GIANT JAPAN中谷亮太さんの参加リポート“コマ図”の先に広がる冒険 「ドア・オブ・アドベンチャー ラリー・クランキング2nd」挑戦記

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 千葉県富津市で2月10日、自転車イベント「Door of Adventure Rally Cranking 2nd」(ドア・オブ・アドベンチャー ラリー・クランキング・セカンド)が開催されました。モータースポーツのラリー競技を模した、新感覚のサイクルイベントで気になった読者も多いはずです。第2回大会となった今回、GIANT JAPAN勤務の中谷亮太さんが、参加者の目線からリポートします。

晴れて完走! 相棒とのゴールを喜ぶ Photo: Kenji Okubo(DOA)

オフロード込みで130km走るイベント

 ラリー・クランキング(以下RC)という耳慣れないイベントを知ったのは、この
「Cyclist」に掲載されたイベント告知だった。この催しを簡単に言うと「簡易地図を読み、オフロード込みの130kmを走破するイベント」だ。

写真は第一回松野四万十バイクレース Photo: Ryota Nakatani

 ルールは「コマ図」と呼ばれる簡易地図を解読しつつ、自らルートを開拓するという斬新なもの。大会サイトの記事をよく読むと、第1回目の完走者はわずか1人のみで、非常に過酷なイベントであることが分かった。

 過去にSDA王滝、松野四万十バイクレースに参加していたことから、XCマラソンに関する経験と自信があった。何より、完走率の低さがチャレンジ精神を刺激し、エントリーを決心させた。

ラリーの楽しさを自転車で再現

 このイベントは主催者によると、どうやらモータースポーツ競技であるラリー(ダカール・ラリーなどが有名)を自転車で楽しめるようにアレンジしたイベントらしい。ルールもかなり特徴的で、イベント中、コース上に立哨員や誘導サインは一切無く、当日に渡される「コマ図」のみを頼りに進まなければならない。コマ図を間違えるとコースから外れ、自力で元のコースまで戻らなければならず、フィジカルだけではなく、ライダーのコマ図解読力・意思決定力・方向感覚がカギを握る。

公式HPでは、コマ図の読み方が解説される © Door Of Adventure

 また、自転車であれば、種類を問わない点も面白い。RCは全行程130kmのうち、3分の1がオフロードで構成される。当然マウンテンバイク(MTB)が必須かと思いきや、ロードバイクやシクロクロス車、果てはE-BIKEでも参加可能だ。当日は偶然にもミヤタのE-MTBを1台発見した。

ツーリング車やロードバイクで参加する猛者も Photo: Kenji Okubo(DOA)
ロール式のコマ図をハンドルに取り付けた参加者 Photo: Kenji Okubo(DOA)

 当日もMTBを筆頭に、シクロクロスやファットバイク、ランドナー、グラベルロードなど、個性溢れるバイクが勢揃い。各々自作のコマ図ホルダー(後述)を装備し、いかにも冒険心みなぎるカスタムが施されている。

ハードテイルMTBの比率が高かった Photo: Kenji Okubo(DOA)
GIANT 「XTC ADVANCED」 Photo: Ryota Nakatani

 筆者は、GIANT(ジャイアント)のハードテイルXCバイク「XTC ADVANCED」を選択。元々完成車で27.5+セミファット仕様を、29インチホイールと100mmストロークフォークに換装した。またRCの独自装備として、走りながらコマ図を読む専用ホルダーが欠かせない。市販していないため、100円ショップで購入したA5バインダーで自作してみた。

自前のコマ図ホルダー。100円ショップのバインダーを改造 Photo: Ryota Nakatani
メイタンの2Run、電解質パウダーはマストアイテム Photo: Ryota Nakatani

 補給は使い慣れたものを1300kcalほど準備。加えて、計4つのチェックポイント(CP)で受け取れる、自前の補給バッグも別で用意した。

肝心のコースは?

