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強さを仕上げるアミノバイタル②あなたは硬派?軟派? 中野喜文マッサーに教わる、サイクリストタイプ別腰痛対策

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 昨シーズンから腰痛に悩まされている「坂バカ俳優」の猪野学さん。世界一過酷なヒルクライムレース「台湾KOMチャレンジ」では“くるくるケイデンス作戦”でどうにか再発は免れたが、「トレーニングも良いけど、ケガをしない基礎的な体づくりもしたい!」ということで猪野さんが訪ねたのは、数多くのスポーツ選手が信頼を寄せるマッサージャー・中野喜文さん。腰痛の悩みを伝える猪野さんに、「腰痛の対策は、体の柔軟性によってまったく正反対の内容になります」と語る中野さん。「腰痛対策には体幹を鍛えればいい」と思っていた猪野さんの目から、再び鱗が落ち始めた。

ヒルクライムを想定した体の使い方について、マッサージャー中野喜文さん(写真左)からアドバイスを受ける猪野学さん。猪野さんの“サイクリスト的弱点”が明らかに Photo: Shusaku MATSUO

プロの駆け込み寺、マッサー中野さん

 中野さんは青年時代に打ち込んだ自転車競技がきっかけで、スポーツマッサージの道へと進む。やがて日本人マッサーとして初めてジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスに帯同。1998年〜2016年までイタリアのトッププロチームで活躍した経歴を持つ、日本の自転車競技界を代表するプロマッサージャーだ。

中野喜文さん(49)。鍼灸あん摩マッサージ指圧師。長年にわたり、本場ヨーロッパでマッサージャーとして経験を積み、2014年に「エンネ・スポーツマッサージ治療院」を開業。サイクリストのボディメンテナンス分野における第一人者だ Photo: Shusaku MATSUO

 2014年に自身が代表を務める「エンネ・スポーツマッサージ治療院」を開業。さまざまなタイプのサイクリストの身体を診てきた経験から導き出される処方には定評があり、プロ・アマ問わず、悩みを抱える多くのサイクリストが中野さんのもとで治療・フィッティング・コーチングを受けている。

東京・千駄ヶ谷にある「エンネスポーツマッサージ治療院」。ビルの2Fが治療院 Photo: Shusaku MATSUO

 実は20年前に椎間板ヘルニアを発症したことがあるという猪野さんは、昨年まさかの再発。軽いギアで踏んでいるうちはどうにか痛みを抑え込めているが、重いギアで踏み込むと再発するときがある。また、疲れによってフォームが崩れてくると左脚全体が痺れて感覚がなくなることもあるという。自分の腰に何が起きているのかを突き止めるべく、猪野さんも中野さんのもとへと駆け込んだ。

◇         ◇

ケガ予防の肝は「機能分離」

中野:もともとヘルニアを発症した経験があるのなら、まずは整形外科の受診をおすすめしますが、話を聞いていると骨や関節が主原因ではないようにも思います。まあ、でもヒルクライムで腰が痛くなるのはほぼデフォルトみたいところもありますから。

猪野:やっぱりヒルクライマーって腰を痛める人が多いんですか?

ますは猪野さんの腰痛歴・症状について細かく問診 Photo: Shusaku MATSUO

中野:多いです。さらに最近は「パワートレーニング」が普及してきたことも影響していると思います。急激なパワーアップが図れるようにりましたが、一方で出力が上がっても体幹が同時に強化されているわけではありません。関節には自由に動く機能(モビリティ関節)とその動きを安定させる機能(スタビリティ関節)があるんですが、その双方のバランスを欠いて適切な動きができなくなると痛みが出る、というのが一般的な考え方です。

猪野:「モビリティ関節」と「スタビリティ関節」ですか…。

中野:ライディングフォームをとる際に重要な関節は、体の上から下に向かって、頚椎、胸椎、腰椎、股関節、そして膝、足首と6つの関節で構成されています。頚椎をスタビリティ関節として順に、モビリティとスタビリティが交互に並んでいます。

自転車のライディングフォームで使う関節。上から下へ順にスタビリティ関節・モビリティ関節が交互に並ぶ Photo: iStock.com/angelhell

 「Joint by Joint」といわれる考え方で、関節がそれぞれ正しく機能していると無理がかからずケガをしにくい(機能分離)。逆に不安定だと、それに隣接するモビリティ関節が影響を受けて代償動作を強いられる。例えば本来スタビリティ機能を担う腰椎が不安定だと、隣接した股関節が腰椎を安定させようと頑張ることになる。その結果、殿筋群やインナー以外の背筋群など余計な部位に負担がかかることになります。

猪野:僕も、どこか関節が正しく機能していないのでしょうか?

