TKCプロダクションズ森本さんがリポート国を挙げてマウンテンバイクを盛り上げる、ニュージーランドのトレイルの魅力に迫る旅

by 森本禎介 / Teisuke MORIMOTO
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 近年、国を挙げてトレイルを整備し、マウンテンバイク(MTB)を盛り上げようとしているニュージーランド。その経済効果は年間15億円と成果を上げています。世界各国へ出かけ、自転車、MTB事情に詳しいTKC Productions(ティーケーシープロダクションズ)代表・森本禎介さんが実際にニュージーランドのトレイルを走った体験リポートをお届けします。

ボグインクリークから115mの高さを誇る最初の吊り橋です Photo: Teisuke MORIMOTO

人口は日本の20分の1、22のトレイルに1.3億人訪問

 ニュージーランドの人口は約480万人、その面積はおおよそ日本から北海道と四国を抜いた広さで、福岡県の人口が510万人なので人口密度は日本の1/20です。近年ニュージーランドは世界的にマウンテンバイクの名所として世界中からMTBerが訪れる土地となっており、クロスカントリー(XCO)選手では絶対王者ニノ・シュルターをゴールスプリントで下して世界に衝撃を与えたサム・ゲイズ、エリートにステップアップしたアントン・クーパーなどが現役ですが、ゼロ年代にはバネッサ・クインが2004年にダウンヒル世界選手権を制覇するなどグラビティ系の名選手も輩出しています。最近ではクランクワークス・ロトルアが開催され、今年からUCI(国際自転車競技連合)と提携したエンデューロの世界シリーズであるEWSがロトルアで開幕するなど世界規模のMTBイベントが多く開催されるようになりました。

 しかし、ニュージーランドのMTBレーシングだけを見てその全体像を語ることはできません。これには政府の投資が深く関わっています。まず2009年にナショナル・サイクルウェイ・ファンドがニュージーランド・サイクル・トレイルの伸張のため政府から40億円、さらに地域社会から25億円の出資を受けて設立されました。

 ニュージーランドの国土、自然環境、文化、歴史をよく伝え、高品質なツーリズムによって国内外から人を集め、そして、地域の雇用と経済を創出し、ニュージーランド人のレクリエーションと健康のために寄与するという目的を持ったものです。現在は2012年設立のMBIE(企業・技術革新・雇用省)がニュージーランド・サイクル・トレイルを管轄し、2016年には追加の20億円を政府から得ており、既に22のトレイルを1.3億人が訪れ、2015年の経済効果は30億円という成果を上げています。

1kmごとに標識や分岐を示すサインがあり、NZ政府がトレイルに本気で投資しているのが伺えます Photo: Teisuke MORIMOTO

日本と時差4時間、左側通行でストレスなし

 さて、以前からニュージーランドでMTBライドするチャンスをうかがっていた筆者ですが、3月中旬に関西国際空港(関空)〜オークランドのニュージーランド航空が8万9910円という衝撃プライスであることを発見、即予約して3月14日、オークランドに降り立ちました。欧米と違い、夜9時関空発で機内で寝て起きるとオークランドでは翌日の12時で、時差もわずか4時間なので身体的にも非常に楽です。また、予約した激安レンタカーは日本から輸出された右ハンドルのトヨタ・エスティマで、見た目はくたびれていても走りは快調、日本と同じ左側通行なので海外での運転に慣れていない方でもストレスは少ないと思います。オークランドから今回ベースとしたロトルアまでは3時間ほどのドライブで到着、早速バイクを組み立ててからダウンタウンまでビールを呑みに行き、翌日に備えます。

ロトルアは温泉地として名高く、公園で涌いています Photo: Teisuke MORIMOTO

ワンウェイでも出迎えシャトルサービス

 22あるニュージーランド・サイクル・トレイルのうち10は北島にあり、その中でもティンバー・トレイルは85kmを誇るワンウェイのトレイルで、ニュージーランドの中でもベストトレイルの一つとして名高いのですが、ループではなくワンウェイなのでシャトルサービスが必要で、これがたった4000円です。事前にトレイルの終着地点のオンガルエにあるエピック・サイクルアドベンチャー社にシャトルバスを予約しました。8時半に来るよう指示を受けたのでロトルアを6時に出て2時間のドライブで到着しますが、慌ただしくバイクをトレーラーに積み替えると8時半を待たずに出発、ドライバーはとんでもなくぶっ飛ばすのであっという間にスタート地点のプレオラビレッジに到着します。

プレオラまで約1時間ですが、ドライバーはとんでもなく飛ばします。NZに車酔いは存在しないようです Photo: Teisuke MORIMOTO

 走り出して分かったのですが、ティンバー・トレイルは投資を受けて恐ろしく丁寧に整備されており、1kmごとにある標識や分岐を示すサイン、そしてグラベルバイクでもたやすく走れるであろう、極めてスムーズな路面、水の管理が徹底されているので、降雨直後でもトレイルに轍が残らないため、ほぼ年間を通して走れると思われます。

