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山下晃和の「“キャンプ”ツーリングの達人」<2>軽量化、虫、防寒対策…自転車キャンプのハードルをクリアする5つのポイント 

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 前回は、「キャンプツーリングの魅力は、地球上のあらゆる絶景の中で泊まることができるところに良さがある」ということを紹介しました。今回はキャンプツーリングに踏み出すために、まず「キャンプスタイル」なるものを理解すること、そのためにどのようなことをクリアしなくてはならないのか、ということを5つのポイントに分けてお話ししたいと思います。

カラフルなテントが並ぶ浜名湖畔のキャンプ場「タリカーナ」。個人的な乗り物である自転車も各々キャンプ場に集まれば輪ができます。これもマスキャンプツーリングの楽しさ Photo: Akikazu YAMASHITA

キャンプツーリングは難しい?

 そもそも、「キャンプ」という名で呼ばれる以前の「野外生活」という意味では、非常に長い歴史があります。狩猟民族や農耕民族だった大昔は、言ってしまえばほぼすべての人間が野宿のような生活。簡易的な小屋などで、常にキャンプをしていたわけです。

キャンプは人間としての“本能”が呼び起こされる…のかもしれない Photo: Akikazu YAMASHITA

 洞窟や土の中に掘った穴倉などを選んだり、木や皮を使ってテントのようなものを建てたり…、雨風、外気温、害獣から身を守るための宿泊地を探し求めて生きてきたのです。そういう意味で、キャンプは一度ハマってしまうと“本能”が呼び起こされたかのようにのめりこんでしまう遊びでもあります。現在は外敵も少ないので、大昔のそれと比べても難しいことはありません。

 では、なぜキャンプツーリングのハードルが高く感じるかというと、そこに「ツーリング」という移動要素が入るからです。「居住」だけのことを考えれば非常に単純なのですが、「移動」が入ることで難しく感じてしまうようです。

ポイント①軽量化

 まず、「キャンプ」と一言でいっても、さまざまなスタイルがあります。キャンプという言葉だけを聞くと4WDやバンなどのクルマに衣食住の荷物を積み込んで、家族で一緒に過ごすといったファミリーキャンプをイメージされる方が多いと思います。焚き火を囲って、ダッヂオーブンやツーバーナーで豪快な料理を作って、みんなでお酒を飲みながらご飯を食べる、といった感じかもしれません。

車で行くキャンプは何もかも詰め込めば良いので簡単ですが、自転車のキャンプは知恵が必要になってきます Photo: Akikazu YAMASHITA

 これはマスメディアの努力の結果でもありますが、日本では「キャンプ=家族と過ごすアクティビティ」として拡がりました。ところが、自転車のキャンプツーリングでそういったファミリーキャンプスタイルのアイテムをそのまま使おうとすると、まず荷物として重た過ぎて、運ぶのに相当苦労します。そもそも巨大なものは自転車で運ぶことができませんし、まして輪行時にどうやって手で持てば良いのか分かりません。

 自転車で行くキャンプツーリングのキャンプ道具は、何日間もかけて複数の山のピークを越える縦走(じゅうそう)登山のキャンプスタイルに近いです。縦走登山とは一つのピークハントだけを目標とするのではなく、大きなバックパックを背負い、2泊3日などの期間をかけてゆっくり歩く登山です。

バックパックにあらゆる生活道具を詰め込んで、2、3日稜線を歩く縦走登山。長い期間だと一週間以上山に入ることも。経験を重ねると軽量化、積載方法などの「道具哲学」が固まってきます Photo: Akikazu YAMASHITA

 夜の間は滑落の危険性があるため、背中のバックパックからテント、スリーピングバッグ(寝袋)、マットを取り出して、山小屋の近くに設けられたキャンプ地で睡眠を取ります。あらゆるものを自分の脚で運ばなくてはならないので、必然的に軽量なギアにせざるを得ません。可能な限り軽量化し、重さから解放されると移動も億劫でなくなります。

 用意するものが多くて面倒だったり荷物が重いという問題は、パッキングを工夫することで解決できます。物が多い人は、防水のスタッフバッグ(小分け用の袋)に色分けで仕分けをし、簡潔化するのがポイントです。また、荷物の重さはテント、スリーピングバッグ(寝袋)、マットといった衣食住の“住”の部分が大半を占めているので、これらの軽量化を図るのが近道です。

