発起人の加藤康則氏に聞くバンクリーグを競輪場で行う深い理由 見えてくるロードレースの悩み、リーグの未来

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 Jプロツアー参加チームなどが各地の競輪場を舞台に競い合うトラックレースの対抗戦「バンクリーグ2019」が今夏、本格始動する。ロードレースチームがなぜ競輪場で戦うのか。バンクリーグ発起人でキナンサイクリングチームのゼネラルマネージャーの加藤康則氏に聞くと、そこにはロードレースチームが抱える深い悩み、バンクリーグが目指す将来のあり方も見えてきた。

―なぜ競輪場を活用しようと考えたのでしょうか?

バンクリーグ発起人でキナンサイクリングチームのゼネラルマネージャーの加藤康則氏 Photo: Masahiro OSAWA

 ロードレースは、地域密着型のチームを運営しようと思っても、なかなか難しい現状があります。サッカーのようにホーム開催の試合数をこなせません。我々もツール・ド・熊野のようにホームレースと言えるものがありますが、それを1つ開催するだけで、ものすごい労力がかかっています。ですから、定期的に地元ファンが集い、ファンを増やしていくといったスタイルがとりづらいのが現状です。ロードレースが日本国内でなかなかメジャーにならないジレンマを常に感じていました。

 そこで注目したのが競輪場です。日本には競輪場がたくさんあります。これは世界に類を見ないことであり、活用しない手はないという発想でした。サッカーのようにホームアンドアウェイ方式でバンクリーグを開催するとして、仮にリーグ戦に10チーム参加すれば、年間9レースをホームゲームを開催できるようになります。シーズン中に月1回のレース開催をホームでできれば、それだけでも定期的にファンが集う場の提供が行えるようになります。

 ロードレースの場合は、ひいきの選手がいても、集団内にいるとどこにいるのかわかりません。ファンにとってはなかなか厳しい競技です。我々としてもそうしたところを変えたいと思っていますし、バンクリーグでファンになってもらえれば、主戦場のロードレースも観に来てもらえるようになると思っています。

―バンクリーグの発起人は誰ですか?

 言い出したのは私です。2年ほど前でしょうか。今回発表したチームに声をかけて、構想自体は面白いということで話に乗ってきてくれましたが、開催場所などを含めて、実行役となる事務局がありませんでした。各チームがロードレースとバンクリーグの2つに同時並行的に取り組むことが現実問題として難しかったのです。

宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、チーム ブリヂストンサイクリング、マトリックスパワータグ、シマノレーシング、キナンサイクリングチーム、愛三工業レーシングチーム、チームUKYOが参加。発表会には各チームの代表者が参集した Photo: Masahiro OSAWA

 それで約1年ほど前に、競輪場の着順判定などを事業としている日本写真判定の渡辺俊太郎社長に話を持ち込んだところ、事務局をはじめ、資金面でもバックアップしてくださったわけです。その後で宇都宮競輪場でテストイベントを昨年夏に実施、そこで手ごたえを得て、バンクリーグの本格始動という今に至るわけです。

―渡辺社長のプロフィールに「競輪場が果たすべき役割についての研究」という競輪場の有効活用とイメージの払しょくなどについて書かれた論文があり、加藤さんと同一の考えだったことにビックリです。

 実はその論文を読んで話を持ち込んだという経緯があります。論文を読んだときに、自分の考えていることと同一だったので、これなら協力していただけるかもしれないと思いました。

―バンクリーグにオリジナルルールを採用しましたが、なぜですか?

バンクリーグはJリーグのようにホームアンドアウェイ方式で熱戦を繰り広げる将来を想定。写真は昨年夏に宇都宮競輪場で行われたテストイベントの様子 ©バンクリーグ実行委員会事務局

 オリジナルルールの採用はホームアンドアウェイ方式での開催を目指したいという話につながります。観客目線で見た場合、地元チームに点が入ったのかどうかをわかってもらう単純明快なルールが必要でした。そのためにはわかりやすいルールを作るしかありませんでした。緩い感じで誰もが楽しめるエンタテインメント性が必要だと思いますが、現行の種目ではそれが難しいと思いました。

―エンタメ性の向上には演出も欠かせないと思います。たとえば、B.LEAGUEでは演出に凝っていて「バスケットボールは変わった」という印象を強く与えてくれますが、そうしたところに目は向けていますか?

 それが僕らの目標です。箱物であることが利点だと思うんです。ロードレースのように毎回、開催場所が異なると、凝った演出を行うのが難しい。競輪場ではロードレースよりは演出しやすいです。

 バンクリーグの第2戦として、松坂競輪場での開催が決定していますが、松坂競輪場はLEDでライトアップしてコースを順に照らしていくような仕掛けをすることができたりします。

―ポイント周回を視覚的にわかりやすくLEDを照らすようなこともできるということでしょうか?

 そうしたことを今後、詰めていくことになります。今は試行錯誤の段階ですね。

―競輪場にはギャンブルのイメージがあり、来場者を多く集めるにはイメージの払しょくも大変そうですが。

 これから変えていくべきものだと思います。昨年夏に宇都宮競輪場で行ったテストイベントでは、VIP席を設けて席の有料販売も行いました。そうした試みは今後も続けていきますが、お金を払ってもらう以上、対価以上の価値を提供できないといけないと思っています。飲み物、食べ物など観戦者に楽しんでもらえるものにしていかないといけないと思います。観戦の楽しみ自体が自転車競技には少ない要素なので、そこを変えていきたいです。

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