材木を切り出すためのティンバー・トラムの廃線跡なので切り通しが連続します Photo: Teisuke MORIMOTO

 そして見所は自転車とハイカー専用の吊り橋です。日本であれば降車して押しなさい、と看板が立っているでしょうが、そんなケチケチしたことは言いません。中間地点にはロッジとキャンプサイトがあり、多くの人はキャンプしながら走るようです。後半はティンバー・トラムという鉄道の線路跡走るため道幅が広くなりますが、最後の10kmには絶景で右側が崖のシングルトラックを下ってゴールです。

 筆者で5時間半ほどで85kmを走破したのですが、おそらくある程度の経験者であれば1日で走ることは簡単なのですが、携帯電話の電波はほぼ入らないのと、補給できる所も中間のロッジ以外はありませんので、甘く見てはいけません。気軽に楽しみたいなら、e-MTBをレンタルしてロッジから後半のみを走るのも良さそうです。

ライティヒ・ホリデー・パークがMTB、カヌー、ハイキングなどアクティビティの拠点になっています Photo: Teisuke MORIMOTO
最後はグラベルを走ってトレイルヘッドに到達します Photo: Teisuke MORIMOTO
激しく汚れた若いカップルのバイク Photo: Teisuke MORIMOTO

アドベンチャー度が高いコース堪能

バイクパッキング仕様で荷物満載のMTBがジェットボートに運ばれていきました Photo: Teisuke MORIMOTO

 翌日はマンガプルア・トラックを走ります。前日の疲れを残しながら早朝に起床し、5時にロトルアを出発して7時半にライティヒ・ホリデー・パークに到着、ここでバイクをトレーラーに積み込んで1時間以上バスに揺られるのですが、最後の10kmはとんでもなく細いグラベルをほとんど暴走し、ようやくトレイルヘッドに到着します。

 マンガプルア・トラックは距離35kmで最初獲得標高320mほどダブルトラックを登り、6kmほど平地基調で後はほぼ緩い下りというコースプロフィールで、前日の85kmに比べてイージーだろうと思っていたのですが、これが大間違いで、ティンバー・トレイルに比べて全体的に路面が荒れており、そして雨の影響でマッドになっている所も多く、最後の10kmはシングルトラックになるのですが谷側は崩れている所や、柵やガードレールも無い絶壁の上を走るルートなどアドベンチャー度はかなり高かったです。

写真では伝わりませんが決死の覚悟で撮影したものです Photo: Teisuke MORIMOTO

ジェットボートやお迎えお迎え込みで1万円

 最後は川沿いの船着き場にゴールするのですが、ここからバイクごとシボレー製V8スモールブロック搭載のジェットボートで40分ほどピピリキまで運ばれ、さらに迎えのハイエースで朝のホリデー・パークまで戻り、ドロドロになったバイクを洗わせてもらって1万円少しなので、格安としか言いようがありません。

トレイルの終点は川岸になります。次回はカヌーに挑戦したいです Photo: Teisuke MORIMOTO
ピピリキまで何回か船着場に寄って乗客を降ろします Photo: Teisuke MORIMOTO
ピピリキに到着、ここからはハイエースでホリデー・パークまで戻ります Photo: Teisuke MORIMOTO
映画ロード・オブ・ザ・リングの滅びの山として有名になったナウルホエ山 Photo: Teisuke MORIMOTO

ハミルトンの街からすぐ近くでオレゴン州ベンドを思わせるようなシングルトラックを走れるのは感動的ですらあります Photo: Teisuke MORIMOTO

 ロトルアには3泊したのですが有名なロトルアのトレイルシステムを走らず、そのままオークランドに戻ってしまったのが悔やまれます。この後、オークランド近郊にあるフォーフォーティMTBパークも走ってきました。リフトの替わりに山頂までバスでピックアップしてくれるMTBパークで、6回券を約4000円で買って走ったのですがトレイルと違い、専用のパークならではのハイスピードさに文字通り衝撃を受けます。翌日にはニュージーランド第4の都市ハミルトンのダウンタウンからほど近い工業団地内の小さな森に設計された無料で走れるハミルトン・マウンテン・バイク・トラックを走ったのですが、小さな公園の中に緻密に作り込まれたトレイルに感動します。

本格的なコースが整備されたフォーフォーティMTBパーク Photo: Teisuke MORIMOTO
ハミルトン・マウンテン・バイク・トラックは一方通行でMTB専用、ハイカー、馬、エンジン付は全て乗り入り禁止です Photo: Teisuke MORIMOTO

NZ北島オークランド近郊のFourforty MTB Parkを走ってきました

MTBパークも充実

 1週間の滞在で5回のライドをしたのですが、実質移動日以外は毎日乗ったことになります。ニュージーランドのMTBトレイルに触れて感じたのは、ニュージーランド・サイクル・トレイルのような大都市から離れた場所にあるロングトレイルから、グラビティ系ライダーを満足させるMTBパーク、街から近い場所にある箱庭のようなMTBパークまで、ありとあらゆるタイプのトレイルが存在するということです。

 福岡県より少ない人口ながらも、世界のトップレベルで戦えるMTB選手を輩出しているのは、この素晴らしいMTB環境の下支えがあるからでしょう。次回はクイーンズタウンを擁する南島へのトリップを予定しています。

ハミルトン・マウンテンバイクパークのフルラップをノーカットでお届けします

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