ポイント②虫対策

 私は実は虫がニガテです。子供のころからそれほど興味もなく、都会での生活で触れる機会もなかったのですが、テント泊となるとどうしても虫とのお付き合いは避けられません。キャンプへの抵抗を感じている方で、これを理由に挙げる人も少なくはありません。

中国の南寧市で買ったモスキートコイル。本当に蚊を倒すことができるか試しているところ Photo: Akikazu YAMASHITA

 湿度が多いところではヒル、蚊。水がきれいなところであればブヨ、砂漠ではサソリなども居ます。フロリダのキャンプ場では大量の噛むアリに悩まされたり、ムカデのような足がたくさんある虫もいました。水辺にはワニもいる始末。ところが、今は優秀な虫除けが出ていたり、虫が寄ってこないキャンドル、虫が嫌いな超音波を発するスマホのアプリまであります。

 また、海外を自転車で旅をしたとき、タイではタイ製のモスキートコイル(蚊取り線香)があり、カンボジアやネパールではインド製の「オドモス」という香りの良い虫除けが大活躍しました。人間が不快に感じる虫への対処法は日進月歩です。

ポイント③暗闇対策

 実は暗いのもニガテで、20代の頃はできるだけ早くキャンプ地に着くようにし、明るいうちにテントを張るようにしていました。今は300ルーメンを越える明るいヘッドランプも安価でありますし、何十時間も光っているソーラー発電のLEDライトもコンパクトになっています。スマホのライトも優秀です。また、自転車用のライトがそのままヘッドランプやランタンに使える「Knog」(ノグ)のライトは非常に明るいうえに、一つで二役使えます。

オーストラリアのブランド「ノグ」から出ている自転車用ライトがヘッドランプとして汎用できる優れもの。LEDランタンにもなるアタッチメントもあるので、自転車のキャンプツーリングで主流になっていくと思います Photo: Akikazu YAMASHITA

 暗いところの生活はある程度、慣れも重要です。前回の記事で紹介したラオスでの夜のキャンプは、はじめは怖かったのですが、ここ最近は暗い中でも自転車で走りますし、夜中に山奥で野宿することも苦ではなく、動物の動きや音がしてもそれほど驚かなくなってきました。

 むしろ、静寂が癒しに感じることも多々あります。

ポイント④防寒対策

 また、一度キャンプツーリングを経験した人がイヤになってしまうパターンは、「寒さに負ける」ことです。

アウトドア用のウェアは速乾性、防水透湿性、軽量性、耐久性、携行性、保温性などいろいろな機能があるので、自転車移動時だけでなく、キャンプ時も着られますし、災害時にも役立ちます。筆者が着用しているモンベルのレインウェア「トレントフライヤー」は旅サイクリストから絶大なる支持があります Photo: Akikazu YAMASHITA

 寒さ対策は、サイクリングウェアだけでなくアウトドアウェアも用意することです。また、季節に合った保温力をもつスリーピングバッグを選ぶこと、焚き火を取り入れることなどで、ほとんど解消できます。

 アウトドアウェアはサイクリングウェアに比べて非常に耐久性が高いので、たいてい数十年は持ちます。また、防寒だけでなく、防水性、携行性、引き裂き強度などの基準が高いので、一着もっていると災害時にも役立ちます。

ポイント⑤費用

仲間とテントを囲って野外ダイニング。これもキャンプツーリングの醍醐味の一つ Photo: Akikazu YAMASHITA

 キャンプを始めるためのアイテム購入で初期投資がかさむという声もよく聞きます。しかし、これは考え方ですが、ホテルや旅館で一泊1万円かかることを想定したら、5泊や6泊すれば元が取れてしまうことになります。

 また、山岳用テントならば1年で壊れるものはほぼ無いといっても良いので、そうなると3年、4年とメンテナンスをしながら大切に使えば、結果的には低コストで旅をすることができます。

 さらに自転車乗りが1人1つテントを持っていれば、仲間とツーリングしたときにテントで囲んで野外ダイニングも作れます。そこに焚き火台があれば、たゆたう炎を眺めながら、お酒が入ったシェラカップをすすって仲間と最高の時間を過ごすこともできます。これはプライスレス!キャンプでなければ得られない時間です。

 次回はキャンプツーリング向けの自転車本体について紹介したいと思います。

山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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