イギリスの複合化学メーカー、体制と予算は維持チームスカイの後継スポンサーに「イネオス社」が決定 5月1日から新チームとして活動

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 3月19日、チームスカイのオフィシャルサイトで、新スポンサーがイギリスの複合化学メーカーのイネオス社に決定したことを発表。さらに2019年5月1日から現体制を引き継いで「チームイネオス」として活動開始、5月2日のツール・ド・ヨークシャーが「チームイネオス」のお披露目レースとなることが明らかになった。

昨年末から自転車レース界を騒がせていたチームスカイのスポンサー問題が早期解決! Photo: Yuzuru SUNADA

スポンサーはイギリスの大企業に引き継がれる

 イネオス社は1998年に創業。企業買収と合併を繰り返して巨大企業に進化し、現在では幅広い製品を手がける世界10傑に入るほどの一大化学企業となった。イネオス社事業は燃料、潤滑油、包装材、食品、建設業など多岐にわたる。現在ではグループの従業員は1万8000人を抱え、22カ国に事業を展開。年間の売上高は400億ドル(約4兆5000万円)だ。

 同社CEOのジム・ラットクリフ氏は「自転車レースはとてつもない持久競技で、戦略性が高く、世界中でどんどん人気が高まっていくスポーツです。同様に自転車はフィットネスと健康に役立つ上に、環境汚染を緩和する手段になります。一般社会でもどんどん人気が高まっているスポーツです。私たちはこのようなプロチームを運営する責任を負うことを嬉しく思います。」と語っていた。

 また、チームスカイ代表を務めるデイブ・ブレイルスフォードは「今日の発表はチームにとって、ファンにとって、自転車界にとって大きなニュースです。ジム・ラットクリフ氏とイネオス社には、ビジョン、情熱、時代を切り拓く力が私たちを更なる成功に導いてくれるでしょう。そして、10年にわたって私たちをサポートしてくれたジェレミー・ダロック(※スカイ社のCEO)に感謝します。」と述べた。

チームスカイのジャージはまもなく見納め Photo: Yuzuru SUNADA

 イネオス社はチームスカイと同額の予算を提供することを約束し、スタッフ・選手・各パートナーとの契約などもそのままチームイネオスに引き継がれる。5月1日にチームの所有権が移行し、5月2日のツール・ド・ヨークシャーからは「チームイネオス」として活動を開始する。つまり、現在のチームスカイのジャージは4月末で見納めとなり、今年のグランツールには新たなジャージで参戦することになる。

 まだ、UCIの正式の承認は降りていないものの、スポンサー問題が長引き、チームが解体される恐れがあったことを考えると、一件落着といえる結果になった。

ラットクリフ氏はイギリス随一の大富豪

 ラットクリフ氏の経歴を簡単に紹介したい。

 1952年にイギリス中西部のランカシャーに生まれた。10歳のときにヨークシャーに移り住み、18歳のときにバーミンガム大学へ進学。卒業後は大手石油メーカーのエッソ社に就職。社会人生活のかたわら、1980年から1989年にかけてロンドンのビジネススクールに通ってMBAを取得。1998年に現在のイネオス社を創業した。

イギリス随一の大富豪であるジム・ラットクリフ氏 ©Ineos

 そこからの20年間でラットクリフ氏は210億ポンド(約3兆1260億円)もの純資産を築き上げ、イギリス長者番付1位にランクインされるほどの超大富豪となった。2018年にはナイトの称号を得て、サーとなった。

 スポーツ界との関わりとしては、2017年にスイス2部のサッカークラブ「FCローザンヌ・スポルト」のオーナーとなり、2018年にはプレミアリーグ5度の優勝を誇るイギリスを代表するビッグクラブであるチェルシー・ユナイテッドの買収を画策したが、買収には失敗。

アメリカズカップ出場を目指すチームイネオスUKのヨット ©Team Ineos UK

 また、ラットクリフ氏自身はボートやセーリングを楽しんでおり、ヨットをいくつか所有している。ヨットレース最高峰、別名を「海のF1」とも称される「アメリカズカップ」に出場するために「チームイネオスUK」を2018年に立ち上げた。

 そうしたなかで、2019年にはチームスカイの新スポンサーとなった。背景にはイネオス社で築いた莫大な資産があるため、2020年以降のチームイネオスの活動は、これまで以上の予算が提供される可能性がある。

 チームスカイにとっては、一時期解散の可能性もあるほど厳しい状況に追い込まれていたが、現時点では考えうる限り最高の結果になったといえよう。

スカイのスポンサー問題まとめ

 紆余曲折のあったチームスカイのスポンサー騒動について、これまでの経緯を簡単におさらいしておく。

・2018年9月

 イギリス・スカイ社が、huluなどの主力事業を持つアメリカ・コムキャスト社に買収される。

・2018年12月

 2019年シーズン限りでスカイ社がスポンサーから撤退することを発表。

・2019年1月

 ジロ・デ・イタリアのイスラエル誘致に尽力し、イスラエル・サイクリングアカデミーのオーナーであるシルヴァン・アダムス氏がチームスカイの新スポンサーに興味を示しているとの噂が流れ、さらにはスカイ社を買収したコムキャスト社が予算を削減した上で2021年までスポンサー契約を延長するという報道もなされた。

 極めつけは、かつてチームティンコフのオーナーであったオレグ・ティンコフ氏が、チームスカイ買収を持ちかけたとの報道。チームスカイ代表のブレイルスフォードは「ビジョンの違い」を理由に拒絶したとのことだが、後にティンコフ氏は「そんな話はない」と否定するなど、自転車ニュースを賑わせていた。

オレグ・ティンコフ(左)とデイブ・ブレイルスフォード(右)。写真は2016年ツール・ド・フランスにて Photo: Yuzuru SUNADA

・2019年2月上旬

 ツアーコロンビア出場のため遠征中のチームスカイ。大会前には、かつてチームスカイに所属していたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)の仲介により、ブレイルスフォードがコロンビア大統領とスポーツ大臣と面会した。

 このことから、コロンビアの石油系企業エコペトロール社が新スポンサーになるという噂が流れていた。しかし、後にブレイルスフォード自身が「可能性はとても低い」とも語っていた。

・2019年2月下旬

 チームスカイのスポーツディレクターを務めるマッテオ・トザットが「新スポンサーの発表はジロ前になるだろう」と話した。新スポンサーがすでに決定していることを匂わせ、さらに新スポンサーはヨーロッパ企業であることを示唆していた。

・2019年3月

 上旬には新スポンサーはイネオス社ではないかとの報道がなされた。さらに、新チームと思われるTwitterアカウントが作成される。そうして、3月19日にチームスカイ公式ホームページにて、新スポンサーがイネオス社であることを発表された。

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