Cyclist編集部が食べて見て走った大分・国東半島に新サイクリングルート「仁王輪道」完成 仁王像と絶景スポット、グルメ巡る90km

by 石川海璃 / Kairi ISHIKAWA
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 大分県豊後高田市で3月2日、国東半島の新たなサイクリングルート「仁王輪道」の完成を記念した走行会が開催されました。元プロロードレーサーの今中大介さんらゲストライダーや地元のサイクリスト、メディアを含め、29人が出走し、国東半島一周ルートの一部となる90kmを満喫。海沿いのコースや点在する石像など、国東半島の魅力をCyclist編集部のレポートでお届けします。

石造の仁王像が点在する国東半島を回るサイクリングルート「仁王輪道」が完成した Photo: 仁王輪道事務局

“仁王”のサイクリングルート?

 「仁王輪道」は大分県の豊後高田市、国東市、杵築市、日出町の4市町で構成される国東半島振興対策協議会が、観光と地域づくりを一体化した新たな観光資源の創出を目指して引いたルート。2017年度からコースの策定・調査を行い、約35~130kmまで、9つのサイクリングコースを作成した。

各コースのマップ。合計で9つのルートが設定されている(公式パンフレットよりキャプチャ)

 コースは、国東半島地域で多くの人に親しまれてきた「仁王」の様に、「力強く駆け抜けるサイクリストの姿が地域の新たな光景となってほしい」という思いから「仁王輪道」と名付けられた。

仁王輪道の公式ホームページのトップ。アイコンの仁王像がトップに表示される(トップページよりキャプチャ)
別ルートの仁王像。写真の左右に苔むした姿で鎮座する Photo: Tomohide TANI

 舞台となる国東半島は、神道と仏教の文化が混ざり合い、新たな信仰体系が構成された「神仏習合」の発祥地。1300年以上前から修験場として知られ、半島各地には300体以上の石造仁王像が点在するなど、昔の情景を今現在に残す、歴史ある土地だ。

 今回、Cyclist編集部が走ったのは、国東半島一周ルート(約130km)の一部、約90km。豊後高田市の中央公園をスタートし、国東市、杵築市の半島外周沿岸沿いを経由して、日出の城下町までサイクリングした。

豊後高田市長「多くの人に親しんでほしい」

 走行会は地元や関係者を含め、約30人のサイクリストが集結。ゲストライダーには、今中さんのほか、かつてマウンテンバイク(MTB)クロスカントリーのマラソン競技で、日本人初のワールドカップ出場を果たした山田大五朗さん、元香港競輪代表チームメンバーの鄭澤誠(Cheng Chak Shing)さん夫婦の4人が招待された。

豊後高田市・佐々木敏夫市長が試走会参加者を激励 Photo: Kairi ISHIKAWA
昭和の町の看板を前に記念撮影 Photo: Kairi ISHIKAWA

 スタートには豊後高田市・佐々木敏夫市長が駆け付け、「この完成試走会を通して、仁王輪道が多くの人に親しんでいただけるきっかけになれば嬉しいです」とあいさつ。ルートの完成と今後の広がりに期待感を寄せた。

スタッフを先頭に日出町中央公民館までのサイクリングがスタート Photo: Kairi ISHIKAWA

 走行会は先導スタッフやゲストライダーを先頭に午前9時頃出発。まずは、昭和の町付近の中央公園から約20kmに渡って、恋愛成就のスポットが点在する『恋叶ロード』を走行した。街中を抜け、最初に止まったのが真玉海岸だ。大分県で唯一海に沈む夕日を眺められ、「日本の夕陽百選」に選ばれている絶景スポット。この日は昼間だったため、見ることができなかったが、是非晴れた日没の時間帯に入りたいポイントだ。

スタートして数km走れば、海が見えるロケーションでサイクリングできる Photo: Kairi ISHIKAWA
日本夕陽百選に選ばれている絶景スポット「真玉海岸」 Photo: Kairi ISHIKAWA
縁結びのモニュメント「結」。カップルや意中の相手との撮影に最適な場所だ Photo: Kairi ISHIKAWA
国東ユースホステルでは、名物のタコ飯が振舞われた Photo: Kairi ISHIKAWA

