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栗村修の“輪”生相談<148>18歳男性「ツール・ド・フランスが廃止になることってあるのでしょうか?」

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 18歳男子高校生です。今、僕はフランス語を勉強しています。

 勉強のためにフランス人の方とよく話すのですが、日本に来るほとんどの人が「ツール・ド・フランス」があまり好きではないようです。私たちは日本でテレビ越しで見ていますから、気楽でいいですが、フランスに住んでる人からすると、道路が使えなくなり相当迷惑しているようです。

 100年以上続くツール・ド・フランスですが廃止になる。そんな可能性はあるのでしょうか? それは本当にやめてほしいです!

(18歳男性)

 150回近く続いている輪生相談ですが、これは初めての、なかなか衝撃的な質問ですね。しかし建前と紋切り型で無難に済まさないのが本連載のポリシーですので、真摯に考えてみましょう。

 まず、ツール・ド・フランスがフランスの国家的イベントであることは間違いありません。僕は1989年にフランスに渡りましたが、当時はローラン・フィニョンら強いフランス人選手がたくさんいましたし、フランスのレジェンド、ベルナール・イノーの弟子であるグレッグ・レモンの活躍で国際化が始まっていたこともあり、フランス国内では今以上に盛り上がっていました。

 しかし、1998年のフェスティナ事件以降のドーピングスキャンダルにより、フランス国内での自転車競技のイメージはかなり悪化してしまいました。

 僕は昨年、J SPORTSの仕事でフランスに行って街の人にロードレースについてインタビューをしてみたのですが、ロマン・バルデを知ってる人が殆どいないんですよ。バルデですよ、バルデ。フランス最高の選手じゃないですか。たまたまだったのかもしれませんが、インタビューした人たちは知らない。代わりにというわけじゃないですが、ドーピング絡みのことはみんな知っているわけです…。

 ショックでしたが、フランスにおけるロードレースの地位低下を感じざるを得ませんでした。僕がいたころでは考えられない話です。

ツール・ド・フランス名物のアルプ・デュエズの坂を先頭で走るロマン・バルデ Photo: Yuzuru SUNADA

 ただし、それはフランス国内の話です。選手たちの国際化はどんどん進み、1980年代と比べると、世界的にはツール・ド・フランスの知名度と価値は上がっています。放映権料も高くなっているでしょうし、選手たちの年俸も上がっています。僕がフランスにいたころのトップ選手の年俸は日本円にして数千万円でしたが、今のトップ選手なら数億を稼ぐケースもあります。もちろん他のメジャー競技よりは年俸は低いですし、スポンサーも世界的なメジャー企業が少なく、改善点は山積みですが、全体としては改善され、市場も広がっているということです。

 ちなみに僕は1998年にポーランド籍の今でいうプロコンのチームに所属したのですが、年俸は未払い。つまりゼロ円です。今じゃ少し考えにくい話ですが、昔はこういうこともあったのです。

 さて、ツールがなくなってしまうのでは、というご心配ですが、大丈夫でしょう。もちろん道路をスポーツに使われることを迷惑に思う人はいるでしょうし、実際に近年はツール・ド・フランスであっても大きな幹線道路などは使いづらくなっているとも聞きます。しかし、それはどの国でもありえる話です。国民的行事ですし、ASOにとっての収益率も高いですし、文化的にもビジネス的にもなくなることは考えにくいですね。

 ちなみに、最近の日本では、以前よりも道路使用許可が下りやすくなっています。自転車活用推進法が成立したり、東京マラソンなど公道を使うスポーツイベントが増えたせいでしょうか。社会の認知度やイメージによって左右されるものなんですね。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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