る

・集団内であればコーナリング速度が速いラインを探す(イン側よりもアウト側の方が減速は少なくて済む)

といった感じになります。

 上記はあくまで「詰まる」ようなコーナーでのテクニックとなりますが、何回も繰り返すことによってレース後半の疲労度は大きく変わってきます。

 実は、クリテリウムなどに強いプロはこの手法を無意識に使う場合があります。もちろんあまり車間を空けると差し込まれるので危険なのですが、馬鹿正直に前についていく必要も、実はそれほどないんです。

 ロードレースはフィジカルだけの競技ではありません。このようなスキルにも目を向けてみてくださいね。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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