 次に休憩したのは、高台に位置する粟嶋公園。シルバーと赤のラインがハートをかたどった縁結びのモニュメント「結」や、記念撮影ができるプレートがあるフォトジェニックな場所だ。また、周辺には、石窯ピザが味わえるカフェや、海が見渡せる展望台、縁結びにご利益がある「粟嶋社」(あわしましゃ)などもある。補給・観光するにはうってつけのポイントだ。

幾度となく通るトンネルは冒険心をくすぐられる Photo: Kairi ISHIKAWA
食事を提供してくれたユースホステルのオーナー、吉田拓也さん、真由美さん夫婦と記念撮影(写真中央) Photo: Kairi ISHIKAWA

 その後、国東ユースホステルであさりが入ったタコ飯やおこわ、ベジタブルスープなど、ボリューム満点の昼食をとった。素材本来の風味を生かした料理に舌鼓を打つ。贅沢な料理にお腹を膨らませた一行は、北部の海岸沿いへとペダルを漕ぐ。小さな入り江と岬が連続するリアス式海岸らしく、トンネルを幾度も越えると、名もなき海岸に到着した。実はここ、姫島を一望できる絶景スポットで、晴れていれば姫島をはっきりと見ることができる。この日は曇り空だったため、うっすらとしたシルエットのみだったが、むしろそれが趣のある景色に感じさせた。

姫島が一望できるスポット。静かに景色を楽しめる穴場だ Photo: Kairi ISHIKAWA

 約4kmほど南下していくと、総延長35.4kmの自転車道「国東半島サイクリングロード」に合流した。国東半島で毎年5月頭に開催されるサイクリングイベント、『ツール・ド・国東』のコースとして設定されている場所で、フラットな道が特徴。道幅は2~3mほどあり、談笑しながら走れる良さがある。

 サイクリングロードは、海と道路との境界線が柵のみで、顔を覗かせれば真下に水面が広がるほど海との距離が近くなる場所や、砂浜に直接降りられるスポットが登場する。サイクリングの休憩がてら海を眺めるのたり、撮影にも最適だ。また、夏場であれば、ちょっとした海水浴も楽しいかもしれない。そこから4、5kmほど走れば、羽田海岸リンリンパークに到着。3階建ての展望台は海を見渡すのに最適だ。晴れていれば伊予灘の先に本州と四国の姿が現れる。

隣はすぐ海という絶好のロケーション。道中は度々奇岩が出現する Photo: 仁王輪道事務局
羽田海岸リンリンパークではイチゴ大福が振舞われた。 Photo: Kairi ISHIKAWA
食べる前の写真撮影は欠かせない Photo: Kairi ISHIKAWA

 羽田海岸リンリンパークから再び一般道に入る。走行ルート途中の国東橋には、仁王輪道の由来である「仁王」の石像がお目見え。「なんか橋に建っている」と油断すると見逃してしまうほど、自然に街中に溶け込んでいる。300体以上の仁王像が点在する国東半島ならではの光景だ。

サイクリングターミナルはクロスバイクやロードバイクのレンタルも。大人は500円で利用できる Photo: Kairi ISHIKAWA
国東サイクリングターミナルに近い「銀たちの郷」でいただいた太刀魚の蒲焼き Photo: Kairi ISHIKAWA
ゲストライダーの鄭夫婦。「沢山食べてお腹いっぱい」と笑顔で話してくれた Photo: Kairi ISHIKAWA

 一行は、道の駅くにさきサイクリングターミナル、大分空港を経由して杵築(きつき)市へ。南北朝・室町時代の頃から城下町として栄えた杵築は、その歴史が今もなお色濃く残る。特に杵築城と周辺は”九州の小京都”と呼ばれるほど。タイムスリップしたかのような街並みが広がる。

小高い土地に建つ杵築城 Photo: 仁王輪道事務局

 城の眼下には、カブトガニの生息地として知られる守江湾が一望できる。干潮時には東西に約1.5km、南北約2kmほどの干潟が形成される。この土地がカブトガニが生活するのに適した環境になるそうだ。

 走行会の終盤、今中さんがアタックのようにペースを上げると、他の参加者は「もうだめだー」「速すぎてついていけない!」などとなるシーンもあり、各自が自分のペースでゴール地点の日出町中央公民館までサイクリング。午後4時頃に約90kmの体験を終えた。