中野:サイクリストの腰痛症には様々な要因がありますが、大きく分けて、①身体が硬すぎる人の腰痛②柔らか過ぎる人の腰痛─の2タイプがあります。どの関節に原因があるのかはフォームを見ながら仮説をたて、話を聞き、身体を見せてもらって、硬い場合だったらほぐす方向で機能分離を促すエクササイズを処方します。

 柔軟性が高すぎて関節が安定しない(ハイパーモビリティ)場合は「締める」ことが必要になる。そのためにはプランクなどで体幹の強化を処方することになります。逆に、硬すぎる人がプランクをやってもあまり腰痛の改善は期待されません。腰痛のアプローチ、つまりは「機能分離」を目的とした場合、プランクは誰にでも有効というものではないのです。

猪野さんはイヴァン・バッソ?

中野:では、猪野さんがどちらのタイプなのかを診ますので、ライディングホームを見せてください。まずは下ハンドルをもったディープフォームからお願いします。

次に乗車フォームをチェック。中野さんは猪野さんの大きく屈曲している胸椎に注目 Photo: Shusaku MATSUO

 けっこう前傾姿勢行かなそうですね。骨盤の前傾があまり出てこない。胸椎は屈曲していますが、骨盤の前傾や腰椎屈曲が少なく、胸椎だけで屈曲している状態。その結果胸郭が締まり、いわゆる猫背のような姿勢になり、各関節の機能や快適性などを犠牲にしています。

 立った状態で胸椎を伸展するのが基本形であるように、胸椎は自由に動くモビリティ関節です。猪野さんの場合は胸椎に頼って前傾姿勢をとっているため、自由度を失っています。とくに始めたばかりの人だと肩が凝ったり、背中が張るなどの症状が出る姿勢です。その原因は股関節の硬さにあると思われますが、胸椎に頼らずに前傾姿勢をとれるかが一つの改善ポイントになりそうです。

猪野:やっぱり硬いですか…?

中野:基本的に硬い人がとるフォームです。いわゆる腰椎の安定が出ていない。ここの安定が出ないと股関節の出力というよりは膝、大腿四頭筋の出力の方が強くなる。末端を使ってペダリングをするという傾向の人が多いです。このスタイルが悪いというわけではなく、この手のタイプはプロ選手にも大勢います。ただ、こういう人は筋膜性腰痛になったりとか、お尻が痛いと訴える人が僕の経験上とても多い。必要なケアのタイプは「ほぐし系」といえます。

猪野さんの現状のフォーム。股関節があまり前傾しておらず、胸椎で前傾姿勢をとろうとしているため、本来スタビリティ関節である腰椎に負担がかっている(モデル・Cyclist編集部) Photo: Kyoko GOTO
理想のフォーム。骨盤前傾と腰椎屈曲の2つのバランスによってバランス良く上体が前傾。腰椎のスタビリティ機能と、股関節・胸椎のモビリティ機能が分離・連携している(モデル・Cyclist編集部) Photo: Kyoko GOTO

中野:では、巡航フォームをとってください。「胸椎伸展」という理想的なフォームを作るには、頚椎~胸椎~腰椎~骨盤までの脊柱を一本にするイメージを描きます。肩は重力に対してストンと落ちている。前傾姿勢でそれは難しいんですが、イメージするだけで少なくとも肩が挙上しないようになります。

肩と肩の間に身体を入れるイメージ。その際、耳の後ろにある「乳用突起」(上の矢印)と鎖骨の延長線上にある「肩峰」(下の矢印)の距離を開けることを意識する Photo: Kyoko GOTO