 コースは富津から鴨川を往復する130km。大会HPで公開された高低図以外に、具体的なルート情報は無い。コマ図だけを読んでも、一見してルートの全容を把握することはできない仕組みになっている。富津市の宿泊施設「ハーバー津浜」を起点に、約70km先の安房鴨川駅で折り返す。アップダウンの連続だが、「最大でも標高300m程度」と考えていたが、正直、甘く見ていたことを後で思い知る。

唯一公開された高低図 ©Door Of Adventure
CPは計4つ、72km地点で折り返し ©Door Of Adventure

スタートに向けての準備

 大会当日の朝は午前2時30分に自宅を出発。アクアラインを越えて午前3時40分にハーバー津浜に到着した。会場ではエントリーを済ませたのち、コマ図を入手。バイクの取り付けと車検を実施する。

コマ図、バイクゼッケン、リストバンドを受け取る Photo: Ryota Nakatani
スタート/ゴール/CPで読み込むQRコード  Photo: Ryota Nakatani

 参加者はイベント中、コマ図に加えて、各ポイントに掲示されたQRコードを読み込む必要がある。グーグルフォームが立ち上げて、ゼッケン番号・名前・走行距離を送信。各CPの通過に合わせ、フォーム送信をもって進行具合を報告するシステムだ。

コマ図の読み方に苦戦した:スタート→CP1

 太陽の昇らぬ5時6分から、1分おきに2人のスターターがコースへと繰り出していく。筆者はゼッケンが20番なので、真ん中辺りでコールを受け待機。その後、GIANTのサイクルコンピューター「NEOS TRACK」(ネオストラック)をオンにして、いざスタート。コンピューターは表示項目をカスタムし、走行距離、経過時間、ラップ距離、走行速度のみを映し出す。余分な情報は省き、ライドに集中する狙いだ。

ヘッドライトをオンにしていざスタート! Photo: Kenji Okubo(DOA)

 走り始めて約1km、最初のコマにぶち当たるが指示された手前で右折。いきなりのコースミスだが、あたりは暗闇に包まれているため暫く気が付かなかった。

 幸いにも一緒にスタートした方が「こっちじゃないですか?」と声を掛けてくれたため、正しい道を走る人たちの明かりを目印にしながら、何とか合流。序盤から撃沈する寸前であった。

舗装、ダート、トンネルとめまぐるしく変わる風景を進む Photo: Ryota Nakatani

 そうこうして走っているうち、徐々にコマ図の読み方が分かってきた。理解が進むほど、コマ図通りの地形やオブジェクトを発見するたびに余裕が生まれてくる。

 スタート6kmほどで最初のダートに突入したが、暗闇だが広いダブルトラックで走りやすい。ヘッドライトの灯りを頼りに、未開の道を上っていく。

竹やぶのシングルトラックもコースに Photo: Kenji Okubo(DOA) 

 次第にシングルトラックに変化し、両側は崖の一本道が登場。さらに前日の雪でウエットな路面は粘土質に変化し、押し歩きと担ぎが頻発する。

 ノブの低いドライ系タイヤでは、フルブレーキでもノブが噛まず全く止まる事ができないほどのマッドトレイル。お尻を引き後輪を滑らせ、慎重に下る。倒木、枝の吹き溜まり、バイクを崖下に投げ落とす区間が次々に現れ、アドベンチャー感は序盤から最高潮だ。

 泥まみれの身体で、電気柵が張り巡らされた田んぼ地帯に降り立った。ここでもしばし迷子になり、どう見ても先は行き止まり。他のライダーさんたちと合流して、1つ前のコマ図に戻ると、ああこっちかとルート発見。この先でもコースミスしたが、民家の行き止まりで事なきを得る。

舗装路の激坂、頂上付近には鳥居が! Photo: Ryota Nakatani

 その先は地元民しか通らないような、交通量の少ない裏道を走り続ける。橋の上はアイスバーン状態、凍結防止剤の塩カルがあちこちに撒かれていた。

 舗装激坂を乗り越えるとダートダウンヒルに突入。道中ではイノシシやシカにすれ違う。千葉は標高300m以下の低山が多いが、こんなに身近に野生の息吹を感じられるとは思いもしなかった。めまぐるしく変わるコースを抜け、40kmほどで1つ目のCPに到着した。

劇坂とスノートレイル:CP1→CP2

 CP1でQRコードを読み、走行距離を送信。自前の補給(アミノバイタルゼリー)を受け取り、手持ちの2Runとともに流しこむ(ちなみにCPには、水とお菓子が大会側から用意されていた)。滞在時間は4分程度、このペースでは制限時間ギリギリかと先を急ぐ。既にコースミスを3回ほどしてしまい、焦りを隠せないが、無情な激坂が時間を奪っていく。

