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れづれイタリア~ノ<128>ネット時代を生き抜く技を磨く イタリア「ベストショップランキング」が地域ショップに与える影響

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 イタリアではユニークなランキングがあります。その名も、イタリアベストメカニックランキング『Mastro Artigiani』(マストロ・アルティジャージ)です。イタリア自転車専門誌『Bicisport』(ビチスポルト※1)と「Cicloturismo」(チクロトゥリズモ※2)を発行するコンパニア・エディトリアーレ出版が主催するランキングで、2018年で40年の歴史を迎えました。

※1『Bicisport』:主にプロの世界の情報を専門的に扱う月刊誌。記事のレベルが高く、イタリアで一番売られている自転車競技専門誌。日本で例えると「チクリッシモ」(八重洲出版)が近い
※2『Cicloturismo』:主にグランフォンド、市民レース、サイクリング情報を扱う月刊誌。『サイクルスポーツ』(八重洲出版刊)や『バイシクルクラブ』(エイ出版刊)が近い

ミラノ市、マージの工房を支える若き弟子、シモーネさんと入ったばかりの職人。真剣さが伝わります Photo: Marco FAVARO

半年におよぶ投票期間

チクロトゥリズモ紙2018年10月号の表紙

 ランキングのルールはいたって簡単。毎年6月から12月にかけて、両雑誌の最後のページにある応募専用シートを切り取り、出版社に送ると応募できます。ちなみに1票=10点です。

 インターネットによるオンライン投票はありません。古いやり方ですが公正さが好評で、長年この方法で行われています。ランキングは総合ランキングと州別ランキングに分けられ、途中結果は毎月雑誌で公開されます。

5ページに渡りランキングの途中経過が紹介されています(チクロトゥリズモ紙2018年10月号)
イベントでも凄腕のメカニックは引っ張りダコです Photo: Marco FAVARO

 そして2月号に読者が選んだ年間ベストショップが公表されます。今年輝いたのが、私の出身であるパドヴァ市の誰もが認める凄腕のメカニック「チクリ・ベルマショップ」のベルトッコ兄弟。3年連続の総合優勝です。コルナゴ社長のエルネスト・コルナゴもメカニックとして3回ほど総合優勝を飾りました(1979年、1982年と1983年)。

通販の登場で変化する自転車ショップ

 世界的に通販サイトの登場はショップの伝統的なやり方を大きく変えました。イタリアも例外ではありません。自宅から動かなくても世界中から好きなブランド、好きなメーカーの商品を注文できるようになりました。ショップ側にとっては大打撃に違いありません。ショップにとって、貴重な収入源であるジャージやパーツ、ケミカルの販売もほぼ途絶えてしまいました。

パドヴァ市、歴史ある小さな自転車ショップ、モレマでよく働くカルロさん。わからないことがあれば、まず自分で調べるスタイル。それでもわからなければ、店主に見てもらいます Photo: Marco FAVARO

 イタリアでは、自転車を販売するショップは主に3つの形態があります。

1)大型格安スポーツショップ
2)テーマ別自転車や高級ブランドを扱うショップ
3)優れたメカニックがいる自転車ショップ

 大型格安スポーツショップの代表といえば、フランス生まれの「デカスロン」です。ヨーロッパのどの都市にも進出し、ランからスイム、バレーボール、サッカー、ラグビー、格闘技まで総合的にスポーツを扱う専門店です。自社開発のアイテムも多く、全体的に価格が安い。

 その中で自転車やパーツ、格安ウェアの販売も行われており、経費を抑えたい人や消耗品だけを買いたい人にとっては非常に都合が良いです。COOPのような総合スーパーでも格安自転車(主にシティバイク)が売られ、安い自転車ならどこでも購入できる時代です

 デカスロンなどの登場で、自転車を販売する昔ながらの「自転車屋」が数を減らしています。その代わりにテーマ別、または高級自転車ブランドを専門的に扱うおしゃれなショップが増えています。アーバンバイク専門店、e-BIKE専門店を始め、ミラノのビアンキカフェ&サイクル(2014年開業)と姉妹店のミラノメッセ店(2019年2月開業)や、ローマのトレックコンセプトストア(2018年開業)のように各メーカーが独自の専門店を打ち出しています。展示スペースが広く、店内が明るく、おしゃれ感が漂うのが特徴です。

ミラノ中心にあるビアンキカフェ&サイクル Photo: Marco FAVARO
広々としておしゃれ感たっぷり Photo: Marco FAVARO

 逆に店舗面積が狭く、薄暗く、お世辞でもきれいとはいえない昔からある地域ショップが苦戦を強いられています。

州別に細かくショップやメカニックたちの動きが紹介されています(チクロトゥリズモ紙2018年10月号)

 このショップたちは自転車の販売を縮小し、優れたメカニックサービスを提供することで生き残りをかけています。地域ショップの間で「イタリアベストショップランキング」が以前より重要視され、各ショップはお客さんに投票を呼びかけています。雑誌に掲載されるか否かが、お客さんの流れを大きく左右するからです。

若者が小さな自転車ショップを救う?

 地域ショップが得意とするのが、古い自転車の整備です。イタリア人は古いものを好む傾向があり、どの家にも30年を超えるスチールの自転車が現役でがんばっています。スチールの自転車は頑丈で、消耗品さえ変えればずっと使うことができます。

多くのメカニックは優れたフレーム職人でもあります Photo: Marco FAVARO

 意外なことに地域ショップを支えているのが若手のメカニックです。デジタル化が進んでいる今、逆にものづくりに魅力を感じる若者が増え、小さな店舗で技術を学びたいという若者の姿をよく見かけるようになりました。これは自転車業界に限ったことではなく農業の世界でも起きていることです。若者たちは自分の手で何かを作ることに「やり甲斐」を感じているようです。この若い人材はイタリアの自転車の未来を担うことになると期待されています。

 さて、2018年の総合ランキングを見てみましょう。イタリアを訪れた際に、ぜひ各店に足を運んでみてください。新しい出会いによって新しい発見があるに違いありません。

2018年総合ベスト10

1位 Enrico, Daniele Bertocco (ヴェネト州)6240点
2位 Gabriele Rossi (ヴェネト州)3770点
3位 Mimmo Anastasi (リグリア州)3620点
4位 Maurizio Falocco(ウンブリア州)2170点
5位 Antonio Carpinello(ピエモンテ州)2130点
6位 Consuelo Noe(マルケ州)1820点
7位 Giancarlo Benato(ヴァッレ・ダオスタ州)1560点
8位 Fabio Balducci(マルケ州)1480点
9位 Roberto Sambusiti(ロンバルディア州)1330点
10位 Igor Zaggia(ヴェネト州)1250点

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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