 そして鎖骨と鎖骨の間にある「胸骨」といわれる部分を少し前へ出し、肩と肩との間に身体を入れる体勢をイメージしてください。耳の後ろに「乳用突起」という部分があるんですが、そこと肩の「肩峰」の距離を離す。軽く二重あごを作るイメージであごを引き、上目遣いで前方を見ます。その状態からリラックス。これらをイメージをする程度で十分です。理想形としては、ヴィンチェンツォ・ニバリが好例です。

中野さんが「理想のライディングフォーム」と評するビンチェンツォ・ニバリ Photo : Yuzuru SUNADA
かたや「悪い例」というイヴァン・バッソ。ニバリと比べると骨盤が前傾しておらず、胸椎が伸展していないのがわかる Photo : Yuzuru SUNADA

 一方で、悪い例でよくイヴァン・バッソを挙げるんですけど、猪野さん、ちょっと似てるかもしれない(笑)。彼は機能分離が全くできてなくて、常に坐骨神経痛と腰痛症と、あと飛行機に乗ったあとはしばらくお尻の痛みに悩まされていました。ジャパンカップで来日したときも3日間くらい痛がってましたね。

「イヴァン・バッソと似ている」といわれて嬉しいような複雑な表情を浮かべる猪野さん Photo: Shusaku MATSUO

 彼は上り坂で一定走行なら強いけれど、アタック合戦になったら反応が鈍く、スプリントも弱い選手でした。骨盤前傾しないタイプは巡航速度は問題ないが、スピード変化に弱いんです。でもバッソはFTPや心肺機能はとても優れていたので、そこが救いでしたね。

猪野:う…うれしいような、なんだか複雑な気持ちです(笑)

機能分離は不十分だが、それを腕の筋力で補えているというペテル・サガン Photo : Yuzuru SUNADA

中野:機能分離に問題があるという点では、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。彼は「機能分離」という点では課題はありますが、筋肉量と柔軟性において補っています。MTBで培ったセンスや体の柔らかさもある。なので人によって補い方があればそれでも良いと思いますが、そのスタイルで痛みが出始めたとなると、正しい機能分離に修正する必要があると思います。

腰痛改善のポイントはハムストにあり

中野:次に股関節の柔軟性を診ます。柔軟性がある方は、膝が胸にペタッとくっつきますが、たいていはお尻の筋肉が硬すぎるか、前側に“つまり”を感じて可動域が狭くなります。猪野さんの場合は、わりと前方にはいきますね。ただ、深く曲げると反対側の脚が追随して浮くのを見ると、腸腰筋の硬さもあるように思います。左右の分離ができておらず、左右バランスが均等ではない可能性があります。

股関節は思った以上に柔らかい。が、片方上げているときに逆の脚が浮いてしまう Photo: Shusaku MATSUO

猪野:そうなんです。ペダリングも左右差が大きくて。(ペダリング効率の)数値は、右が53%、左47%です。

中野:それで痛くなるのが左ということは、圧倒的に左の股関節が使えていない可能性がありますね。では、脚を伸ばして上げてみましょう。おっ、ハムストリング(太腿の後ろ側の筋肉)が硬いですね。改善点はこの辺にありそうです。

「左大殿筋が痛いところもバッソと同じ。左側の臀部につながるハムストリングに原因がありそうですね」と中野さん Photo: Shusaku MATSUO

 ハムストリングが硬いと、深い前傾姿勢をとるために曲げるのは胸椎や腰椎になります。すると腰の筋肉が引き伸ばされてしまい、その状態のまま大きな出力をかけようとすると、伸張された状態でさらに安定させなければならないという筋的ストレスが高まります。その結果、筋膜性腰痛になりやすくなる、という構造的な問題が生じます。

 猪野さんの場合は、このハムストリングの硬さを取り除くことが腰痛再発を防ぐ1つの方法だと思われます。先天的な要素も大きい部分ですが、長期的な自己メンテナンスで改善は可能です。

 おすすめの方法は「ジャックナイフストレッチ」という柔軟体操です。自分の身体の硬さに応じてつま先(または足首)をつかみ、しゃがんだ状態から、胸と太ももをくっつけた状態で大腿部の後ろを意識しながら徐々に伸ばし、30秒キープします。前屈が改善されると、自転車で前傾姿勢をとったときにすごく楽になるはずです。

