一周100kmの旅で見えてきたもの魅力は絶景とグルメだけではない、知ると心震える「サイクリング屋久島」のスゴさ

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 世界自然遺産に登録されている鹿児島県の屋久島を舞台に2月17日に行われた「サイクリング屋久島」。20km、50km、100kmと3コースあるうち、編集部では島を反時計回りに1周する100kmコースに参加。絶景やグルメもよかったが、何よりも心に残ったのは島民の“おもてなし”だった。サイクリング屋久島の魅力をリポートするとともに、最後に前日イベントのヒルクライムの模様もお伝えしたい。

白砂が何百メートルにも広がる「永田いなか浜」 Photo: Masahiro OSAWA

「サイクリング屋久島」の最大の魅力

 サイクリングイベントの魅力は何だろうか。すぐに思いつくのは、自然が織りなす絶景、エイドステーション(以下、エイド)で味わう地元のグルメといったところだろうか。そのいずれもがサイクリング屋久島にはある。

一斉にスタートする参加者 Photo: Shinji TOGARI
特徴的なシルエットの「モッチョム岳」 Photo: Masahiro OSAWA

 手つかずの自然が残る屋久島には、特筆すべき景色が多数出現する。スタート地点から見える急峻な「モッチョム岳」。特徴的な山のシルエットは、改めて遠くの地に来たのだと、旅情を覚える。何百メートルにも渡って白砂が広がる「永田いなか浜」、高低差88mの「大川の滝」は、見た瞬間に心にグッとくる。ほかにも、名もない場所にも、何度も絶景が現れる。

名もなき場所にも絶景が広がる Photo: Masahiro OSAWA
落差88mの「大川の滝」もコース脇にある絶景 Photo: Masahiro OSAWA
ヤクザルの群れを横目に走る参加者 Photo: Masahiro OSAWA

 世界自然遺産の登録地域にもなっている「西部林道」は印象的なエリアだ。全長約20kmに及ぶ西部林道は、人気のない森が広がり、路上で毛づくろいをするヤクザルの群れが3度にわたって姿を見せてくれた。

 地元グルメもエイドで味わった。ヨモギを練り込んだ団子をかからの葉で巻いた「かからん団子」や、みかんに酷似した柑橘類のフルーツ「たんかん」は、口の中に酸味が広がっていく情熱的な味だった。ほかにも、たんかんを用いたスイーツのほか、トビウオのつけ揚げ、鯖などがあった。

ヨモギを練り込んだ餡子入りの団子に、かからの葉を巻いた「かからん団子」 Photo: Masahiro OSAWA
至るところで提供されていた屋久島名物の「たんかん」 Photo: Masahiro OSAWA

応援がハンパない

 絶景とグルメを堪能するのもいいが、イベントの最大の魅力は別にある。島民の“おもてなし”だ。

ゲストとして登場した安田大サーカスの団長安田さん(右上)がモデルの福田萌子さん(左上)、サポートライダーの鹿屋体育大学自転車部とともに「頑張るぞ」と声をかけ意気込んだ。福田さんはプライベートでの出場だとか Photo: Shinji TOGARI

 2月17日の午前7時30分。開会式を終え、日の出からほどなく参加者が順々にスタート。走り出すと、朝早くから、沿道からの声援がハンパないことに気づく。集落を通るたびに多数の島民が沿道で応援してくれる。

 「頑張ってー」と声をかけてもらうだけではなく、楽器を鳴らしてリズムに合わせて応援してくれたりと方法は様々。中には手招きをする人たちも。招かれていくと「これ持って行って」とたんかんを手渡された。スタートから30分足らずで、筆者のリュックにはたんかん3つとたんかんジュース1本が詰まっていた。ずっしりとした、おもてなしの心を背中に乗せて完走を目指すこととなった。

朝早くからたくさんの人が応援してくれる Photo: Shinji TOGARI
立ち止まったらたんかんジュースをいただいた。写真は市橋農園のみなさん Photo: Masahiro OSAWA

エイドの数は4つではなかったのか?