「ジョルノス」のクリームパンと「お茶のとまや」の最中を頬張る「チームエスカルゴ」の皆さん Photo: Kairi ISHIKAWA
杵築城ポーズ?で記念撮影 Photo: Kairi ISHIKAWA

仁王輪道の魅力とは

 今回走行した国東半島1周のルートは、前半はアップダウンが少なく走りやすい。また、SNS映えする“今風”なスポットや、海が広がる美しい景色が次々に現れる。後半は少し起伏のあるコース設定で、サイクリストを飽きさせることはなかった。「仁王」の石像や趣のある城郭など、歴史を感じさせるエリアが魅力的で、見ごたえ・走りごたえのあるとても面白いルートだった。

様々な場所に仁王像が建てられている Photo: 仁王輪道事務局

 また、1周ルート以外にも、昭和レトロな街並みや城下町を回るものが設けられ、自分の趣味・嗜好、走力に応じて選択できるのも非常に良い。9つあるルートの中から、それぞれのコンセプトに応じた「仁王輪道」の魅力を体験できるだろう。

交通量が少なく、景色もいい。サイクリングにもってこいのコースだった Photo: Kairi ISHIKAWA

 走行会を走ったほかの参加者にも印象を聞いてみた。大学時代を大分で過ごしたというゲストライダーの今中さんは「学生の時から変わらない“良さ”が大分にはありますね。今回のコースは、自然や文化、歴史を感じることができるし、非常に走りやすいです。コースは9つあるので、その中から選べば、初心者から上級者まで走れると思います。今後は、仁王輪道を活用したサイクリングイベントも実施できるのではないでしょうか」とコースについて考察、評価した。

「大分が僕の自転車人生の始まりでした」と話す今中大介さん Photo: Kairi ISHIKAWA
「MTBで走った分、疲れと楽しさは1.5倍増しです(笑)」とおどけた山田さん Photo: Kairi ISHIKAWA

 また、山田大五朗さんは、「前半はアップダウンも緩やかでまったりと走れ、後半は起伏に富んで面白かったです。コースの左側は常に海が見えるロケーションで、とても気持ちがいい。今回はあいにくの曇り空でしたが、晴れていれば各時間帯ごとに、海の色が変化する様子も楽しめますね」と魅力を教えてくれた。MTBで完走できる難易度も「仁王輪道」が走りやすい証拠だと言える。

交通手段の整備がカギ

 国東市・社会教育課社会体育係の守光正さんは、2017年のプロジェクト開始から2018年3月末まで、仁王輪道のルート作成に携わった一人だ。コースの舞台となる4市町と協議を重ね、プロジェクトを始めて約2年で9つのコースを完成。自らが実際に走行し、サイクリストの目線から危険個所をリストアップするなど、裏側で活躍した。どうやってプロモーションをしていくかを検討する最中、コース作成の担当から現在の部署へ異動になっただけに、試走会に参加する喜びはひとしおだ。

各市町との調整やコースのプロット作成など、様々な場面で活躍した守光正さん Photo: Kairi ISHIKAWA

 ルートは「海沿いや街中を走行し、地域資源に触れつつ、綺麗な景色が見られるように配慮しました。また、沿岸の素晴らしい景色も魅力的ですが、起伏に富んだ立地を生かして一部にヒルクライム要素を取り入れています。全国の坂好き、ヒルクライマーなどに認知されていないので、このルート完成をきっかけに、九州地域はもちろん、多くの人にサイクリングしてもらえたら嬉しいです」と期待を寄せる。特に「国東市は大分空港を経由するルートが3つあるので、飛行機を降りてすぐにサイクリングができます」と魅力をアピールした。

 今後は、「仁王輪道」作成当初から課題である、各ルートへの交通手段の整備がカギ。それをクリアできれば、多くのサイクリストで賑わう聖地となりそうだ。

 走り出せば万華鏡の様に、様々な姿を見せてくれたサイクリングコース。写真映えするスポットにご当地グルメも絶品で、一度体験すれば、その魅力に取りつかれるはず。ぜひ多くの人に「仁王輪道」を体験してほしい。

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