観戦だけでも楽しめるイベント待ち受けていたのは予期せぬ感動、都内唯一のシクロクロスレース「稲城クロス」を見てきた

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 東京・稲城市の多摩川河川敷を舞台に、昨年9月に誕生したシクロクロスのレースイベント「稲城クロス」の第2回大会が2月11日に開催された。「自転車のまち」を標榜する東京・稲城市のシンボリックな大会であり、都内で開催される唯一のシクロクロスレースとなる。都内在住者なら輪行でラクラク会場入りができる希少な大会だ。注目のイベントに行ってみると、予期せぬ感動が待っていた。

稲城クロスでは数々のドラマが誕生。写真は会場を大いに盛り上げたオープンレース。競り合う安藤光平選手(左)と上野悠佑太選手(右) Photo: Masahiro OSAWA

裾野拡大を目指した大会

 稲城クロスはシクロクロッサーの本気の戦いが観られるレースイベントだ。日本シクロクロス競技主催者協会(AJOCC)に組み込まれた大会であり、カテゴリー別のレースで上位入賞すれば、AJOCCの規則にのっとって、次戦からは上位のカテゴリーに参戦できる。シクロクロッサーがよく口にする「昇格」(上位のカテゴリーに行くこと)をかけた戦いが繰り広げられる。

昇格をかけた戦いが始まる。写真はC4カテゴリーのスタート前 Photo: Masahiro OSAWA

 ただし、他のAJOCCのレースとは趣向が変わっている。AJOCCの大会ならどのイベントでも行われる最上位クラスのカテゴリー1、中級クラスのカテゴリー2など、一部のカテゴリーレースが存在しない。大会をオーガナイズするチャンピオンシステムジャパンの棈木亮二代表は「シクロクロスの裾野を拡大させたかった」と、カテゴリーを絞った理由を語るが、その分、企画レースなどが用意されており、競技者だけではなく、通りがかりの人でもシクロクロスの面白さを味わえるのが稲城クロスだ。

稲城市に連呼した「横山コール」

MCを務めた安田大サーカスの団長安田さん(左)と小俣雄風太さん(右) Photo: Masahiro OSAWA

 稲城クロスの魅力としてまず挙げたいのはMCだ。シクロクロスのコースはロードレースに比べて圧倒的にコンパクトであり、高台に上れば、レース展開が見えてしまう。それがこの競技の魅力だったりする。その魅力を引き出すのがMCの役割だ。

 稲城クロスでは安田大サーカスの団長安田さんと、スポーツ動画コンテンツ配信サービスの「DAZN」(ダゾーン)でサイクルロードレースの実況を行う小俣雄風太さんがMCを担当。小俣さんがレースを実況し、団長安田さんが実況にのせて笑いばかりか感動も生み出してくれた。

 特にマスターズクラスのレースは印象深い。トップを独走していた横山健太郎選手(竹芝サイクルクロスレーシング)が、スタートしてから安定的な走りを見せ、階段セクションをクリアし、残る1周をこなせば優勝だった。本人にも“勝利”が見えていたはずだが、階段を上り切ったところでアクシデントが発生。その後、横山選手は遅れに遅れ、コース上に残る最終走者としてゴールを目指した。

アクシデントを捉えた瞬間。横山健太郎さん(写真中央)からも周囲からも「やっちゃったね」感が伝わってくる Photo: Masahiro OSAWA
敢闘賞として表彰された横山健太郎さん(右)と団長安田さん Photo: Masahiro OSAWA

 その姿に心動かされたのか、横山選手のゴールが近くなると、団長安田さんは「よっこーやま」と会場に向け“横山コール”を求め始めた。すると、会場からも「よっこーやま」「よっこーやま」とコールがかかり、無事ゴール。会場には一体感が醸成され、MCが生み出したちょっとしたドラマを見ることとなった。稲城市史上初、後にも先にもない「横山」が連呼された日となったはずだ。