 島を一周して何よりも驚いたのは、エイドステーションである。コースを走行中、筆者はエイドの数が合わないことに気づいた。エイドは本来4つのはず。しかし、100kmを走るなかで7つも存在していたのだ。

 差し引き3つは何か。それは島民による「私設エイド」である。そこでは豚汁、たんかん、せんべいなどの菓子類ほか、飲み物などなどを振舞ってくれた。うち2つに確認したところ、参加者に提供したものは各自の持ち出しだという。結構なお金をかけてまでエイドを出すことが不思議でならなかった。なぜエイドを出すのか。

オフィシャルのエイドかと思ったら私設エイド。規模が大きい! おもてなしの心で出来上がったオアシスである Photo: Masahiro OSAWA
こちらも私設エイドを出していただいたデイビス・聖子さん。ご主人もイベントに出走していたという Photo: Masahiro OSAWA

 ある私設エイドの代表者に話を聞くいところ「おもてなしの心ですよ」と答えてくれた。それ以上でも以下でもないという。感激した筆者は「是非お名前を」と願ったが、「名乗るほどの者ではありません」とやんわりと返された。もてなしの心に見返りは必要ない、というわけだ。

永伸商事のみなさん。左から二番目が同社代表の山本伸次氏 Photo: Masahiro OSAWA

 おもてなしに感銘を受けたのは、筆者だけではない。途中、話を伺った山本伸次さんも魅了された人の一人だ。「5、6年前からリピートしてイベントに参加していますが、おもてなしがすごいですね」話す。そんな山本さんはサイクリング屋久島にも協賛する永伸商事の代表だ。

 もう一人のコメントも記しておきたい。特別協賛する屋久島電工の下泉学社長は「屋久島の人はフレンドリー。和気あいあいとしている。都会の人たちが忘れてしまった古き良き日本が残っている」と語る。筆者は見返りを求めない“おもてなし”を不思議に思ったが、逆に島民にとっては筆者の存在のほうが不思議なのかもしれない。

もてなしのスケールが島全体

 完走後、こうした感動を大会実行委員長の内田正喜氏に伝えると、次のようなことを教えてくれた。コース上の立哨員、エイドで特産品を振舞ってくれた人たち。彼らはみんなボランティアだ。沿道の応援も、本番2日前から防災無線を通じて各集落で通知し、応援をお願いしているという。他のイベントでも多数のボランティアの協力によって成り立っているが、サイクリング屋久島は島全体で協力している感が強かった。

屋久島電工とヤクデン商事のみなさん  Photo: Masahiro OSAWA

 先の屋久島電工も会社を挙げてイベントの盛り上げに一役買っていた。イベントには、子会社のヤクデン商事を含めて、島内在住の従業員約40人がサイクリング屋久島に参加。総従業員数の約7分の1がエントリーしていることになる。多くの島民の思いが詰まったイベントなのだ。

ヒルクライムで屋久島の別の側面を知る

 最後に前日(2月16日)開催のヒルクライムイベントにも触れておきたい。コースは約7.9km、標高差は583m、平均勾配は6.9%。イベント当日は生憎の雨だったが、この日の天気は屋久島のリアルな姿だったとも言える。

雨にもかかわらず昨年並みの参加者が集まった Photo: Masahiro OSAWA

 屋久島は“月に35日雨が降る”と言われるほど雨が多い。特に島中央の山岳地帯が雨雲を受け止めるため、北部では雨が降り気温が低いことが多く、南部は比較的温暖でこの日も晴れていたという。ヒルクライムの行われた北部で雨というのは、屋久島にとっては、通常営業だったわけだ。

 それでもヒルクライムには多数の参加者が集まった。スタートから降り続く雨にも負けず、上った参加者たち。ゴール地点の白谷雲水峡では、熱々のぜんざいと用意されたストーブの周りに人が集まり、暖をとる姿が印象的だった。

数人ずつ出走していくウェーブ方式でスタート Photo: Masahiro OSAWA
熱々のぜんざいがありがたい Photo: Masahiro OSAWA
思わずストーブに集まってしまう参加者たち Photo: Masahiro OSAWA

 「亜熱帯はどこへ?」というのが何も知らなかった筆者の本音。しかし、これこそが屋久島の真の姿だ。標高の高い地点では雪も降り、亜寒帯植物が生息する。ヒルクライムイベントに出場することで、亜熱帯のイメージとはかけ離れた屋久島の姿をみることができる。運よく晴れていれば、コース途中には開けた場所があり、絶景を拝めるはずだ。メインイベントだけではわからない屋久島の側面を知ることができるだろう。

ヒルクライムレースで優勝した早川友里さん。ロードバイクは5年目。ヒルクライムには2-3年前から目覚めたという。淡々と努力しながら上っていくのが性に合っていたとか Photo: Tomoko HIGASHIYAMA

 ちなみに、今回の勝者はなんと女性。早川友里さんだ。「正直優勝するとは思っていませんでした。非常に気温が低かったので、スタート後500mで足を攣ってしまいましたが、なんとか立て直せました」と話す早川さん。かつては卒業旅行で屋久島を一周したこともあるといい、思い出の地に、また素敵な思い出が加わったようだ。

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