ミラノ~サンレモ2019アラフィリップがモニュメント初制覇 クラシックハンター10人のスプリントを制する

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレース伝統のクラシックレース「ミラノ~サンレモ」の2019年大会がイタリア現地時間3月23日に開催され、ワンデーレース最長の291kmによって争われた戦いは、終盤の勝負どころで抜け出した10人によるスプリントを、今シーズン絶好調のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が制した。26歳のクラシックハンターにとって、歴史あるワンデーレースに位置付けられる「モニュメント」のタイトルを初めて手にすることとなった。

ミラノ〜サンレモ2019、名だたるクラシックハンターによる“ラ・プリマヴェーラ”はジュリアン・アラフィリップ(右から2人目)が制しモニュメント初優勝を果たした Photo: Yuzuru SUNADA

25チーム・175選手がミラノを出発

 ミラノ~サンレモは1907年に初開催、今年で110回目を迎えた。例年3月中旬から下旬にかけての時期に行われ、幾多のクラシックレースの中でもいち早く開催されることから、イタリア語で春を意味する「ラ・プリマヴェーラ」の愛称で知られている。

サンレモを目指し進むプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 大きな特徴は、300km近いレース距離。細かな距離変動はありながらも、おおむね290km台で設定される。レース名にある通りミラノ・スフォルツェスコ城を出発し、サンレモ・ローマ通りにフィニッシュする。今年は291kmで争われた。

 コースは終盤にアップダウンが集中する。なかでも、フィニッシュ前約25kmのチプレッサ(登坂距離5.6km、平均勾配4.1%)と、フィニッシュ前約5kmが頂上となるポッジオ(登坂距離3.7km、平均勾配3.7%)がレースのポイント。ポッジオは頂上の約1km手前が最大勾配8%となっており、ここでのアタックから数々の歴史が誕生している。

 平坦区間が多く「スプリンターズクラシック」と言われるが、ポッジオでアタックしたクラシックハンターと、フィニッシュ前でのスピードに賭けるスプリンターとの駆け引きも例年の見どころ。近年はどちらのパターンでも勝ちにいけるよう、選手をそろえて臨むチームが増えてきている。

 迎えた2019年のミラノ~サンレモは、25チーム・175選手がスタートを切った。

ポッジオまでに逃げを吸収

 アクチュアルスタート直後に決まった逃げは、30分のうちに差が大きく広がり、最大で10分にまで拡大。それを機に集団がペースメイクを始め、タイム差を調整していったが、しばらくは10人がレースを先行。逃げはいずれもワイルドカード(主催者推薦)で招待されたUCIプロコンチネンタルチーム勢で固められた。

並んでスタートセレモニーに臨むヴィンチェンツォ・ニバリ(左から2人目)とアレハンドロ・バルベルデ(右から2人目) Photo: Yuzuru SUNADA

 タイム差が縮まる以外は大きな変化なく、スタートから200kmを経過。ボーラ・ハンスグローエやUAE・チームエミレーツ、ロット・スーダルなどが代わる代わるペーシングを行い、残り80kmで逃げとのタイム差は約4分、残り60kmで約3分と、着々とその差は縮まっていった。

 残り50kmを切って大小さまざまなアップダウンが始まると、集団はさらにペースアップ。各チームが前方のポジション確保に動き出し、好位置で丘越えに挑む姿勢を見せる。

 淡々と進んでいた逃げグループも、残り40kmでついに変化が起きる。セバスティアン・シェーンベルガー(オーストリア、ネーリソットリ・セッレイタリア・KTM)がアタックすると、少し経って追い始めたファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)がそのままパス。ここからマスナダが独走を開始する。

 マスナダと集団とのタイム差が1分を切って、迎えるはこのレースの第1関門と言える「チプレッサ」。各チームがトレインを編成してのポジション争いは、さながらスプリントフィニッシュの趣きとなった。スピードの上がった集団は残り25kmでマスナダを吸収。代わって集団の前方にはフィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)といった注目選手が顔を見せ始める。一方で、有力スプリンターのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が集団後方で苦しそうな様子。

