「ホビーレーサーが選ばない理由はゼロ」勝てるロードバイクはエアロとディスクブレーキが標準に 制動力以外のメリットとは

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 ディスクロードバイクが勝利を量産している。1月に幕を開けたUCI(国際自転車競技連合)ワールドツアーは、3月23日に開催されたミラノ~サンレモまでにディスクブレーキを搭載したロードバイクでの優勝回数は14回に上り、プロレースでの優位性を証明。レースの結果に直結するディスクブレーキの真の性能に迫った。

UCIワールドツアーのプロトンで、存在感を増すディスクブレーキ Photo: Yuzuru SUNADA

ロードバイクの可能性が拡張

 ロードバイクが誕生して100年余りの歴史の中で、レース機材は目まぐるしい進化を遂げてきた。新素材の採用や、変速機の精度向上で、工業製品としての性能を高めてきたのである。そんななか、制動を司るブレーキシステムは、ホイールのリムをシューで挟むという機構を長らく貫いてきた経緯がある。しかし、2018年のツール・ド・フランスからUCIレースで本格的にディスクブレーキが解禁されたことで、ロードバイクの可能性が一気に広がった。

プロ選手の活躍を支えるシマノ「R9170デュラエース」 ©SHIMANO

 ディスクブレーキは文字通り、ホイールのハブ部に装着された円盤状のディスクローターを、キャリパー内のパッドで挟むことで制動力を発揮する。プロのレースで使用される機材では、主に油圧システムが採用されており、ホース内に満たされたオイルの圧でキャリパー内のピストンを押し出すことで制動力をコントロールしている。

昨年のツール・ド・フランスからUCIレースで全面的にディスクブレーキが解禁 Photo: Shusaku MATSUO

 ディスクブレーキのメリットの一つに安定した制動力が挙げられる。雨や泥などの悪天候に左右されない構造で、ライダーが求めるブレーキングをシチュエーションを選ばずに実現。また、従来のリムブレーキではワイヤーの摩擦でレバーのタッチが変化する恐れがあるが、油圧タイプのディスクブレーキは常に安定した“引き”の軽さが特徴で、ロングライドにおいて乗り手の負担を軽減する。

 違いはこれだけにとどまらない。大きな制動力を生むディスクブレーキに対応するため、多くのロードバイクにはスルーアクスルが採用されている。スルーアクスルは従来のクイックリリースに代わり、ホイールをフレームに固定する部品だ。太さ12mm前後のシャフト(軸)がハブを貫き、フレームへがっちりと繋がることで、足周りの強度と安定性を飛躍的に向上させた。

未舗装路を走るストラーデ・ビアンケでも繊細なコントロールで勝利に貢献 Photo: Yuzuru SUNADA
今季UCIワールドツアー開幕初戦からディスクブレーキを採用したエアロードで勝利を挙げたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) Photo: Yuzuru SUNADA

 速さへダイレクトに繋がるこれらのメリットを生かすべく、各ロードバイクブランドはディスクブレーキを搭載したロードバイク開発に積極的に取り組んでいる。UCIワールドチームでは今年、ディスクブレーキ仕様のロードバイクを多く投入。なかでも、シマノ「R9100系デュラエース」のディスクブレーキを搭載したバイクを駆るチームが突出して多く、全18チーム中8チームが採用している。

自由なフレーム設計でよりエアロに

 今季、開幕戦となったツアー・ダウンアンダーの第1ステージでエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)がスプリントで快勝。これを皮切りに、ディスクロードバイクは、3月23日のミラノ~サンレモまでの全32レース中(タイムトライアルレースを含む)14勝という勝利を飾っている。うち、13勝がシマノ製のディスクブレーキだ。

TTバイクにもディスクブレーキが波及 Photo: Yuzuru SUNADA

 勝利を挙げたロードバイクに共通しているのは、空気抵抗の軽減を意識した形状を持つ「エアロロードバイク」という点に尽きる。巡航でも時速50km、スプリントでは時速70kmにも達するプロのレースにおいて、選手とバイクは空気の壁にぶつかる。これを切り開くのがエアロロードバイクで、形状の多くは前面投影面積を削り、整流効果をより向上させるものとなっている。

ティレーノ・アドリアティコ第6ステージ、横一線に並ぶ選手の半数がシマノのディスクブレーキを搭載したエアロロードバイクを駆っていた Photo: Yuzuru SUNADA

