パーツインプレッション2019クロスレシオ化を生かす無線電動コンポ 「RED eTAP AXS」の実力を実走チェック

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 無線変速という新たな境地を切り開いたスラムが2月7日、リア12段変速とスマートフォンアプリとの調和を果たした「RED eTAP AXS」(レッド・イータップ・アクセス)を世界同時発売した。続々と組み込まれる完成車が発表されるなか、いち早く市販モデルにインストールしたキャニオン「エアロード CF SLX ディスク 9.0 SL」を駆り、その実力をチェックした。

クロスレシオ化、電動変速、拡張機能性すべてが相乗効果を生み進化を果たした ©Canyon Bicycles / Nobuhiko Tanabe

レンジを広げた変速システム

 まず、大きく変わったのはドライブトレインだ。「X-Range」(エックスレンジ)と名付けられた変速システムは、12枚になったリアスプロケットと、コンパクトなフロントチェーンリングによって完成した。リアスプロケットはトップを10Tとし、ロー側は26T、28T、33Tの3種類がラインナップ。フロントのチェーンリングは50/37T、48/35T、46/33Tで構成され、スプロケットとの組み合わせによりクロスレシオ化したことが最大の特徴といえる。

ダイレクトマウント式で、アウター/インナー一体のチェーンリングを採用 ©Canyon Bicycles / Nobuhiko Tanabe

 小型化したフロントのアウターチェーンリングだが、フロント50T×リア10Tの組み合わせは従来のスタンダードである53T×11Tよりも重いギヤ比となり、高速走行でもギヤが足りなくなることはない。最も恩恵を受けるのがミドル域で、10-28Tのスプロケットでは10~17Tまでは歯数1つ刻みで変速が可能。速度に合わせて細やかに変速できるので、上りの最中に「あと少しだけ軽くしたい」というシチュエーションでも、ぴたりと求めるギヤ比に合わせることができた。よってテストライド中は変速回数が従来よりも多くなったが、電動コンポーネントの恩恵で余計な力を使わずノンストレスだった。

XRDドライバーボディ専用の12速スプロケット ©Canyon Bicycles / Nobuhiko Tanabe

 変速性能もブラッシュアップされ、さらに速く、よりスムーズになった。フロント側はアウターとインナーの歯数の差が縮まったことで、チェーンの移動幅も縮小。当然、変速も速くなり、チェーン落ちなどのリスクも低減された。リア側はシフトチェンジのスピードアップを特に体感できた。歯を滑るようにチェーンが流れ、確実に変速が決まるので走っていて気持ちが良い。大型化されたリアディレーラー内部には油圧ダンパーを備え、チェーンにしっかりとテンションがかけられている。これにより、チェーンが暴れても確実に、また素早いシフトチェンジが可能になった。

アプリ上から接続している各デバイスの状態がチェックできる Photo: Shusaku MATSUO

 ネーミングにも採用されたAXS(アクセス)も見逃せない進化の一つ。スマホアプリ「SRAM AXS」と前後ディレーラー、シフトレバーをペアリング(無線接続)でき、アプリ上で変速設定、トラブルシューティング、ファームウェアの更新が可能となる。アプリではユーザー登録が必要だが、SNS認証機能も備えており導入のハードルは低い。アプリと各デバイスの接続も容易だった。アプリ上で前後ディレーラーのバッテリー残量のほか、シフトレバー側のボタン電池(CR2032)の残量も確認可能だ。

 アクセスからは変速方法のモードも設定できる。用意されたモードは3つ。従来通りの「マニュアルモード」、リアの変速でフロントディレーラーが自動的に変速する「シーケンシャルモード」、フロントディレーラーを自ら動かした際にリア側を自動で最適な歯数に調整してくれる「コンペンセーティングモード」だ。

アプリ「SRAM AXS」から変速設定を変更できる Photo: Shusaku MATSUO

シームレスな変速を可能にしたモードも

 ここで筆者がおすすめしたいのがシーケンシャルモード。大小の差が縮まったフロントチェーンリングにより、自動的にフロントが変速してもギヤ比が大きく変わらないうえ、ショックもとても抑えられていた。左右の変速レバーを同時押しでフロントを変速するeTAP独特の操作は、正直、慣れを必要としてストレスを感じることがあったが、シーケンシャルモードでは案ずることはない。乗り手はリアの変速のみ気にするだけでよく、非常に直感的な操作で常に変化する速度にギヤ比を合わせることが可能になった。

 そのほかアクセスでは、レバーを押しっぱなしにした際の変速段数の設定、各ボタンの機能配置など細やかな設定項目を備えている。現在は英語のみとなるが、アイコンとグラフィックはシンプルかつ直覚的であり操作はしやすかった。今後、時期は未定だが日本語表示への対応も予定されているという。

シフトレバーには前作と比べるとはっきりした凹凸が施され、指がかかりやすくクリック感も明瞭 ©Canyon Bicycles / Nobuhiko Tanabe
レバーの大きさは前作とほぼ変わらない ©Canyon Bicycles / Nobuhiko Tanabe

 気になったのはグループセットの重量だ。これまで、軽さを前面に出してきたスラム・レッドだが、レッド・イータップ・アクセスはディスクブレーキ仕様で2518g、リムブレーキ仕様で2254gと前作から比べて微増となった。しかし、今回のモデルチェンジは数値上のスペックだけでなく、利便性の拡張を主に狙ったように思える。

キャリパーに21mmピストンを採用。パッドポケットは拡張され、放熱性を向上させた ©Canyon Bicycles / Nobuhiko Tanabe
12速専用のフラットトップチェーンはナローで軽量、かつ耐久性に優れた仕上がりに ©Canyon Bicycles / Nobuhiko Tanabe

 実際、ギヤ比のバリエーションが増えたことでパワーマネジメントに余裕が生まれ、実走でも最後まで“脚”を残すことができた。筆者のようにレース志向のサイクリストだけでなく、快適にライドを楽しみたい層や、アドベンチャー志向のグラベルロード愛用者にとっても恩恵が大きい。マウンテンバイク用新コンポーネントの「EAGLE AXS」や、ロックショックスのワイヤレス電動ドロッパーポスト「Reverb AXS」とシフトスイッチおよびブリップスの連携が取れていることも一因だ。ファームウェアのアップデートにより、今後さらなる他デバイスとの協調と拡張が期待できるだろう。

早速、新たなコンポーネントを取り入れた「エアロード CF SLX Disc 9.0 SL 」 ©Canyon Bicycles / Nobuhiko Tanabe

 組み込まれる完成車も続々と発表されている。キャニオンは今回テストしたエアロードに加え、「アルティメット」「エンデュレース」でレッド・イータップ・アクセス仕様のラインナップが既にリリースされている。

 コンポーネント単体の発売も2月7日の発表と同時に一斉に開始となり、取扱店舗へ順次デリバリーされるという。

松尾修作松尾修作

サイクリスト編集部員。10代からスイスのUCIコンチネンタルチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーにも参戦し、現在は社会人チーム「Roppongi Express」で趣味のレースを楽しむ。JBCFのカテゴリーはE1。数多くのバイクやパーツを試してきた経験を生かし、インプレッション記事を主に担当している。

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