周回コースの限界か「完走6人」はなぜ起きたのか 関係者に聞いたJPT第2戦のメイン集団タイムアウト問題

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 国内最高峰のロードレースシリーズ「Jプロツアー」第2戦、修善寺ラウンド2日目の完走者はわずか6人だった。出走105人に対して異例の完走率(5.7%)となった背景には、6人の逃げを追うメイン集団が、残り5周で全員タイムアウトを言い渡されたジャッジにあった。関係者のコメントを元に、レース中に何が起こったのかを考察したい。

ペースを上げ始めた矢先にタイムアウトになったメイン集団 Photo: Shusaku MATSUO

「まだ止めるべきではなかった」

 レースが中盤に差し掛かるころ、今レースを優勝したフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)を含む11人の逃げ集団がリードしていた。一方のメイングループでは、単発的なブリッジはかかるものの、集団としては“待ち”の展開に。約4分のタイムギャップで推移し、前方と後方でお互いのレースを進めていた。

 動きが出始めたのは14周目ごろ、チームUKYOや宇都宮ブリッツェンがメイングループから飛び出して追走グループを形成。チームUKYOが4人、宇都宮ブリッツェンが2人、マトリックスが2人で先行する逃げグループを追った。メイングループでも残る宇都宮ブリッツェンの選手がタイムアウトを避けるために集団をけん引。しかし、15周終了時点で逃げグループ以外の選手が全員タイムアウトとなる判断がコミッセール(審判)から言い渡された。

 この判断に対し、複数のチーム関係者から疑問の声が上がった。追走グループは約3分、メイングループは約4分差という位置で足切りが言い渡され、レースの機会を奪われたからだ。

 宇都宮ブリッツェンの清水裕輔監督はこう主張する。「まだ止めるべきではなかったと思います。宇都宮ブリッツェンをはじめ、追走グループは意志を持ってコントロールを始めていました。辛いから遅れていたのではありません。メイン集団との差も約4分で止めることができていた」。清水監督は、今回開催された日本CSC右回り5kmコースであれば「5分差も容認できたでしょう」という見解も付け加えた。

宇都宮ブリッツェンやチームUKYOを中心の追走グループが先頭を追った Photo: Shusaku MATSUO

 一方で、「宇都宮ブリッツェン含め、メイン集団が後手を踏んだのは確か。主催者側はJプロツアーを盛り上げようとしてる最中なのはよく理解しています。周回コースの限界なのかもしれません。今回は残念な結果となりましたが、チームと主催者で協力しつつより良いツアーにできれば」と前向きなコメントも残している。

 また、チームUKYOの桑原忠彦監督はこう意見を述べた。「結果を見れば面白さに水を差した展開だったと言えるでしょう。我々は先頭に吉岡直哉を乗せていたので、他チームと望んだ結果は違うかもしれません。ただ、3位争いは(1、2位を占めた)マトリックスを除く全チームができたと思います。完走ポイントを狙うチームもあります。可能性を排除する展開に疑問が残ったのは確かです」

上りでもローテーションでペースアップを図った逃げグループ Photo: Shusaku MATSUO

 コミッセールに対しては「周回コースの特性上、混乱を避けるべく下した決断だったのでしょう」と理解を示しつつ、「UCIレースの場合は、事前に“タイムアウトにするぞ”という警告がある場合が多いです。コミッセールと監督とでタイムアウトの決定の前にコミュニケーションを取る機会があっても良かったのでは」と課題も明らかにした。

 このほか、レース関係者からは同意見が相次ぎ、「まだアクションを起こす時間と余裕があった」とする見解が多く示された。

「レギュレーションに則った判断」

 他方の主催者であるJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)側は、あくまでレギュレーションに則った判断だったと説明している。JBCFはレースの前に行われた監督会議で「4分半をタイムアウトの目安にする」と明示。また、レース中にはモト審判からメイン集団へ向かってペースアップを何度も促していた。

格の違う走りで一時は独走したフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)。かつてツール・ド・フランスで個人総合4位に入った経験を持つ Photo: Shusaku MATSUO

 JBCFの馬場隆司連盟本部長は、コミッセールの判断基準についてこう話した。「まず最も重視すべき点は安全性です。周回コースでレースを行う以上、大幅に遅れるとラップ(周回遅れ)される可能性が生まれ、危険度も増します。コミッセールはレギュレーションと予め示した基準に基づいた判断を下しました」と説明した。

 一方で、レースの流れを掴んだうえで判断する必要もあると付け加えた。「基本的にはレギュレーションに則るべきですが、安全確保さえできれば、場合によっては(タイムにとらわれない)流れを読んだ判断を下すこともあるかもしれません。そこは現場での判断になりますが、チーム側のとコミュニケーションが一層必要になるでしょう」と馬場連盟本部長は述べた。

 実際にレースを走り切った6人のうち、最後にフィニッシュした織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は優勝したマンセボから7分52秒遅れだが完走扱いになっている。

◇         ◇

 ロードレースにおいて、フィニッシュまで残り50kmを残し、メイン集団とコントロール下の逃げグループとのタイムギャップが3~4分になることは往々にしてあり、優勝者は必ずしも逃げグループにいるとは限らない。しかし、今回の問題は5kmという短い周回路でのレースが大きく影響した。平坦路であればアドバンテージとなるメイン集団の人数も、アップダウンを繰り返すプロフィールでは組織立ったチーム力を発揮しづらいのも確かだ。

新しい取り組みで大会のクオリティ向上を図っているJプロツアー Photo: Shusaku MATSUO
シマノ、ブリヂストンの日本人選手が前を走るスペイン勢の2人を追ったが差は縮まらなかった Photo: Shusaku MATSUO

 人気観戦スポーツにするべく、改革を進めるJプロツアーはウェブサイトの利便性向上、よりクオリティの高い無料のオンライン中継のほか、Vipチケットの導入など様々な取り組みを今大会から行い、大会全体の質を向上させている。しかし、タイムアウトで大量に選手がレースを去ってしまう展開が続けば観客は白けてしまうのも事実。レース距離増を主催者が図るなか、今回のように起伏に富んだコースで元ツール・ド・フランス個人総合4位の“黒船”のような強力な選手がけん引すると、日本人選手が大量に脱落する事態は当分避けられないのかもしれない。

 運営者側とチームとのコミュニケーション強化のほか、レースを走る日本人選手のパフォーマンスアップも急務だ。今回の修善寺ラウンドでは様々な課題が浮き彫りになったレースであったと言える。これらを一つ一つクリアすることが2021年を目標に掲げた新リーグ構想の目標「日本人選手の国際競技力向上」とツアーの発展に繋がるのではないだろうか。

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