大型温泉施設「守山湯元 水春」もオープン“ビワイチ”から進化続ける滋賀・守山発着サイクリング レンタサイクルにe-BIKEも

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 日本一の湖・琵琶湖を自転車で一周する「ビワイチ」がサイクリストを惹き付ける滋賀県。なかでも現在サイクリング振興にひときわ力を入れているのが守山市だ。琵琶湖沿岸各地へのアクセスに優れた守山市が、ビワイチの“発着点”をアピールする自転車施策をスタートさせて3年あまり。今年、注目のe-BIKE(電動アシストスポーツ自転車)がレンタサイクルに登場するなど、日々進化する守山発着のサイクリング環境を、現地で改めて体験した。

びわ湖バレイから、琵琶湖を見下ろす眺めを堪能 Photo: Ikki YONEYAMA

「自転車特命大使」三船雅彦さんとライドへ

 守山市は滋賀県の南西部に位置し、琵琶湖南側で東岸に面している。市のビワイチ拠点となっているのは、湖の東西を結ぶ琵琶湖大橋の東の袂付近。3000台の無料駐車場を持つ巨大ショッピングモール「ピエリ守山」や、サイクリスト向け宿泊プランを用意する「琵琶湖マリオットホテル」がこのエリアに点在し、また同ホテルの敷地内にはレンタルも扱うスポーツ自転車専門店「ジャイアントストアびわ湖守山」が店を構えている。

琵琶湖マリオットホテルの敷地内にある「ジャイアントストアびわ湖守山」 Photo: Ikki YONEYAMA
ジャイアントストアのレンタサイクルに、最新のe-BIKEが仲間入り Photo: Ikki YONEYAMA

 ジャイアントストアびわ湖守山のレンタサイクルには、走りが軽快なジャイアント製のスポーツバイクを各種用意。ロードバイク、クロスバイク、キッズバイクに加え、今年3月から最新のe-BIKEが3台、レンタルに仲間入りした。大容量バッテリーを搭載し、エコモードで最大約140km、アシストが強力なスポーツモードでも最大約100kmの走行が可能。体力に自信のない人でも選べるサイクリングコースの幅が広がった。

ビワイチの爽快さを感じさせる「琵琶湖サイクリストの聖地碑」 Photo: Ikki YONEYAMA

 琵琶湖マリオットホテルは、2017年に全面改装されてリニューアルオープンしたばかり。JR湖西線の堅田駅から毎時1往復の無料シャトルバスが運行するほか、JR琵琶湖線(東海道本線)の守山駅からも1日5往復(要予約)の送迎バスが走るなど、アクセスも良好だ。ホテルのそばの湖畔には、ビワイチを記念した「琵琶湖サイクリストの聖地碑」もある。

 守山市ではサイクリングルートやお勧め観光スポットを紹介した「ビワイチ推奨コースマップ」を2017年に刊行。コンパクトに畳めて防水紙を使ったサイクリスト目線の仕様が話題となった。コース監修に携わり、市の「自転車特命大使」も務めるプロサイクリストの三船雅彦さんと共に、レンタサイクルのe-BIKEに跨がって半日サイクリングへと出発した。

琵琶湖大橋の頂上部は絶景ポイント。景色を解説する遠景図は、実は守山市職員の方が描いたもの Photo: Ikki YONEYAMA

元プロ選手があえぐ坂も楽々

 今回走ったのは、比良山地が湖岸に迫る湖西エリア。全長約1.4kmの琵琶湖大橋が湖の東西を結んでいるおかげで、守山市からは琵琶湖の完全な一周(約190km)だけでなく、大橋から北側の北湖一周(約160km)や、南側の南湖一周(約40km)など自由にコースが取れるほか、湖の東側・西側のポイントへの直接アクセスも容易だ。

琵琶湖の水面をバックに、びわ湖バレイへの急勾配を上る。e-BIKEなら10%超の坂も楽々 Photo: Ikki YONEYAMA
秋田で作り方と焼き方を勉強してきたという、本格きりたんぽが味わえる Photo: Ikki YONEYAMA

 e-BIKEであれば上り坂も楽々。そのパワーを手近に体感できる場所として、びわ湖バレイに向かう坂へと案内された。ロープウェイ乗り場への上り坂は、斜度10%超の急勾配が数百m連続する区間もあるが、e-BIKEを使えば元プロレーサーの三船さんにも負けないスピードで駆け上がれる。これなら上級者向けの、上りが多いコースでも楽々こなせるだろう。標高約300mの山麓駅から見下ろす景色は、山頂の絶景とまではいかないが、こちらもなかなかの眺め。この場所で商売をして30余年というお姉さんが焼く本格きりたんぽをほおばり、再び湖畔へと下った。

 今回の折り返し地点は、JR湖西線の志賀駅。駅が目標というわけではなく、お目当ては駅前に構える薪窯焼きパンの店「るぅた」。素材にこだわり、安心して食べられる手作りパンを提供している人気店だ。もちもち食パンが最後の一斤であったので、迷わず持ち帰りに購入。小麦の風味を楽しめるボリューミーな食パンだった。

JR志賀駅前にある薪窯焼きパンの店「るぅた」 Photo: Ikki YONEYAMA
すぐに売り切れてしまうという、もちもち食パン Photo: Ikki YONEYAMA

 湖畔の水辺沿いを南下すると、サイクリストの集団にも遭遇した。装備の様子からして、ビワイチに挑戦しているグループのよう。平日の取材にもかかわらず、サイクリストを何度も見かけ、ビワイチが定番コースとして認知されていることが感じられた。