 従来のリムブレーキであれば、キャリパーやアウターワイヤーが空気を乱していたが、ディスクブレーキにすることでこれを解決。さらに、キャリパーの取り付けが不要になったフレームは、より自由な設計が可能となり、さらにエアロ効果を高めたフレーム形状を実現するに至っている。エアロ効果を求め、ホースをフレーム内部へと収める製品が多く見られるが、油圧システムはホースを複雑に取り回してもレバータッチの悪化を防ぎ、安定したブレーキフィーリングを提供してくれる。

 ディスクブレーキ化の流れはロードバイクに留まらず、タイムトライアル(TT)にも波及している。チーム サンウェブではTTバイク全てにディスクブレーキを採用。深い前傾姿勢と高い平均出力で限界まで追い込むTT競技では、高い集中力を保つため繊細なコントロール性能が求められる。優れたエアロ効果と、車体の取り回しにはディスクブレーキが必須となった結果だろう。

UCIワールドツアーの先頭には、常にディスクブレーキ搭載のロードバイクを愛用している選手の姿があった Photo: Yuzuru SUNADA

ホビーレーサーにこそ有用

 ディスクブレーキの恩恵を受けているのはプロ選手だけではない。国内最長の距離を誇り“ホビーレーサーの甲子園”と称される「ツール・ド・おきなわ市民210km」を、エアロロードバイクとディスクブレーキの組み合わせで制した紺野元汰さんは「ホビーレーサーがディスクブレーキを選ばない理由はゼロです」と断言する。レーサーとしても、プロショップ「スペシャライズドコンセプトストアSBC厚木店」のスタッフとしてもディスクブレーキを推す紺野さんに、そのメリットを聞いた。

“ホビーレーサーの甲子園”と称される「ツール・ド・おきなわ市民210km」を制した紺野元汰さん Photo: Shusaku MATSUO

――まずはブレーキのフィーリングについて教えてください

「ホビーレーサーが選ばない理由はゼロ」と断言した紺野さん Photo: Shusaku MATSUO

紺野:エアロロードバイクは一般的にワイヤーの取り回しが複雑で、ブレーキフィーリングが悪化してしまいます。しかし、油圧ディスクブレーキならレバータッチが重くなることはありません。速さを求めるフレームにディスクブレーキは必須といえるでしょう。

 また、以前までのエアロロードバイクだとフレームごとに特殊なブレーキを用いる例がみられました。今ではディスクブレーキ化したことで規格が統一されましたね。特にシマノの純正パーツは汎用品として手に入りやすく、僕のようなショップスタッフにとっても、お客様にとってもメリットしかありません。

ブレーキのコントロール性、スルーアクスルの安定感など、メリットしかないと話した紺野元汰さん Photo: Shusaku MATSUO

 シマノのロードバイク用ディスクブレーキは、ガツンと利くわけではなく、コントロール性に優れています。もちろん、高い制動力を併せ持ちつつ、乗り手の意図を反映させやすい設計です。雨でローターが濡れていても、レバーを握った瞬間から利く安心感も魅力の一つです。

「スルーアクスルがあるからこそ選んでいる」とディスク化の恩恵を説明した Photo: Shusaku MATSUO
油圧システムを備えたレバーも「持ち手の太さはほとんど機械式と変わりません」と述べる紺野元汰さん Photo: Shusaku MATSUO

 油圧で軽いレバータッチは長いレースでも効果を発揮しました。5時間を超えるレースでは疲労が集中力を切らす原因となりますが、明らかに腕の疲れが減りましたね。

――重量面はどうでしょうか

 僕のバイク重量はパワーメーター込みでも7.2kgです。全く重さは気になりません。確かにキャリパー(リムブレーキ)と比べると重いですが、重心が下がったことで振りも軽く、アタックやスプリントでもキレが増しました。

――スルーアクスルは走りに生きていますか

「間違いなく速さに直結します」と説明した紺野さん Photo: Shusaku MATSUO

 スルーアクスルがあるからこそディスクブレーキロードを選んでいると言っても過言ではありません。シャフト径が太くなったことで、安定性は抜群に向上しています。コーナーでも押さえつける必要もなく、思い描いたラインをスムーズに走れます。スルーの方がクイックと比べて惰性が効き、よくタイヤが転がる印象もあります。

◇         ◇

 最後に、紺野さんは「スピードを求めるエアロロードバイクにディスクブレーキは標準な装備です。ディスクブレーキは速さに間違いなく直結します」と言い切り、インタビューを締めくくった。ロードバイクの可能性を広げ、飛躍的に性能を向上させたディスクブレーキ。今後もプロのレースでは過酷なクラシックレースや、グランツールで活躍する機会を目にしていくだろう。勝てるロードバイクを望むのであれば必須のアイテムなのは間違いない。今後の進化からも目が離せない存在だ。

(提供:シマノセールス)

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