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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<24>自転車旅最大のリスクは交通事故 各国のクルマ事情と自己防衛策

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 自転車旅にはさまざまなリスクがつきまとう。強盗やグリズリーなどの野生動物に襲われるリスク…。しかし、それらよりも断然気を付けなければならないのが交通事故だ。幸い、僕は交通事故には遭わなかったが、ひやりとした経験は数知れず。完全に巻き込まれたと思うほど、トラックがすぐ傍をギリギリで通り抜けたこともあった。なかでも世界で一番自転車に対する交通マナーが最悪だと感じた国は、アフリカのタンザニアだった。

アルメニアの首都エレバンを走行中。交通量は激しいが、自転車に対するマナーはとても優しい Photo: Gaku HIRUMA

車に見つけてもらうためのライト

 タンザニアでは、対向車がいないにも関わらず少しも避けて通ってくれない。僕の前を自転車で走っていた初老のタンザニア人がトラックに煽られ、段差になっているアスファルトの切れ目から落ち、転倒した。僕はてっきりトラックに悪態でもつくのかと思ったが、その男性は僕の方を見て「仕方ないな」という風にはにかんだ。恐らくそれくらい日常茶飯事なのだろう。

 逆に、車同士ではけたたましくクラクションを鳴らし合っている国なのに、自転車にはとても優しい配慮をしてくれるのがアルメニアだった。首都エレバンに入っていく際は例にもれずものすごい交通量だったが、全然ストレスなく走れたことは驚きだった。

 サイクリストの方から交通事故に遭わないようにする工夫は本当に微々たるものだが、するとしないでは大きな違いだと思う。

 まず、車に見つけてもらうためのライトだ。日本でも無灯火で走る人は一昔前よりだいぶ少なくなったが、リアは反射板だけでテールライトを付けている人は圧倒的に少ない。旅の世界ではフロントライトよりテールライトの方が圧倒的に大事だ。車からいかに発見してもらえるかを考える。僕は自転車本体に取り付けたテールライトのほかに、ヘルメットにもつけていた。

荷物に蛍光ベストを括り付けて、目立つようにする Photo: Gaku HIRUMA

 さらに蛍光ベストを着たり、その蛍光ベストをリアの荷物をすっぽりと覆うように括り付けたり、車から見て目立つように工夫していた。基本的に夜は走らなかったけれど、朝の薄暗いうちに出発することが日常だったので、それらは弱々しいテールライトよりもよっぽど効果的に目立ってくれた。

 見通しの悪い濃霧の走行や、路肩のないトンネルは本当に恐怖だった。自転車で走行するのはもちろん恐怖だが、逆の立場になって僕が車のドライバーで、トンネル内で突然目の前に大きな荷物を付けた自転車が現れたらと思うと本当に恐ろしい。

後方は振り返らずにミラーで

 そして交通事故対策で最も役に立ったのがミラーだ。荷物を積んでいない自転車なら、後ろをチラッと振り返り後方の確認することは容易だが、荷物を大量に積んだ自転車ではその行為がふらつきに繋がり、とても危険だった。そこでとった手段がミラーを付けることだった。

 「ゴーッ」と轟音を立てて後方から近づいてくる車やトラックに、いつ抜かされるのか分からないままずっと身構えているのは体力だけではなく精神的にもきつい。ミラーを付けたことによって、抜かされる瞬間に風圧で巻き込まれないようにしっかりとハンドルバーを握るだけで済むようになったので、これは本当に重宝した。

アフリカのマラウィで横転したタンクローリー。長い下り坂だったのでブレーキが故障したのか。トラックのバーストやブレーキの故障は本当に頻繁に目にしたので、不穏な動作や音がしたらすぐに非難が必要だ Photo: Gaku HIRUMA

 初めは自転車のハンドルバーに取り付けるミラーを使っており、とても見やすく気に入っていたが、自転車を立てかける際に邪魔だったり、自転車が倒れた時に折れてしまうことがしばしばあったので、最終的にはヘルメットに付けるミラーに変更した。自転車に付けるミラーよりも、視線の移動が少なく後方確認できたのと、なにより自転車に付けなくていいので、スタイリッシュだった。

日本で効果バツグンの“プレート”

 そして世界一周の最後に走ったのが、交通マナーが良いとされる日本。確かに世界から見たらそうだろうけど、だからといって走りやすかったかといえばそうではない。車道と歩道がこれほどまでに明確に分かれているのも、世界では本当に珍しかった。

広い道幅に路肩もあるので、運転が荒くても恐怖を感じることは意外に少ない Photo: Gaku HIRUMA

 歩行者を守るという観点から、これを批判するつもりは毛頭ないが、世界では車道と歩道は白線のみで区切られていたので、いざという時はすぐに歩道に避難できた。しかし日本では車道と歩道の境にブロックがあるため、ギリギリを抜けられても避難する場所がなくヒヤッとすることが多かった。

 交通事故対策で始めたことではないが、結果的に安全性が高まったことがある。日本に入ってコミュニケーションの量が減っているなぁと感じたので、自転車のリアに「2009年アラスカより60カ国57000km世界一周中。神奈川へ帰宅中」というプレートを付けた。

コミュニケーション対策で始めたプレートだけど、思いがけず交通事故対策に一役買っていた Photo: Gaku HIRUMA

 プレートを付ける前はコンビニなどの休憩中でもほとんど声を掛けられなかったが、世界一周しているとわかると多くの人に声を掛けてもらえた。

 さらに思いがけず、これが交通事故対策に一役買っていた。荷物満載の自転車のプレートに文字が書いていると、車は文字を読むためスピード落とす。読んでもらったら「頑張っているんだな」と間隔を空けて避けてくれた車がほとんどだった。特に日本のような道幅が狭い国では、かなり有効な手段だと思った。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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