過去最高52ブースに3233人が来場日本が誇る「2019ハンドメイドバイシクル展」開催 木とカーボンのハイブリッドも登場

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 自転車フレームビルダーやメーカーが緻密に作りあげた独創的な自転車・パーツの展示会「2019 ハンドメイドバイシクル展」が東京都大田区の東京流通センターで2月23、24日の2日間で開催された。過去最多となる52ブースに、2日間開催では過去最高の来場者3233人が来場。国内外のフレームビルダー、パーツメーカーの出展者と直接対話できるほか、トークショーにも立ち見がでるほど、大盛況だった。

アトリエ・キノピオでは、木とカーボンのハイブリッド車が、レストランのメニューのように展示。ディスプレーにも世界観が現れていた Photo: Kenta SAWANO

お目当てビルダーとの対話

 これまでおなじみの会場だった東京・千代田区の科学技術館が改修中のため、今回は大田区の東京流通センター(TRC)に、会場を変更・拡充しての開催となった。天井も高く、広々とした会場には過去最多となる52社が出展した。初日の23日は朝9時半のオープンとともに、熱心なファンがお目当てのブランドに向かった。憧れのブランドから、比較的手軽にオーダーできるメーカーまで、それぞれの目的に沿ってビルダーと対話できるのが、何よりの特徴で、会場のあちこちでアツい会話が交わされていた。

過去最大のファンを集めたハンドメイドバイシクル展。ケルビムブースは例年のごとく朝から大人気だ Photo: Kenta SAWANO

「アトリエ・キノピオ」ほか注目新規5ブース

 今回新たに参加した5ブランドは会場の一番奥にブースを展開。それぞれがディスプレーを含め、独自の世界観を構築し、どこよりも光を放っていた。長野県箕輪町に工房を構える「アトリエ・キノピオ」は信州産カラマツとカーボン、ブナとカーボンのハイブリッド車を展示。何層にもバームクーヘンのように重ねた材木をカーボンを挟み割れにくくしながら、美しく湾曲させたフレームは、まさに工芸品のようで、“古いバイオリン”を彷彿とさせた。

アトリエ・キノピオの最新モデル「ブナとカーボンのSingle Speed」。量産化に向けて進んでいる Photo: Kenta SAWANO

 「カーボンをバインドすることで木の弱点を克服しました」と説明してくれたのはオーナーの安田マサテルさん。本場イタリアで学び、自転車のデザインや塗装を行ってきたが、現在では日本でイタリアのフレームのデザインや塗装を行っている。木材をフレームの形に曲げるのは家具屋さんに依頼し、フレームとフレームをつなげる部分は、デザイン起こしから3Dプリンターで立体にして、それをもとにアルミでの制作を外注しているという。

3Dプリンターで作ったモデルを参考に外部オーダーしたアルミ製部品で木製のフレームを結合する Photo: Kenta SAWANO
シートステーはフローティング構造になり、地面からのショックを吸収 Photo: Kenta SAWANO

 なにより自転車を際立たせる演出も素晴らしかった。横に立てられた看板には「MENU ブナとカーボンのSingle Speed(NEW!)、カラマツとカーボンのSPORT風2012年、クルミとオークのTouring1999作」とワインのメニューのように紹介。ハンガーにかかったツイードジャケットとともに、イタリアの古いレストランに誘われたような雰囲気が伝わってきた。

ABOVE BIKE STOREの「Mudman」

 一方、その横にはアメリカのガレージのようなブースが目立っていた。神奈川・二子新地に店を構える「ABOVE BIKE STORE」は木製の脚立や、精緻なスプレーアートが施された空き缶がオーダーメードの美しいロードバイク2台とともに並ぶ。いずれもオーナーの須崎真也さんのマイバイクで店内のフレーム工房で製作したオリジナルブランド「MUDMAN」に、こちらもインハウスのペイント工房Swamp Thingsによるキメの細かい塗装が施された。

ガレージのようなブースに飾られたMUDMAN CUSTOM。オーナーの須崎さん用にスペシャルペイントが施されている Photo: Kenta SAWANO
ハンドルも含め、インハウスのペイント工房Swamp Thingsによるキメ細やかな塗装が施されている Photo: Kenta SAWANO
シングルスピードの「MUDMAN」を見せてくれたABOVE BIKE STOREの須崎さん。シートステーのカーブが艶かしい Photo: Kenta SAWANO

 これに加え、量産し、コストを抑えた新しい「Mudman」のストックフレームも展示された。シートステーの曲線が何より美しく、展示されたモデルはシングルスピードで、35Cのタイヤがギリギリ入る趣味性の高いもの。オーナーの須崎さんは「フレームは16万円くらいから、ENVEのフォークを入れて20万円ちょっとぐらいから準備できます」と説明してくれた。

自転車ジャーナリスト大前さんがフレームを自作

 自転車ジャーナリストで、東京・浅草にサイクルショップ「CYCLE TOURING オオマエジムショ」を構える大前仁さんも初出展した。これまで東洋フレームやエンメアッカ、ライジンワークスといった一流ブランドと手を組み、旅を楽しむためのツーリング車「après」(アプレ)を産み出してきたが、今回ついに自らの手で451のタイヤを履くフレーム「アプレ・ミニ」を製作した。

「オオマエジムショ」のオーダー車「après(アプレ)」シリーズ Photo: Kenta SAWANO 

 「俺は人生で3台しか作らないんだ。その1台をついに作っちゃった」と意気込む。日本を代表するフレームビルダー23人をまとめた写真集『ハンドメイド自転車工房~フレームビルダーの流儀』を取材、出版しただけあり、フレームビルドに関する知識は相当なはず。「この展示会に合わせ、借りもの競争で2週間で仕上げました。それもお店の真ん中で」と楽しみながら仕上げた様子が笑顔からうかがわれた。