直後にダートの激坂。濡れた路面は押し歩きでもスリップする Photo: Ryota Nakatani

 その先は、前日の雪が残るスノートレイル。枝に残った雪が、風に舞って輝く幻想的な光景が続く。マッドな林道から一転、スノーライドはスリリングで楽しい!息は白いが、適度なアップダウンで身体が冷えることは無い。
 
先の林道には水たまり、深く掘れた轍が時折現れる。慎重にラインを選び、スリップしないように、脚に水をかぶらないように注意深く進む。簡易舗装と林道を繰り返す中、そのほとんどは上りか下り。時折現れるフラットな路面で、走りながらWin Zone(ウィンゾーン)ジェルを摂取する。人間1人分の幅しかない、押し歩きで降りるスリリングな場面もあった。

薄く積もった雪上はグリップがきき、走りやすい Photo: Ryota Nakatani
CP2で一休み Photo: Ryota Nakatani

 距離にして17kmほど、最初よりもあっさりとCP2に到着。QRコードの読み込みと補給を済ませると、どうやら先頭らしいことが分かった。スノートレイルで1人パスしたので、まさかのトップに躍り出る!

立ちはだかる4mのがけ崩れ:CP2→TNP

 CP2から先は舗装路の下りをかっ飛ばした。アイスバーン上で後輪を滑らせつつ、ダートで落ちる走行速度を、下りと舗装で挽回するが、コマ図の右折個所がいつまでも出てこない。ここで4度目のコースミスを悟る。1.5kmほど余計に下ってしまい、戻って上り直してなんとかルートを発見。危うく下り続ける寸前で、思わずヒヤリとしたものが流れる。

高さ4m近い崩落を担ぎ上げる Photo: Ryota Nakatani

 引き続きスノートレイルが続く矢先、高さ4mほどのがけ崩れが突如立ちはだかる。しかし、コマ図は間違っていないし、分岐も無かった。これを越えるのか!?そんな疑いとともにバイクを担ぎ上げると、先行者の轍を発見。

 この崖崩れをコマ図に書かない辺り、ハプニングなのかサプライズ演出なのか。コースミスで逆転されたものの、順位は気にしない。道中ジムニーの集団とすれ違いながら、無事林道を突破し国道が見えてくる。北からの追い風を受け、29インチタイヤの転がり性能を遺憾なく発揮、33km/hほどで巡航する。ターニングポイント(TNP)の安房鴨川駅へと、2番手でたどり着いた。

向かい風と激坂:TNP→CP3

 事前のコース図によると、TNPから先はしばらく同じ道を戻るようだ。いま来たばかりの道を引き返すが、今度は向かい風。身体は冷え、ペースがガタ落ちするが気合で耐える。

 林道へ戻ると、同じ道でも往路と全然違って感じる。こぶし大の石が転がる濡れたダートを、ラインを読みながら上り続ける。コースの性質上、オールマウンテン系MTBでも十分楽しめるだろう。しかし、こうも上りが多いとなれば、軽さで勝るXCバイクが有利だ。

 ダートの後もアップダウンは続き、激坂を繰り返すこと4度、いや5度?フロント34T・リア50Tのギヤ比を目一杯使い、さらにフォークのロックアウトを効かせ、ダンシングを織り交ぜなんとか登り切る。往路では感じなかった斜度のキツさに苦戦する。CP3へと到着し(CP2と同じ場所)、QRコードを読み込み。この時点で走行距離90kmほど、全体の3分の2を消化し胸を撫で下ろす。これ以上コースミスはできないと、カフェイン入りのジェルを補給し、集中力を呼び戻す。

 林道を引き返す途中、数名のライダーとすれ違ってはエールを送り合う。すでにギブアップを決めたライダーも、笑顔で手を振ってくれて勇気が湧いてくる。

一瞬たりとも油断できない:CP3→CP4

 序盤のコースロストから、コンピューターの距離とコマ図が一致しないでいた。数字は参考程度に、地形図を頼りに進むしかない。先ほど通った雪の広場は、すっかり溶けて別の景色に。道中はコマ図にはない分岐が時折あるため、一瞬たりとも油断できない。

かわいい犬? Photo: Ryota Nakatani
「犬イラスト かわいい」の表記 Photo: Ryota Nakatani

 一度通ったので見覚えのある道が続くが、あるポイントから新コースに逸れていく。完全に同じルートの往復ではなく、ここから先は何が起こるか分からない。参考までにコマ図には犬の看板とあるが、実物は何とも言えない形状だ。しかし、何気ない路上のオブジェクトが大事なヒントになる。

