案外深いディスクロードの世界<3>ディスクロードのフレームとフォークは何が違うのか

by 安井行生 / Yukio YASUI
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 ディスクブレーキを装備したディスクロードのメリット・デメリット、現状と今後の展望を書き、疑問やモヤモヤを吹き飛ばす連載。第3回は、リムブレーキとディスクブレーキでフレームとフォークの性能がどう変わるのかについて書いてみます。

ジャイアントのエアロディスクロード「PROPEL ADVANCED DISC ONE」 Photo: Masahiro OSAWA

ディスクブレーキ化で変わる乗り味

 ロードバイクのディスクブレーキ化とは、ブレーキの位置が変わるだけ、ではありません。ディスクブレーキのほうが重くなるのは前回お伝えした通りですが、厳密に言えば乗り味も変わるんです。

 まず、なぜディスクブレーキ化すると重くなるのかについて。大きな制動力を発生させる必要があるフロントブレーキで説明しましょう。

 フォークのクラウン部は、走行中に大きなストレスがかかるところなので、高い強度・剛性が必要とされます。そこにブレーキが付こうが付くまいが、ガッチリと作らねばなりません。

フォーククラウン周辺は負荷のかかる場所であり、リムブレーキ、ディスクブレーキともに高強度、高剛性の造りに Photo: Masahiro OSAWA

 一方、リムブレーキ・ディスクブレーキにかかわらず、ブレーキキャリパーの付け根も強化しなければならない場所です。例えば時速40kmまで加速しようとすると、フルパワーでもかなりの時間がかかります。しかし、40kmから停止するのは一瞬です。ブレーキキャリパーの付け根にどれだけ大きな負荷がかかるか分かるでしょう。

 フォーククラウンにブレーキキャリパーが付くリムブレーキならば、「走行性能のために強化しなければならない場所」と、「制動性能のために強化しなければならない場所」が完全に一致します。しかし、ディスクブレーキは、フォーククラウンとディスク台座(フロントフォーク末端)を別々に強化しなければなりません。だからそれだけ重くなるんです。「リムブレーキ車は構造として無駄がない」とも言えますね。

ディスクロードのフォーククラウン部分も高強度・高剛性 Photo: Masahiro OSAWA
ディスクブレーキのフロントフォークはリムブレーキモデルよりも剛性が高く乗り味に影響を与えやすい Photo: Masahiro OSAWA

 対して、ディスクブレーキはフォーククラウン部にブレーキキャリパーを設置する必要がなくなるため、タイヤのクリアランス設定やフォーク形状などの設計自由度が上がるというメリットがあります。エアロロードやグラベルロードにとってこれは大きな利点です。

フォーククラウン周辺やシートステー周辺がすっきりしており空力にはプラス。エアロロードへのディスクブレーキの採用は大きな意味を持つ(写真はREACTOKなのか 限定モデル) Photo: Masahiro OSAWA

変わる乗り味

 次はフレームの走行性能について。結論から言うと、ディスクロードはリムブレーキに比べて快適性が低下しやすく、ロードバイクらしいしなやかさが失われる傾向にあります。

 理由は簡単。そもそもロードバイクとは、フレーム末端(フォーク、チェーンステー、シートステー)をしならせることを前提とした乗り物です。しならせようとしているからこそ、フォークは先細りになっており、緩やかにベンドしているんです。

昔ながらのロードバイクはフロントフォークが先端に向かうにしたがい緩やかにベンドしている。写真はフェリーチェ・ジモンディが1973年の世界選手権で勝利をもぎ取ったビアンキのバイク Photo: Shusaku MATSUO

 しかし、ディスクブレーキはフォーク先端とチェーンステー末端にゴツいブレーキキャリパー台座とキャリパー本体が付きます。しかも、先述の通り、制動時には大きな負荷がかかるので、チューブ自体も強化しなければなりません(チューブ径を上げるとかカーボンの積層を増やすとか)。

 結果として、本来「しなるべき場所」の剛性が意図せず上がってしまう。これが、しなやかさや快適性が低下する原因です。

ブレーキ台座の取り付けられたディスクブレーキのフロントフォーク Photo: Masahiro OSAWA
フロントフォークは高強度・高剛性の造りに Photo: Masahiro OSAWA
後輪部分のブレーキ台座 Photo: Masahiro OSAWA
後輪ブレーキ台座別角度から Photo: Masahiro OSAWA

 これは僕の邪推などではありません。いろいろなメーカーのエンジニアに聞いてみたんですが、おしなべて「ディスクロードは快適性を確保するのが難しい」「エンド部の剛性が勝手に上がってしまう」「先端で振動を吸収できなくなるのでイチから設計やり直しだ」と苦労しているようでした。

 よく、「クルマやオートバイやマウンテンバイクはみんなディスクブレーキじゃないか。だからロードバイクだってディスクブレーキになるのが当然なんだ」というロジックで話をする人がいますが、クルマやオートバイやマウンテンバイクは、ロードバイクのようにフレーム末端をしならせることを前提としていません。

大きく改善した乗り味

 実際、数年前のディスクロードは正直言って乗り味がダメダメでした。快適性が低く、フレーム末端が生硬く、走り味はギクシャクしており、リムブレーキロード特有の上質なしなやかさは雲散霧消していました。全然気持ちよくなかった。ハンドリング特性が左右で明らかに違うモデルもありました。「ただよく止まるだけ」で完成度は低い。そういう感じです。

 しかし、ここにきてディスクロードの進化が著しいと感じます。例えばメリダのスクルトゥーラ。もちろんディスクブレーキとリムブレーキではホイールが変わるので、フレーム単体での正確な比較はできませんが、同じ銘柄のホイール(ボーラとボーラディスク)で乗り比べたら、差がかなり小さかったので驚きました。ボンヤリ乗っていたら違いが分からないほど。

メリダの「SCULTURA DISC」 Photo: Kenta SAWANO

 ディスク専用車として開発されたスペシャライズド・ヴェンジは、ディスクブレーキとは思えないほど剛性感が煮詰められており、ディスクブレーキ化によるデメリットがほぼ感じられません。BMC・SLR01ディスクにいたっては、ディスクブレーキ化によるエンド部強化を、加速力強化というメリットとして生かせているという印象すら受けます。

 乗り味に関しては、総じてリムブレーキ車のほうが完成度がまだ高いと感じますが、その差は急速に縮まりつつあります。個人的には、これからもっと優れた構造が出てくるのではないかと思っています。例えば、チェーンステーとブレーキ台座を完全に切り離したようなフレーム設計とか。非常に楽しみです。

 次回はディスクブレーキ用のホイールについて解説します。

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