自身4つ目のモニュメント獲得36歳ジルベールがパリ〜ルーベ初制覇 サガンら千切り、ポリッツとのゴール対決を制す

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 「クラシックの女王」「北の地獄」との異名をとるUCIワールドツアーのワンデーレース、「パリ〜ルーベ」が4月14日にフランスで開催され、36歳の大ベテラン、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が初優勝を飾った。有力選手による6人の先頭集団から、昨年優勝のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)らライバルを振り切り、最後はニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)とのマッチスプリントを制した。

フィリップ・ジルベールが自身初のパリ〜ルーベ制覇 Photo: Yuzuru SUNADA

決まらない逃げ

 1896年に第1回大会が行われたパリ〜ルーベは、今年で第117回目の開催を迎えた。レースの特徴は荒れたパヴェ(石畳)が幾度となく登場する点。パリ郊外のコンピエーニュからルーベのベロドローム(自転車競技場)へと至る257kmのコースの中に、パヴェのセクター(区間)が29カ所設けられ、石畳の総距離は54.5kmにも及ぶ。コースはほぼ平坦だが、石畳の衝撃や巻き上がる土煙が選手たちを極限まで消耗させる、最も過酷なロードレースの一つだ。

 パヴェのセクターはカウントダウン形式で、97.5km地点のセクター29から256km地点のセクター1まで番号が振られる。難易度は1から5の星で表され、最高難易度の5つ星は3カ所、セクター19のアランベール、セクター11のモン・サン・ペベル、そしてセクター4のカルフール・ド・ラルブルだ。

石畳が始まる頃ようやく形成された、欧州チャンピオンのトレンティンを含む逃げ集団。しかし大逃げは許されず Photo: Yuzuru SUNADA

 レースは、前半の舗装路区間で逃げが決まらず、アタックと吸収の小競り合いが止まないまま進んでいった。最初の石畳となるセクター29の直前から複数のアタックが抜け出し、20人超の逃げ集団が形成された。イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら、有力選手も複数含む集団だったが、追走するメイン集団は大逃げを許さない。逃げと追走のシーソーゲームは、結局セクター23の入口でメイン集団が逃げを捕らえて、レースは振り出しに戻った。

パンクに苦しみ勝負に加われなかったクリストフ Photo: Yuzuru SUNADA

 直後、6人のアタックの先行から、追走した約30人が合流して先頭集団が形成された。だが、ここにサガンが入れなかった。ボーラ・ハンスグローエは、先頭集団に入ったアシスト選手も第2集団に下がらせ、サガンをメイン集団に戻すべくけん引。この直前にサガンの強力なアシスト、ダニエル・オス(イタリア)を落車で失い苦戦の局面となったが、セクター20の直前で再びメイン集団を一つにすることに成功した。その一方で、今大会有力選手の一人、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAE・チームエミレーツ)は、2度のパンクに見舞われて早くも絶望的な遅れとなっていた。

ファンアーフェルマートが先頭で最初の5つ星パヴェ、アランベールへ Photo: Yuzuru SUNADA

有力選手による6人の先頭集団に

 サガンも集団前方に復帰し、いよいよ最初の5つ星パヴェ、セクター19のアランベールへと突入した。この大会2017年の覇者、グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)が先頭に立つ。先頭付近では有力選手が見合う中、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がメカトラブルで集団後方へと後退してしまった。しばらく走ったファンアールトは自転車を交換。しかし走り出してすぐ、カーブで滑って落車してしまう。起き上がって走り出し、約10kmをかけて集団に復帰したものの、手痛いダメージを受けてしまった。

アランベールで後退したファンアールト(中央)。バイク交換、落車による遅れがレース終盤に響いた Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団では1人が抜け出した中で、補給所でポリッツがアタックを仕掛けた。ジルベールとリュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がこれに反応し、先行していた1人を追い抜いて、3人の逃げグループとなった。逃げで積極的なペースアップを見せるのはジルベール。約20秒差で追うメイン集団では、追走の動きが活発化し、集団に復帰したばかりのファンアールトもこれに加わった。サガン、ランパールトもアタックに反応。メイン集団から飛び出した追走グループは、数人の脱落者を出しながら逃げの3人を追った。

 先頭ではセクター12でゼーリッヒが脱落し、ジルベールのペースアップに、ポリッツも遅れ始めた。追走はファンアールト、サガン、ランパールト、セップ・ファンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト)の4人に絞られて、ポリッツに合流。さらにサガンが先頭を行くジルベールを捕らえ、6人の先頭集団となってセクター11、2つ目の5つ星パヴェとなるモン・サン・ペベルに入った。

サガン、ファンアールト、ファンマルク、ランパールトが先頭へと追い付く Photo: Yuzuru SUNADA

止まないジルベールの攻撃

 一方のメイン集団では、追走の動きに乗り遅れたファンアーフェルマートが追走の動きを見せていた。しかし先頭に2人を送り込んだドゥクーニンク・クイックステップや、サガンのボーラ・ハンスグローエが集団の抑えに回り、組織だった追走の動きを断ち切っていた。最初は20秒程度だったタイム差は、懸命の追走も徐々に広がり始め、勝負は先頭の6人にほぼ絞られつつあった。