 以前別用で訪れた見覚えのある景色を横道に逸れて再びダート。もう何度目か分からない舗装の激坂の先に、CP4を発見。ここまでくればあと少し! 最後の補給を流し込んで、完走を目指す。

痛恨のコースミス:CP4→ゴール

 完全に一人旅となり、黙々と進む。もはや、自分以外誰もいない道が延々と続く。集落を縫う裏道、畑の脇から続くシングルトラック、ぬかるんだの激しい下り、行く手に横たわる木の根。もはや、ちょっとした悪路では驚かない。一日であらゆるオフロードをコンプリートした気分だ。

序盤のトレイルと違い、岩石質な路面 Photo: Ryota Nakatani

 幹線道路に合流し、館山道のインターが見えたその時。ここで、疲労と数値の読み違いから、致命的な5度目のコースミスを犯してしまう。コマ図を読んでも、あるべきオブジェクトが見当たらず、完全に迷子になってしまった。コマ図の言う「青い桶」はそこら中にあるし、そもそもこの十字路なんて見当たらない。でも戻るには遠くに来すぎてしまった。ここまで順調だった分、余計に不安が大きくなる。一旦戻るか、迷子のまま進むか、途方に暮れる。

コマ図を参考にしながら進む。東京湾の夕日に安堵する Photo: Ryota Nakatani

 そんな時、同じコマで迷子になったライダー2人と遭遇、妙な連帯感が生まれる。ひとまず、正しいコマは近いと感じ一安心。ついに、ひとつ前のコマと同じ風景を見つけ出し、奇跡的にリカバリーに成功した。再びコースをなぞるが、大幅にタイムロスを喫する。住宅街を抜けた先に、最後の林道が待ち構えていた。

自然とガッツポーズ Photo: Ryota Nakatani
晴れて完走! Photo: Ryota Nakatani

 こぶし大の岩が転がりテクニカルではあるが、ダブルトラックで斜度はキツくなく、かつドライな路面で走りやすい。途中に断層の壁がそびえ立ち、自然の創りだした模様が目に楽しいルートだった。

夕日を浴びながらゴール! 思わずガッツポーズが出た Photo: Kenji Okubo(DOA) 

 ダートのワインディングを下った先、いよいよコマ図最後のページをめくる。東京湾の夕日が見え、これまでの悪戦苦闘をしばし忘れる。最後のコマを通過し、ゴールまでラストスパート!

 走行距離はコースロスも含めて145km、獲得標高は3300m、10時間半ものライドを終え、制限時間内にハーバー津浜へと生還した。

完走を果たして:冒険心への回帰

 サイクリストなら誰しも、初めて通る道に一喜一憂した経験があるだろう。思いがけないルートを開拓したり、はたまた道に迷ったりと。RCは、サイクリングの原点である「道との遭遇」を、120%味わえるイベントだ。

 とはいえ、簡単に完走できる生易しいイベントでは、決してない。制限時間はシビアで、トラブルは全て自己責任で、何よりコースがキツい。今回は雪で一部マッドコンディションに、かつ終日気温一桁と厳しさが増した。12時間は余裕に見えて、あっという間に感じたほどだ。(※路面を考慮して制限時間が30分延長されたが、タイムオーバー者が続出。それでも皆楽しそうに見えた)

土にまみれたチェーン、過酷なライドを物語る Photo: Ryota Nakatani

 ライダーはトラブルへの対応力、オフロードライドのスキル、激坂をいくつも越えるフィジカルに加えて、RCの醍醐味でもある「コマ図を読む方向感覚」、そして自分を信じて道を突き進む、意志の強さが欠かせない。

 おもてなしに溢れた、ツーリズム感満載のロングライドイベントも、確かに楽しい。その対極に位置するRCは、完走困難なほどの不便を強いられる分だけ、達成感はすさまじいイベントだった。コマ図通りに進む快感、思いがけない道との遭遇は、RCでしか味わえない特別なものだ。

 次回の開催は未定だが、平凡なサイクルイベントに飽きてしまったライダーにとって、思いがけない刺激になるはずだ。あなたもぜひ、冒険の扉を開いてみてはいかがだろうか?

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