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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<285>ピノとデマールの棲み分けでツールとジロの見通し明るく グルパマ・エフデジ 2019年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 絶好調で迎えた昨シーズン終盤、ティボー・ピノ(フランス)は勢いのまま、最高峰クラシックの1つであるイル・ロンバルディアのタイトルを獲得。この時期の活躍が高く評価されたオールラウンダーは、2014年以来のツール・ド・フランス総合表彰台に照準を定める。スーパーエースの目標が固まったことで、チームとしての方向性も定まった。エーススプリンター、アルノー・デマール(フランス)もジロ・デ・イタリアに回ることを決め、グランツールをメインとするチームの見通しは明るくなってきている。

2018年シーズン後半に大活躍したティボー・ピノ。勢いそのままに2019年シーズンの快進撃を誓う =イル・ロンバルディア2018、2018年10月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

ツール出場を即決 やる気に満ちるピノ

 ジュニア時代から将来のフランス自転車界を背負う存在といわれ、期待に違わない活躍を続けてきたピノ。ツールの総合表彰台に立ったのが24歳の時。以来、「いつツールの頂点に立っても不思議ではない」と言われつつも、ダウンヒルでの失速や体調不良、レースでのアクシデントなど、さまざまな出来事が障壁となり、高みを目指す彼を苦しめた。

 だが、決して腐ることなく競技に向き合う彼の姿勢は高く評価され、フランス国内での人気も高まる一方。ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)と二分する人気と知名度は、どんなことにも負けないピノへの期待の表れでもある。

2018年はイル・ロンバルディアで優勝。シーズン終盤にインパクトを残したティボー・ピノ =2018年10月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 実際のところ、要所ではしっかりと結果を残してきていた。好調で臨んだ2017年のジロは個人総合4位。昨年のジロは大会終盤に肺炎を患い、最終ステージで出走できなかったが、シーズン後半に復調。ブエルタ・ア・エスパーニャではステージ2勝を挙げ、個人総合では6位。好調を維持し、ロード世界選手権は9位、そして、イル・ロンバルディアでのビッグタイトル獲得。活躍が評価され、フランス・ヴェロマガジン主催の年間表彰「ヴェロ・ドール」では、フランス最優秀選手賞を受賞した。

 復権に向けた土台はいよいよ固まった。2019年シーズン、目指すところはツール一本。コース発表と同時に出場を即決したほど驚いたルート設定は、自身のホームコースが多数含まれているから。なかでも、プロンシュ・デ・ベル・フィーユの頂上フィニッシュとなる第6ステージは、同地近くに住んでいることもあり、5つの山越えすべて知り尽くしているという。

2019年はツール・ド・フランスに集中するティボー・ピノ。ホームコースが含まれやる気に満ちている =ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第19ステージ、2018年9月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ここ数年はツールに出場しても、ステージ優勝や山岳賞狙いを公言し、総合争いからは一歩引いた位置に立っていたが、そのような“線引き”からは卒業。ホームコースを走る大会前半からマイヨジョーヌ争いに加わっていく可能性も十分に見えてきた。

 ピノの魅力といえば、登坂力はもちろんのこと、上りの力をさらに生かす強烈なアタックと勝負強さ。有力選手同士の争いになればなるほど冴えわたるスプリント力も、総合系ライダー随一だ。本人は「ベルギーを走る大会序盤でのトラブルには注意が必要」と述べるが、問題なくフランス入国ができれば、一気にエンジンがかかってきそうだ。

 ロンバルディアを制したように、ワンデーレースへの適応力も高いが、アルデンヌクラシックについては流動的。ひとまず、シーズン前半は3月のティレーノ~アドリアティコ(イタリア)とボルタ・ア・カタルーニャ(スペイン)で脚試しの予定だ。

クラシックのタイトルを熱望するデマール

 山岳がピノなら、スプリントでは絶対的な存在のデマール。フランスを代表するスプリンターとして確たる地位を築き、獲得タイトルも豊富。ミラノ~サンレモを制したのが2016年。昨年もツールでステージ1勝を挙げるなど、主要レースでしっかりと強さを示した。

シーズン前半はクラシックでのタイトル獲得を目指すアルノー・デマール =ツール・ド・フランス2018第18ステージ、2018年7月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2019年もターゲットとするレースが多数控える。まず、3年ぶりのタイトル奪還を目指すミラノ~サンレモ。さらには、北のクラシックも当然視野に入ってくる。

 2012年のデビュー当時から、北のクラシックには高い意欲を持ち、なかでも「パリ~ルーベ制覇は夢」と公言するほど。2017年には6位となり、上位進出が可能であることを証明している。ポイントは、武器であるスプリント力を生かせるレース展開にできるかどうか。数人での優勝争いに持ち込むことができれば、勝機が一気に上がる。また、自己最高が2位のヘント~ウェヴェルヘムも得意とするレース。そろそろタイトルに手が届いてもよさそうだ。

 デマールを支えるスプリントトレインも、レースを追ううえでは注目していきたいところ。レギュラー格のジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)やラモン・シンケルダム(オランダ)らが、デマールを好位置へと引き上げスプリント態勢を構築する。