会場騒然の「バレンタインレース」

 2月14日のバレンタインデーにちなんで企画された「バレンタインレース」も会場を沸かせた。ルールは男女がペア(カップルに見えれば男同士でもOK)となり、コースを回って階段セクションで愛の告白をするというもの。団長安田さんの心に最も響いたペアが勝利というルールだ。

 優勝したのは、team轍屋の野下幸さんと片岡誉さんのペア。身長180cmはあろうかという大男の片岡さんを、女性の野下さんが担ぎ上げて階段を上り切るというまさかの展開に会場が騒然。かつ、愛の告白では、10年間付き合ってきたというリアルストーリーが団長安田さんの心を動かした。

野下幸さん(左)と片岡誉さん(右) Photo: Masahiro OSAWA
野下さんが片岡さんを抱きかかえて階段を上り切る展開に Photo: Masahiro OSAWA

「オープンレース」はジャイアントキリングに

 カテゴリー1のレースでなくとも、大いに盛り上がることを証明したのが30分のオープンレースだった。トップ争いを演じたのは、安藤光平選手(SHIDO-WORKS)と上野悠佑太選手(TEAM GRM)の2人。安藤選手はカテゴリー1レースでも上位に食い込む実力者。対して上野選手はジュニアカテゴリー(17-18歳)の若い選手。上野選手は年齢制限により、カテゴリー1クラスのレースを走れないため、安藤選手と競う機会はないが、それを可能にしたのが稲城クロスのオープンレースだった。

レースは安藤光平選手(先頭)と上野悠佑太選手(後方)の競り合いに。バニーホップで差を縮める上野選手 Photo: Masahiro OSAWA
上野悠佑太選手が最後は競り勝ち優勝 Photo: Masahiro OSAWA

 レースでは、スタート後にトップを独走していた上野選手を安藤選手が追走。安藤選手がとらえた後は、両者、抜きつ抜かれつの展開になったが、最後はジュニアクラスの上野選手が安藤選手を引き離し勝利した。思いも寄らない展開に会場は大いに沸いた。

誰もが楽しめるイベントに

キッズレースも開催。シケインを超える表情は真剣そのもの Photo: Masahiro OSAWA

 イベントを楽しんだのは、大人だけではない。小学生を対象にしたキッズレースのほか、小中高生を対象にしたスポーツ自転車の講習会「キッズサイクルチャレンジ稲城」が実施されたことも記しておきたい。

 講習会では、東京都立川市に拠点を置くサイクルレーシングチーム「東京ヴェントス」の選手たちが講師役となり、バランス感覚を養う練習を実施。今後、3月10日と4月14日に開催される「キッズサイクルチャレンジ稲城」に参加すると、特製サイクルウェア(上下セット)が貰えてしまうおいしいイベント(参加費用は各回500円と格安)なのだが、それもこれも、先に記したように、「シクロクロスの裾野拡大」という考えに結びついたものなのだ。

東京ヴェントスによる「キッズサイクルチャレンジ稲城」が開催 Photo: Masahiro OSAWA
一本橋を自転車で渡るなどバランス感覚を養う練習が行われた Photo: Masahiro OSAWA

 シクロクロスの裾野を広げるには、多くの人に楽しいイベントだと思ってもらうことが必要だ。本気のレース要素も必要だが、MCあり、企画レースありといったお楽しみ要素も欠かせない。稲城クロスにはどちらもが備わり、参加者から観戦者まで世代を問わずに誰もが楽しめるイベントだと感じられた。イベントを通して見る限り、オーガナイザーの考えにブレはなく、一貫しているのだ。

会場にはクロスコーヒーの出張サービスも Photo: Masahiro OSAWA

 存分に楽しめた稲城クロス。次回の開催も予定されているという。会場には今回からチャンピオンシステム・ジャパンが稲城市内で運営する「CROSS COFEEE」(クロスコーヒー)の出張サービスが行われていたので、「クロスコーヒーのコーヒーでも飲みに行ってみようか」という程度の軽い考えで次開催の稲城クロスに行ってみるといいだろう。きっと今回のように予期せぬ感動を味わえるはずだ。

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