チプレッサの下りから飛び出したニッコロ・ボニファツィオ Photo: Yuzuru SUNADA

 チプレッサ頂上からの下りで、ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、ディレクトエネルジー)が飛び出し、そのまま独走態勢に入る。これを見送った集団はドゥクーニンク・クイックステップがコントロール。ペースが落ち着いたこともあり、遅れかけていたフルーネウェーヘンやナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)といったスプリンターが集団復帰を果たしている。

 最大で25秒近くのリードを得たボニファツィオだったが、残り12kmで吸収。集団がレースをふりだしに戻して、いよいよ向かうは最大の勝負どころ「ポッジオ」となった。

アラフィリップに“春”到来

 残り9kmから始まったポッジオの上り。戦前の予想通り優勝候補たちが次々と前方へとポジションを上げてきた。

ポッジオでアタックしたジュリアン・アラフィリップ。ペテル・サガンら有力選手が追随する Photo: Yuzuru SUNADA / Pool

 上り始めからゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が牽引し、勾配が厳しくなったところで満を持してアラフィリップがアタック。直前にサイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)が飛び出していたが、アラフィリップはこれをかわしてトップに立つ。さらに、次々と選手たちが続き、その勢いのままテクニカルな下りへと入っていく。

ペースアップを試みるミカル・クウィアトコウスキー Photo: Yuzuru SUNADA / Pool

 この時点でトップグループに加わったのはアラフィリップのほか、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)、ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)。

 さらに下りでトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)が追いつき、残り2.5kmではマテイ・モホリッチ(スロベニア)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のバーレーン・メリダ勢、ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、クラークも先頭に合流。

残り2kmでアタックを試みたマッテオ・トレンティン Photo: Yuzuru SUNADA / Pool

 メイン集団を完全に振り切り、優勝争いが11人になると、ナーセンがアタックするが失敗。残り2kmからはトレンティンがスピードを上げるが、これもチェックされる。残り1kmを過ぎ、2つの鋭角コーナーをクリアするとクライマックスのローマ通り。11人による駆け引きは、サガンが押し出されるように先頭に立ったところから動き出した。

 サガンがライバルたちのマークを嫌い減速したところで、モホリッチがスプリントを開始。すかさず続いたのはアラフィリップ。モホリッチをパスし先頭に立つと、フィニッシュめがけて猛然と加速。ナーセンとクウィアトコウスキーも追うが、アラフィリップのキレを上回るには至らない。サガンはスピードに乗せきれず、スプリントに伸びを欠く。

 結局、ライバルたちの追い上げをかわしたアラフィリップが初優勝を決めた。フィニッシュ直後には感情を爆発させ、喜びを表した。1分27秒遅れでやってきたアシスト陣や当初エーススプリンター予定だったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)も、チームメートの勝利を知りガッツポーズでフィニッシュへ。アラフィリップ自身はシーズン7勝目、チームとしては19勝目と、この大会でも圧倒的なチーム力と連携を見せつける結果となった。

ミラノ〜サンレモ初優勝に喜びを爆発させるジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 26歳のアラフィリップは、昨年のフレーシュ・ワロンヌや今年のストラーデビアンケを制するなど、いまをときめくクラシックハンター。だが、意外にもモニュメント制覇は初めて。最高の“春”を迎えるとともに、新たな勲章を手にすることとなった。

 アラフィリップに続いて、2位にはナーセン、3位には2年前の覇者であるクウィアトコウスキーが入線。優勝候補に挙げられていたサガンは肝心のスプリントで不発。4位に終わり、またしてもこの大会のタイトルには手が届かなかった。

ミラノ〜サンレモ2019の上位3選手。左から2位オリバー・ナーセン、1位ジュリアン・アラフィリップ、3位ミカル・ミカル・クウィアトコウスキー Photo: Yuzuru SUNADA

 サイクルロードレースシーズンは、ここから春のクラシックのビッグイベントがやってくる。舞台はベルギーへと移り、3月27日のドリダース・ブルージュ〜デパンヌからは石畳系のワンデーレース“北のクラシック”が始まる。

ミラノ〜サンレモ2019結果
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 6時間40分14秒
2 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +0秒
3 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)
4 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
5 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)
6 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
7 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)
8 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
9 サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)
10 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)

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