 なお、グランツールについてはジロに臨むことをこのほど発表。ここ2年はツールで活躍してきたが、今年は山岳比重が高いこともあり、「よりスプリントチャンスを多い方を選んだ」としてジロを選択。グアルニエーリらリードアウト陣もジロ参戦を予定している。

実力者をそろえて幅のある戦いを目指す

 昨年のブエルタ、グルパマ・エフデジは一躍台風の目となった。第5ステージでの逃げ切りの1人だったルディ・モラール(フランス)が、総合首位のマイヨロホを獲得し、その後4ステージにわたり、リーダージャージを着用。チームとしてもプロトンを統率する立場となり、その責務をまっとうした。

ブエルタ・ア・エスパーニャではマイヨロホを着用したルディ・モラール。2019年もチームの主力として走る =2018年9月1日 Photo: Yuzuru SUNADA

 立役者となったモラールは今シーズンも主力の1人としてチームを引っ張る。ステージレースでは主に山岳アシストを務めるが、クラシックを中心にワンデーレースではリーダー格となる。得意とするのはフレーシュ・ワロンヌ。2年前には8位に入っている。まずはアルデンヌクラシックが目標だ。

 チームは今年も28選手が所属。昨年からは3人が入れ替わる。新加入の3選手はいずれもBMCレーシングチームからの移籍で、タイムトライアルスペシャリストのシュテファン・キュング(スイス)らいずれも即戦力。これまで以上に戦術に幅を持たせることができそうだ。

 そして先日、待望のシーズン初勝利をゲット。2月9日のエトワール・ド・ベセージュ第3ステージで、マルク・サロー(フランス)が優勝。昨シーズン5勝を挙げた次期エーススプリンター候補が、チームに歓喜をもたらしている。

グルパマ・エフデジ 2018-2019 選手動向

【残留】
ブルーノ・アルミライル(フランス)
ウィリアム・ボネ(フランス)
ミカエル・ドゥラージュ(フランス)
アルノー・デマール(フランス)
アントワーヌ・デュシェーヌ(カナダ)
ダヴィ・ゴデュ(フランス)
ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)
ダニエル・ホールゴール(ノルウェー)
イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア)
マチュー・ラダニュ(フランス)
オリヴィエ・ルガック(フランス)
トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン)
ヴァランタン・マデュア(フランス)
ルディ・モラール(フランス)
スティーヴ・モラビト(スイス)
ティボー・ピノ(フランス)
ゲオルク・プライドラー(オーストリア)
セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス)
アントニー・ルー(フランス)
マルク・サロー(フランス)
ロメン・シーグル(フランス)
ラモン・シンケルダム(オランダ)
バンジャマン・トマ(フランス)
ブノワ・ヴォグルナール(フランス)
レオ・ヴァンサン(フランス)

【加入】
キリアン・フランキーニー(スイス) ←BMCレーシングチーム
シュテファン・キュング(スイス) ←BMCレーシングチーム
マイルズ・スコットソン(オーストラリア) ←BMCレーシングチーム

【退団】
ダヴィデ・チモライ(イタリア) →イスラエルサイクリングアカデミー
ジェレミー・ロワ(フランス) →引退
アルテュール・ヴィショ(フランス) →ヴィタルコンセプト・B&Bホテルス

今週の爆走ライダー−ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今年のブレイクが期待される次世代クライマーを紹介。

2019年期待のクライマーのダヴィ・ゴデュ =フレーシュ・ワロンヌ2018チームプレゼンテーション、2018年4月18日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ダヴィ・ゴデュは今年プロ3年目の22歳。毎年才能豊かな若手ライダーが羽ばたくフランス自転車界にあって、チームリーダーのピノに続くクライマーとして将来を嘱望される。17歳でナショナルチーム入り後は、常に世代のトップを走り続ける。2016年には「若手の登竜門」と言われるツール・ド・ラヴニールで個人総合優勝。鳴り物入りでトップチーム入りを果たした。

 チームは彼への英才教育として、ピノの山岳アシストというミッションを課す。特に昨シーズン後半は機能し、エースのイル・ロンバルディア優勝に大きく貢献。レースによっては最終アシストを任されることも。レースを通じて、トップライダーとしての戦い方を学んでいるところだ。

 今シーズンも“予定通り”にピノのアシストに任命された。2月14日開幕のツール・ド・ラ・プロヴァンスでシーズンインを迎える。チームのスポーツディレクターの1人、イヴォン・マディオ氏にして「プロ入り2~3年でトップクライマーになるだけのものは持っている」。今年は飛躍の可能性を秘めるシーズンとなる。

 普段は黒縁が印象的なメガネ男子。ファンとの記念撮影に応じると、「誰が本人か分からない」「まるで子供のよう」などとからかわれるのがチーム内でのお決まりなのだとか。ポテンシャル豊かな走りと、ひとたびバイクを離れたときとのギャップも彼の魅力だ。

2018年シーズン終盤は好アシストを連発。写真のミラノ〜トリノではティボー・ピノの優勝に大きく貢献した =2018年10月10日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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