観衆が連なる石畳区間を行く集団 Photo: Yuzuru SUNADA

 6人はほぼ均等に先頭交代しながら進んでいく。絶対的な優勝候補は、ディフェンディングチャンピオンのサガン。一方でジルベール、ランパールトと、唯一2人体制のドゥクーニンク・クイックステップも有利だ。この両者の戦いを軸に、伏兵3人がどんな戦いを見せるかがカギとなる。

 セクター6を終えた舗装路で、まずジルベールが鋭いアタックを見せた。サガンが反応し、ポリッツも付くが、ファンアールトはこれを追えない。ファンマルク、ランパールトは、ファンアールトの後ろで様子をうかがう。そしてセクター5のパヴェで、ランパールトがペースを上げると、ファンマルクのみがこれに付き、ファンアールトは完全に脱落した。優勝候補の一人に挙げられ、積極的な走りも見せていたファンアールトだが、中盤のトラブルで脚を使った影響か、最後の勝負どころを前に力尽きてしまった。

ランパールトが先頭でカルフール・ド・ラルブルへ。この後サガンの後ろからジルベールがアタック Photo: Yuzuru SUNADA

 ランパールトらは先頭に復帰し、先頭グループは5人になった。いよいよ最後の5つ星、カルフール・ド・ラルブルだ。ここでも途中、ジルベールがアタックを仕掛けた。しかしサガンはしっかり反応。盤石の戦いぶりだ。最大の難所、カルフール・ド・ラルブルを終え、このままルーベのゴールスプリントに持ち込めば、スプリント力で頭一つ抜けるサガンが圧倒的に有利だ。

サガンが突然の失速

 だが、その時は突然訪れた。続くセクター3、いちかばちかのアタックを仕掛けたポリッツに対し、集団先頭のサガンは後ろを見て反応しない。差が広がり始める中でジルベールが追走のアタックをするが、サガンはこれにも付けない。後ろを見ながらじわじわと後退し、ポリッツとジルベールの先行を完全に許してしまった。

最後はマッチレースとなったジルベールとポリッツ Photo: Yuzuru SUNADA

 サガンは、ファンマルク、ランパールトを引き連れた追走の先頭に立つものの、急激に消耗した様子を見せ、とても追い込む走りには見えない。チームメートのジルベールが先行するランパールトは追走には加わらず、もう一人のファンマルクも前に出ず、自転車をしきりに気にする様子を見せる。実はファンマルク、途中のメカトラブルでチームメートの自転車を借り、数十kmに渡ってサイズの小さい自転車で走っていたのだ。自分一人で追うしかないサガンだがスピードは上がらず、パリ〜ルーベ2連覇に赤信号がともった。

 先頭2人は、百戦錬磨のジルベールが圧倒的に有利な展開となった。ゴールスプリントはジルベール有利と見られるものの、ポリッツも今一度のアタックを仕掛ける余力は見えず、逆にジルベールのアタックを警戒するので精一杯の様子。両者は残る2つのセクターをトラブルなく乗り越え、ゴール地点となるルーベのベロドロームへと入った。トラックを1周半してのゴール。ポリッツは先行しながら、ジルベールのスプリントのタイミングを計る。第3コーナーでついにジルベールが仕掛けた。インを付いて前に出ると、そのままポリッツを従えたままゴールを切ってガッツポーズ。プロ17年目の大ベテランが、ついに女王のハートを射止めた瞬間だ。

ジルベールがスプリントで快勝。わずかな可能性に賭けたポリッツを打ち破った Photo: Yuzuru SUNADA

 これまで世界選手権ロード優勝を始め、アルデンヌクラシック3連戦3連勝、イル・ロンバルディア優勝など、ワンデーレースで数々の勝利を手にしてきたジルベール。かつては春のクラシックレース後半の、アップダウンが多いアルデンヌクラシックを得意としていたが、現在のチームに加入した2017年にはツール・デ・フランドル(ロンド・ファン・フラーンデレン)でも優勝し、石畳が厳しい北のクラシックへの適性も見せていた。権威の高い5大クラシックレース“モニュメント”のうち、これで4つを制覇。輝かしい栄光の歴史に新たな1ページが加わった。

上位3選手。(中央左から)3位のランパールト、優勝のジルベール、2位のポリッツ Photo: Yuzuru SUNADA

パリ〜ルーベ2019結果
1 フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) 5時間58分2秒
2 ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) +0秒
3 イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) +13秒
4 セップ・ファンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト) +40秒
5 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +42秒
6 フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) +47秒
7 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
8 ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)
9 エヴァルダス・シシュケヴィチュス(リトアニア、デルコ・マルセイユプロヴァンス)
10 セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、EFエデュケーションファースト)

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