ハムストリングをピンポイントで伸ばす「ジャックナイフストレッチ」。踵をしっかりつけ、しゃがんだ姿勢で足首を持ち、胸と太ももを着ける。胸と太ももが離れないようにゆっくりとお尻を上げ、限界まで上げたら30秒間体勢をキープ。これを数回繰り返す Photo: Kyoko GOTO

 強張った筋肉をほぐすには、ハムストリングにソフトボールを当て、グリグリとボールをローリングする方法も有効です。ただ、これは飽くまで発症予防。痛くなってからではあまり効果はありません。

「これは効きますね~!」と猪野さん Photo: Shusaku MATSUO
再発予防のためにトレーニング後はボールを使ってコリやすい部位をほぐそう。中野さんいわく、セルフメンテナンスにはソフトボールの3号サイズの圧力がおすすめ Photo: Shusaku MATSUO

「ベースの体があってこそのトレーニング」

猪野:パフォーマンスを上げるには、いわゆる強くなるためのトレーニングだけでなく、そもそも自分の体をどう使えているのかを知ることも大事だということがよくわかりました。日々のトレーニングを継続するためにも、故障で中断されないベースづくりをしないとですね。

中野:トレーニングも重要ですが、腰痛症を抱えてしまったからには、それが出ないように身体に無理のない強度で地道に練習を重ねていくということと、ウィークポイントを改善する(猪野さんでいえば柔軟性を高める)。そしてしっかり栄養と休息を摂ることの繰り返しで体を作っていくしかありません。そのためには、その人に合ったトレーニング量や方法を一度ちゃんと考える必要があります。

「筋肉を痛めるだけがトレーニングじゃない」と中野さん Photo: Shusaku MATSUO

 また、仕事を通して多くのアマチュアサイクリストを診ていますが、トレーニング量が多過ぎる人が多い気がします。もちろんトレーニングは積み重ねが絶対ですが、硬さが残った状態でまた次のトレーニングを積み重ねると体を痛めかねません。猪野さんもそうですが、プロのようにトレーニングに生活の多くの時間を割けるわけではないので、限られた時間で頑張ろうとする気持ちもわかるのですが。

猪野:そうなんですよね。つい焦っちゃって…。

中野:休息を含めて「体づくり」と心得ましょう。体づくりの“質”を上げるには、しかるべき栄養素を摂ることが重要です。プロ選手と違って、一般のサイクリストは食事で必要十分な栄養素を摂取できるわけではないので、出来る範囲で日々のメンテナンスの質を上げるには、プロテインやアミノ酸のサプリメントを活用するのも1つの方法だと思います。

「アミノバイタル アミノプロテイン」。体内で作ることができない9種類の必須アミノ酸3300mgが含まれているスティックタイプの本格プロテイン。シェイカー不要でいつでも摂ることができ、1本あたりのカロリーも17kcalと低いので、普段の食事と併せても使いやすい。画像手前から、カシス味、レモン味、バニラ味、チョコレート味。写真の製品は各30本入り Photo: Kenta SAWANO

 僕も強めのパフォーマンスで体を追い込んだときにはリカバー目的で「アミノバイタルGOLD」を使いますが、この「アミノバイタル アミノプロテイン」は日々不足しがちなタンパク質を補うのに適していると思います。食事にも干渉しませんし、携行性が良くて手軽に飲めるのもサイクリストには嬉しいポイントですね。

猪野:「急がば回れ」じゃないですけど、自分の体の使い方を知り、ケガをしない体を作った上で、持続可能なトレーニングを積み重ねることが強くなるための最短コースなのかもしれませんね。目標の‟乗鞍”(マウンテンサイクリングin乗鞍)まであと3カ月。このまま再発せずに臨めたら良いんですけど…

中野:時間はかかりますが、体の使い方は変えることができます。トレーニングと並行して体を上手に使えるようになりましょう。

携帯にも便利なスティックタイプで場所を選ばず簡単に摂れる「アミノバイタル アミノプロテイン」。「水なしで手軽に摂れるので、普段づかいに良いですね」と中野さん Photo: Shusaku MATSUO

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