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栗村修の“輪”生相談<149>20代男性「凄く遅いチームメンバーのやる気を出させる方法は?」

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 28歳の社会人です。現在仲間内でチームを組んで平日、休日時間が合えばみんなで走っています。メンバーはロードをずっと乗っていてそれなりに走れる数人と、残りは最近始めたばかりの初心者数人です。いずれは市民レースにもみんなで出たいと思っています。

 さて、その中で1人だけ凄く遅いメンバーがいて、後からロードを始めた子にも千切られてしまうんです…。

 みんなからアドバイスを受けて練習させてもまるっきり効果がなく、そういう人に角が立たないように、やる気を出させて練習にもっと打ち込める言い方や、環境作りを教えてください!!

(20代男性)

 こういう問題は、自転車に限らず、いえ、スポーツに限らず人が集まると必ず起こると思うんです。でも質問者さんが素晴らしいのは、ついてこられてない人をどうするか、まで気が回っている点ですよね。「遅いやつは置いていくぞ」という集団も少なくないわけですが、成績が絶対ならともかく、楽しむことが目的の集まりならば、大切なことですよね。

 能力や成長スピード、モチベーションには必ず個人差があります。僕も監督として嫌というほど選手たちの個人差の大きさを見てきました。でも僕のやり方は、どちらかというと質問者さんに近いんです。つまり、ひとりひとりの成長スピードの差に応じた目標を与える、という方法です。

 さて、大前提ですが、ツール・ド・フランスの総合優勝を狙う選手も補助輪を外したい子供も、成長するためには成功体験(大きな目標に向かう過程での小さな達成感など)を積み重ねることが大切です。この観点から問題の方を見てみるとどうでしょうか。想像してみてください。

 相当、辛いはずです。好きで遅く走っているわけじゃないのに、遅れてしまう。後から入ってきた新人にもすぐ抜かれてしまう。遅いということは他の人が脚を休めている間も踏み続けないとけないということですから、体も心も辛い。常に必死なので、フォームをチェックする余裕もないでしょうし、オーバーワークにも陥りやすい。「みんなからのアドバイス…」とありますが、これもむしろプレッシャーになっているんじゃないでしょうか。つまりその方は、成功体験の反対、いわば失敗体験を積み重ねているわけですね。これでモチベーションが上がったらむしろ不思議です。

 したがって、その方に成功体験を積ませることが必要です。

同じトレーニングをしても、個々の成長スピードはそれぞれ異なる Photo: Yuzuru SUNADA

 グループライドは強度を上げたりテクニックを磨いたりする上で非常に重要なんですが、弱い選手にとっては自分の成長が見えづらいという非常に大きな弱点があります。強い選手は、踏めば遅い人が千切れるから気持ちよく成功体験を積めるわけですが、遅い人にとってはその逆。つまり、成功体験と失敗体験が入り混じるんです。たぶん、その方も練習に参加している以上少しずつ強くなっているはずなんですが、グループライドでは周囲より強くなるスピードが遅いせいで、成功体験を得られない。もしかしたら順調に成長しているかもしれないのに、本人がそれに気づくチャンスがないわけです。もったいないですね。

 だから、成長を可視化できるメニューを用意してあげてください。峠のタイムアタックとか、パワーメーターでパワーを測るのがいいでしょう。成長速度に差はあっても、乗れば乗るだけ強くなるのが自転車です。その方も速くなっているはずですよ。

 成功体験を積む上でのポイントは、目標を2つ立てることです。まずはハードル高めの目標としてプランA、次に、がんばればなんとか達成できそうな目標のプランB。目標Aだけだと、自信を失ってしまいますからね。

 質問者さんも、成功体験を積み重ねて強くなってきたはずです。成長スピードに差はあってもそこは皆一緒です。大切なのは自信をつける機会を与えることではないでしょうか。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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