案外深いディスクブレーキの世界<2>ディスクロードはなぜ制動力が高いのか? リムブレーキモデルのパーツは使いまわせるか?

by 安井行生 / Yukio YASUI
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 第2回は、リムブレーキとディスクブレーキのメリット・デメリットについてお話しましょう。まずは肝心の制動性能から。よく「ディスクブレーキにすると制動力がアップする」という記述を見かけますが、厳密に言えば間違いです。基本的に、リムブレーキもディスクブレーキも制動力は同じです。なぜなら、現在のロードバイクにおいて、制動力の上限はブレーキシステムによって左右されるものではなく、タイヤと路面状況によって決定されるものだからです。

グエルチョッティのディスクエアロロード「エウレカ エアー ディスク」 Photo: Shusaku MATSUO

原理的にはリムブレーキのほうが制動力は高い?

 リムブレーキでも、ブレーキレバーを思いっきり握れば簡単にタイヤがロックします。フルパワーでフロントブレーキをかければ前転することだって容易です。リムブレーキでも、タイヤのグリップの上限まで制動力を引き出せているんです。

ディスクブレーキはホイール中心部のディスクローターを挟み込んで減速。リムブレーキはホイール外周部のリムを挟んで減速 Photo: Shusaku MATSUO

 ロードバイクの制動力を上げるには、タイヤと路面間の摩擦係数を上げるほかありません(タイヤを太くするとか、より高性能なタイヤにするとか、いい路面を選んで走るとか)。

 むしろ、原理的には、ホイールの外周部をつかんで止めるリムブレーキのほうが制動力が高くなるはずなんです。回転するものを止めるには、できるだけ外側をつかんだほうが効率がいいですから。

 DJになって高速回転するレコードの前に立っていると想像してください。「指でこのレコードをすぐ止めて!」と言われたら、おそらく誰もがレコードの外側を押さえて止めようとするはずです。真ん中らへんを押さえる人はいませんね。それと同じ理屈です。

ディスクブレーキの制動システムにはオイルが使われる

 しかし、第1回でも説明したとおり、油圧ディスクブレーキという制動システムは、作動に液体を使います。液体には金属ケーブルのような摺動抵抗がないため、レバーの引きが軽くなります。また、液体は圧縮してもほとんど縮まないため、金属ケーブルのような伸びが発生せず、ブレーキレバーを握る力がロスなくパッドに伝わります。

油圧式ディスクブレーキにはこのようオイルが使われています Photo: Masahiro OSAWA

 さらに、油圧の原理をうまく使うことでレバーを引いた力が増強されてパッドに伝わるので、強い力でローターを挟むことができます。ローターとパッドの素材も制動に特化したものが使えます(リムブレーキのリム素材は重量増を避けるためアルミもしくはカーボンに限定される)。

 だから油圧ディスクブレーキは「少ない力でより大きな制動力を発生させることができる(=同じ制動力ならレバーの引きが軽くなる)」と言えます。握力が小さく、リムブレーキではタイヤのグリップ限界まで引き出すことができていなかった人にとっては、「油圧ディスクブレーキにすると制動力が上がる」ことになりますね。

雨の日の走行では、リムブレーキでの制動力は大きく落ちてしまいます Photo: Masahiro OSAWA

 しかも、リムブレーキは雨天時やダート走行でリム面が汚れると、制動力が一気に低下します。これはリムブレーキ最大の欠点です。冷静に考えれば、乗り物の三大性能(走る、曲がる、止まる)の中でも最も重要な性能が雨になったとたん著しく悪化するなんて、乗り物として失格。そういう意味では、リムブレーキを搭載した自転車は「不完全な乗り物」なんです。プロ選手やベテラン自転車乗りは、それを経験とテクニックでなんとかかんとか使いこなし、「ロードのブレーキはそんなもんだろ」でやってきたわけです。

メリット・デメリットをまとめると…

 リムブレーキは「基本構造は非常に優秀だが制動システムが不完全」、ディスクブレーキは「基本構造では不利だがシステムが超優秀」と言えるでしょう。

 だから、「制動力が上がる」のではなく、「握力が小さいライダーが使うことや雨天・ダート走行を考えると、総合的な制動性能は向上する」というのが正解です。これは油圧ディスクブレーキ限定の話で、機械式ディスクブレーキなら「レバーの引きが軽くなる」というメリットは失われますが。

 ディスクロードの欠点の一つが、リムブレーキモデルに比べて重くなること。現状では、コンポで数百g、ホイールで数十~数百g、フレームで数十~数百g、トータル(完成車)で1kg前後の重量増となります。ほかに、空力面で不利なこと、メンテナンスの難易度が上がることなどもデメリットですね。

油圧式ディスクブレーキのオイルメンテナンスの様子。オイルに入った気泡を抜くなど作業が必要になります Photo: Masahiro OSAWA

リムブレーキの部品は使いまわせるのか

 ユーザーとして無視できないのは、従来のパーツとの互換性。結果から言うと、リムブレーキ用のパーツを使い回すことはほとんどできません。ブレーキ関係のパーツ(ブレーキレバー、ブレーキキャリパー)はもちろんですが、フレームやホイールもディスクブレーキ専用のものが必要になります。ディスクブレーキとリムブレーキの両方に対応したフレームもありますが、かなり少数です。

ディスクブレーキタイプのフロントフォークの先端にはスルーアクスルを差し込む穴が空いているので、リムブレーキタイプのフレームを使うことはできません Photo: Masahiro OSAWA
シフトレバーはオイルタンクにもなっています Photo: Masahiro OSAWA

 使いまわせるのは、ハンドル周り、サドル周り、クランク、ディレーラーくらい(機械式ディスクブレーキなら、ブレーキレバーはリムブレーキ用のものが使えますが)。しかも、ディスクブレーキのパーツはリムブレーキのそれに比べて高価なことが多いので、乗り換えるにはかなりの出費が必要になります。僕もそれが原因でいまだにディスクロードを買えてません。そろそろ欲しいと思ってるんですが…。

 ディスクブレーキ化に関するフレームとホイールのメリット・デメリットは、次回以降で詳しく解説します。

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