処女作を手にして笑顔の大前仁さん Photo: Kenta SAWANO 

 初めての1台を作ったきっかけは、自らが主催するイベント「Japan Bike Technique」(ジャパンバイクテクニーク)に出るためだという。同イベントは
Concours de machines(コンクールドマシーン)というフランスで近年人気が出てきているイベントを手本に、自分たちでフレームから作った自転車で、タイムだけでなく自転車作りの腕を競うというもの。公式ホームページにも「自転車の製造販売に携わる者に切嵯琢磨する場を提供し、自転車に関わる技術の発展を促進させることを目指しています」とある。6月16日に、長野県高山村でダート16kmを含む、75kmで行われるハンドメイド自転車イベントにも注目だ。

 静岡のスポーツ車専門店「バイシクルわたなべ」はオリジナルブランド「KAHAKU(琥珀)」を展示。流行を取り入れながらおしゃれにまとめたグラベルロードやシクロクロス車は注目されていた。

「バイシクルわたなべ」のオリジナルブランド「KAHAKU(琥珀)」のグラベルロード Photo: Kenta SAWANO
オレンジをテーマカラーにエンド部分のカラーリングも見事 Photo: Kenta SAWANO
クリスキングのヘッドパーツも含めオレンジでまとめたヘッド部分 Photo: Kenta SAWANO 

 オフロードを楽しめそうなバイクも数多く出展された。「YANAGI CYCLE」(ヤナギサイクル)を手がける飯泉康一さんは「遊び道具として乗って楽しい自転車」をモットーにする。後ろ三角を詰めた「QUIET」は、自ら房総半島のグラベルを楽しめるようなバイクとして作られたという。ロードバイクのようなクイックさを持ちながら、フロントにもちょっとした荷物を積め、ライトツーリングに出かけたくなる雰囲気を持った1台だ。

柳サイクルの飯泉康一さんが手がけた「QUIET」 Photo: Kenta SAWANO 
錆びたように見える塗装も見事な「Equilibrium cycle works」の「ブルタリスト」 Photo: Kenta SAWANO

 ラトビア出身のウラジミール・ボラホブスキーさんが手掛ける人気ブランド「Equilibrium cycle works」(エクイリブリウム・サイクルワークス)はステンレスカスタムロードやストックモデルの「ブルタリスト」を展示。錆びたように見える展示も来場者の目を引いていた。来場者の質問に丁寧に日本語で応えるボラホブスキーさんの姿勢も印象的だった。

「Equilibrium cycle works」のステンレスカスタムロード Photo: Kenta SAWANO
真剣に話し込む「Equilibrium cycle works」のウラジミール・ボラホブスキーさん(右から2人目) Photo: Kenta SAWANO

 新進気鋭ブランドだけでなく、伝統的なブランドも革新を忘れていない。カーボンフレームの世界的先駆者「アマンダ」は、最外層に“世界初”ともいえる四軸織物のカーボンを巻いた「イタリアンカット8630」と同様なフレームの「CFモールデット」の2台を展示。これまでの縦横に編んだ「二軸」に加え、繊維を斜めにも編んだ「四軸」のカーボンを使うことで、破壊安全性を高めつつ、見た目の美しさを実現した。今年79歳を迎える世界的ビルダーは最先端を走り続ける。

アマンダの「イタリアンカット8630」 Photo: Kenta SAWANO
日本でも有名になってきたBIXXIS Photo: Kenta SAWANO 
ドリアーノ・デローザ氏のトークショー Photo: Kenta SAWANO

 海外ブランドも人気を集めた。2015年に生まれた「BIXXIS」を手がけるドリアーノ・デローザ氏が出展のために初来日。展示とともにトークショーも行った。これまで日本のショールームからテレビ電話を通じてオーダーできるシステムをとっていたが、直接人気ビルダーの話を聞けるというだけあって、会場は立ち見が出るほどの人気だった。

あぶくま自転車工房のブルべ用バイク Photo: Kenta SAWANO 
あぶくま自転車工房が出がけたTTバイク Photo: Kenta SAWANO 

 トークショーのほかにも、有名ビルダーによるヤスリがけの指導や、フレームビルドのための手順の展示も行われ、それぞれに数多くの人が集まった。新素材や、新しいパーツが続々と生まれる一方で、スチールフレームを大事に長く乗るという動きも、より大きくなっているように感じた。

エンメアッカのトップチューブが2本になったモデル Photo: Kenta SAWANO
歴史ある「ワタナベ」のフレーム Photo: Kenta SAWANO

 自転車文化センターの担当者は「過去最高の3233名の来場者が訪れ、3年連続して3000名を上回るなど、自転車愛好家のみならず、一般ユーザーからオーダーメイド自転車が周知されつつあるのではないかと分析しています。近年では、若手ビルダーの出展も増え、斬新で独創的な自転車やパーツを見て、お客様からの評判も良い。今後も、見て、話して、体験出来るハンドメイドバイシクル展ならではの企画、展示を実施していきたい」と意欲を見せた。

Tomo's worksの友廣睦さんが娘さんのために作ったキックバイクPhoto: Kenta SAWANO
Tomo's works
が管洋介氏のために作ったカスタムロード。80年代の香りを色濃く残すPhoto: Kenta SAWANO

 全体的に新しいブランドも増えたが、フレームビルダーの高齢化も進んでいる印象も見受けられた。世代交代もあり、いつまでブランドが続くか不明の部分も多い。日本が世界に誇れるハンドメイド自転車に触れたことがない方は是非、来年度に見に行って欲しい。そして気に入ったブランドがあれば対話し、オーダーしてみて欲しい。日本の自転車文化を守るためにも。

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