湖水に手が届きそうな道を走る。こんなところにも、自転車のルートを示す矢羽根 Photo: Ikki YONEYAMA

e-BIKEで広がるサイクリングの楽しみ方

 琵琶湖大橋近くまで戻り、さらに少し南下すると、江戸時代に堅田藩の城下町だった区域が湖畔に広がっている。細く入り組んだ道に町屋が面し、寺や神社がいくつも建ち並ぶ様子は、建物は移り変わっても江戸時代の町並みを今に伝えている。湖上に突き出た満月寺の浮御堂(うきみどう)は、近江八景の一つ「堅田の落雁」にも描かれた絶景ポイントだ。

湖上に突き出た浮御堂が幻想的 Photo: Ikki YONEYAMA
堅田藩の旧城下町を行く Photo: Ikki YONEYAMA
浮御堂のある満月寺 Photo: Ikki YONEYAMA
古民家をリノベーションしたイタリアンレストラン「ペコリーノ」 Photo: Ikki YONEYAMA

 堅田藩の陣屋(藩庁)跡に建つ古民家を改装したカフェ・レストラン「ペコリーノ」は、浮御堂を眺めながらおいしい本格イタリアンを味わえるお店だ。隠れ家的な立地だがよく知られているようで、飛び込みの平日ランチは出遅れると30分以上待ちになるにぎわい。席が空くのを待つ間に浮御堂前の「魚富商店」で、琵琶湖で取れる旬の魚で作った佃煮をいただいた。運良く“琵琶湖の王様”と称されるモロコの最高ランク、本モロコに巡り合う。食べ始めるとおいしさに手が止まらない。昼食前なので最大限の自制心を発揮して、動く手を抑え込んだ。

「魚富商店」で本モロコの佃煮を味わう Photo: Ikki YONEYAMA
琵琶湖で採れた旬の幸を生かした佃煮だ Photo: Ikki YONEYAMA

 ペコリーノのランチは、ドリンク付きで前菜からパン、メイン、デザートに至るセットで、目に優しくボリュームもあり、舌とお腹にうれしいメニュー。ホッと落ち着く店内で過ごす時間は至福で、人気も頷ける。日が徐々に傾く中、再び自転車に跨がり、琵琶湖大橋を渡って出発地の琵琶湖マリオットホテルへと戻った。約35kmと走行距離はほどほどだが、ゆったり琵琶湖周辺を巡る半日サイクリングは新発見がいっぱい。走りに重点を置いても、今回のように観光に重点を置いても、どちらでも楽しめるのがビワイチの懐の深さだろう。

「ペコリーノ」でゆったりランチ Photo: Ikki YONEYAMA
ランチ一日10食限定のラザニア。セットで1730円 Photo: Ikki YONEYAMA

 e-BIKEでのサイクリングは、急な上りに限らず、信号待ちからの発進や緩い上り坂など、細かく体力を削るさまざまな場面において、その恩恵を受けることができた。コース難易度による体力消耗をほぼ考えずに済むというのは大きな変化で、全ての人がどんなコースも躊躇なく選べるようになる。景色や立ち寄りスポットの楽しさ・面白さを第一に考えてルート設定が可能になり、これまでにない厚みのあるサイクリングが気軽に楽しめるはずだ。

ピエリ守山に「守山湯元 水春」がオープン

 サイクリング後は、ピエリ守山にこの3月オープンした、天然温泉「守山湯元 水春」へ向かった。琵琶湖を一望する絶景の露天風呂で、超炭酸泉と天然温泉を楽しめるほか、岩盤浴、休憩所やカフェテリア、レストランも備え、サイクリングで汗をかいた体を、帰る前にたっぷりと癒やすことができる。

琵琶湖を眺める露天風呂は最高の気分 Photo: Ikki YONEYAMA
3月にオープンしたばかりの「守山湯元 水春」 Photo: Ikki YONEYAMA
カフェ・レストランも併設され、ゆったりと過ごせる Photo: Ikki YONEYAMA

 ジャイアントストアびわ湖守山は、3月でオープンから3周年を迎えた。レンタサイクルだけでなく、ホテルや旅行会社と共同でガイドツアー付きプランも提供。同店の佐藤聖司店長によると、レンタサイクル、ガイドツアーの利用者は年々増加しており、ビワイチが定着してきていることが感じられるという。今後レンタルを活用したガイドツアーのさらなる拡大を視野に入れ、今月にはJCGA(日本サイクリングガイド協会)の講師を招いてスタッフ向けガイド講習会を実施するなど、サービス能力の向上を図っている。

ジャイアントストアびわ湖守山店の佐藤聖司店長 Photo: Ikki YONEYAMA
JCGAのガイド講習会。スムーズで安全なガイドの手法、心構えなどを体系立てて学んだ Photo: Ikki YONEYAMA

 守山市では現職の宮本和宏市長が学生時代からのサイクリストということもあり、市長が先頭に立つ形で自転車施策が急ピッチで推進されてきた。守山市単体の取り組みだけでなく、自治体間の連携や企業との提携により、さまざまな方向からビワイチの普及浸透と、自転車新文化の広がりの相乗効果を生んでいる。

守山市の宮本和宏市長(左)は、現在もロードバイクでサイクリングを楽しむ現役のサイクリストだ Photo: Kenta SAWANO

 選手時代から幾度となくビワイチをしてきたという三船さんは、「守山市ではビワイチに特化したところだけでなく、自転車を走らせるためのスペース確保や啓蒙など、比較的バランス良く進んでいる印象」と守山市の自転車施策を評価。「今後も自転車がスポーツとして、またコミューターとしても社会的地位をさらに得られるようお手伝いしたい」と展望した。

 京阪神の大都市からも近く、ほどよく都会と自然が溶け合っている守山市。自転車を軸に観光や道路環境などを同時多発的に整備することで、さらなる自転車文化の発展が期待できそうだ。

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