名車たちが佇む店内はまるで美術館古民家はヴィンテージバイク専門店 「ビチクラシカ」が放つ孤高の世界観

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 大阪市中央区に店を構える「BICI CLASSICA(ビチクラシカ)」。店名はイタリア語で「古い自転車」を意味する。その名のとおり、店内にはハンドメイドされたヴィンテージバイクがズラリ。磨き上げられた名車たちが、落ち着いたインテリアの中で静かに佇む様は、まるで美術館のようだ。照明、ディスプレイスタンドなど内装のほとんどは、オーナーであるルイジ・ヴェラーティさんが自らの手で作り上げたものだという。

BICI CLASSICA(ビチクラシカ)の店内BICI CLASSICA(ビチクラシカ)の店内

古いものから引き出した独特の世界観

 ダンディーなルックスとは裏腹に流暢な関西弁を話すヴェラーティさんは、陽気なイタリア人だ。

“関西弁を話すイタリア人”のヴェラーティさんは大阪ではちょっとした有名人“関西弁を話すイタリア人”のヴェラーティさんは大阪ではちょっとした有名人

 ミラノの建築事務所で仕事をしていた時、音楽留学していた日本人女性と出会った。結婚をきっかけに1986年に大阪へ移り住み、建築デザイン事務所「スタジオ・ヴェラーティ」を設立した。

 日本はモノに溢れ、建物も自転車も流行に流され、大量に生産・消費されている。安い自転車が粗末に扱われる日本の現実は、ヴェラーティさんにとって大きなカルチャーショックだった。

 イタリアでは建築物や自転車だけでなく、どんなものでも永く、大切に使っていくことは当たり前のことだった。建築家としても、美しく、機能的で、人と環境に優しい仕事を心がけている。

 ヴェラーティさんはもともと、古く傷んだ自転車を丁寧にメンテナンスし、美しく蘇らせることが好きだった。その趣味が高じて、2009年にヴィンテージバイク専門店のビチクラシカをオープンした。

店舗は旧い長屋の古民家を自らの手でリノベーションした店舗は旧い長屋の古民家を自らの手でリノベーションした

 店舗は、事務所として使っていた築100年近い古民家を自身の手でリノベーションした。大きなヒノキの化粧柱と重厚なハリ、外壁には火災防止のレンガと銅板が使用されている。柱を切ったとき、100年前のヒノキの香りがそのまま漂った。自然を活かした日本の木造建築に驚かされた。

 伝統的な日本家屋の味や雰囲気、構造を活かした店舗作りは自分の世界観を表現する場にもなった。

 築100年の日本家屋と、ハンドメイドのヴィンテージバイク。全く異なるプロダクトだが、どちらも古く、職人の技術が詰め込まれた名品であるという点は共通している。ヴェラーティさんはこの2つの存在を、お互いの魅力を引き出し合う関係へと昇華させていった。これが、ビチクラシカにしかない孤高の世界観に結実した。

店内にはヴィンテージバイクがズラリと並ぶ店内にはヴィンテージバイクがズラリと並ぶ
レザーのバッグはビチクラシカオリジナルレザーのバッグはビチクラシカオリジナル
自転車だけでなく自身のデザインしたドアノブなども展示されている自転車だけでなく自身のデザインしたドアノブなども展示されている

どんなものでも永く、大切に使っていく価値を知ってほしい

イタリア・ミラノで選手として活躍していた当時の写真イタリア・ミラノで選手として活躍していた当時の写真

 ヴェラーティさんは1970年代から80年代のヴィンテージバイクを愛している。特に70年代は、故郷ミラノでアマチュアレーサーとしてロードレースに参戦していた頃の思い入れがある。

 当時、自転車は大量生産の機械や技術がなく、客と職人の信頼関係の基でハンドメイドされるのが当たり前だった。値段は高かったけれど、客と職人のこだわりを一つにした自転車は一生使える代物だった。その頃の自転車は独特な味と温かみがあり、分解してみると、その職人の思いや声が聞こえてくる。

 「自転車をバラバラにするのは、すべてをさらけ出して裸にするのと一緒。フレームの内部など、見えないところまで、溶接や塗装を丁寧に仕上げていることがわかると感動するんだ。いいかげんな仕事をしているのもあるけどね」。そう言って笑いながら、ヴェラーティさんは愛おしそうに自転車を見つめた。

棚にはアート作品のようにパーツが飾られつつ保管されている棚にはアート作品のようにパーツが飾られつつ保管されている

 ただ単純にメンテナンスを施して走らせるだけなら、単純な作業だ。しかし、一つひとつのパーツを大切に思うヴェラーティさんは、どうしたらそのバイクが当時の輝きを発揮できるかに頭を悩ませる。

 古く、傷んだパーツの一つひとつを丁寧にクリーニングし、グリスアップする。そして、今まで収集してきたパーツを自身のイメージやインスピレーションに従って組み上げていく。

 80年代のフレームであれば、80年代のパーツを合わせていくが、年代だけでなくパーツの生産国やデザイン、雰囲気をうまく揃えることにも気を遣う。イメージが沸き上がれば順調に組み立てることができるが、そういかないときは、とてつもない時間がかかる。

 1台の自転車が完成車になるまでの期間は早くて1ヶ月、長ければ1年以上かかる。ハンドルに巻くバーテープの色や素材に1週間悩み続けることもあるというから、1台を作り上げるのに大変な時間と労力がかかっているのだ。

 一台一台のバイクはヴェラーティさんの愛情が込められている。だからこそ、一生大切に使ってくれる人のもとにわたって欲しい。

最近増築した奥の間。扉ももちろん手作りだ最近増築した奥の間。扉ももちろん手作りだ

 「インターネットで気軽にいろいろな人と交流したり、量販店で簡単にモノを手に入れたりできる。でも、僕らは、実際に作り手と買い手がしっかりと知り合い、交流したい。その価値を十分に理解することが、モノと人を大切にすることだと感じている。買う買わないに関係なく、店を訪れた人にはその大切さを伝えていきたいんだ」

 訪れた客に人懐っこい笑顔で陽気に話しかけるヴェラーティさん。お店で知り合った人は皆、旧友のような雰囲気で会話をする。

 人と自転車、そして建物を、美しく温かな空気で包み込むビチクラシカ。ぜひ一度、訪れてみてはいかがだろうか。

文・写真 岡田由佳子
→ 気品と輝きで魅了する“時代の証人” ビチクラシカのヴィンテージバイクたち

BICI CLASSICA(ビチクラシカ)の玄関付近BICI CLASSICA(ビチクラシカ)の玄関付近

BI CI CLASSICA ビチクラシカ
住所:542-0066 大阪市中央区瓦屋町1-10-7
電話:06-6777-7070
定休日:日曜日、祝日
営業時間:10時~19:00 土曜、祝日:13時~19時
サイト:http://www.biciclassica.com/

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