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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<284>クラシックとグランツールで上位進出へ EFエデュケーションファースト 2019年展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 南半球・オーストラリアでの開幕シリーズがひと段落し、サイクルロードレースシーズンはいよいよヨーロッパにもやってくる。開幕ダッシュに成功した主要チームが明確になりつつある印象だが、EFエデュケーションファーストもその1つ。ワンデーレースや1週間程度のステージレースにめっぽう強いマイケル・ウッズ(カナダ)は好調を維持し、ツール・ド・フランスの頂点を望むリゴベルト・ウラン(コロンビア)もまもなくシーズンイン。かねてからのお家芸でもあるスプリントも好調で、長いシーズンへ向けた視界は良好だ。

トップライダーとして確たる地位を築くマイケル・ウッズ(先頭)。開幕戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーでも見せ場を作った =2019年1月18日 Photo: Yuzuru SUNADA / Pool

クラシックのタイトルに照準定めるウッズ

 2018年シーズンのロードシーンで、その株を大きく上げた1人がウッズである。3年前のプロ入りから主要レースで上位フィニッシュを経験してきたが、昨シーズンの快進撃はトップライダーとしての認知度を高めるに十分だった。タイトルこそブエルタ・ア・エスパーニャでのステージ優勝1つだけだったが、ビッグレースで残したインパクトは勝利に匹敵するものだったといえよう。

2018年のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで2位。頂点が見えるところまで実力を伸ばしている =2018年4月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな昨シーズンはワンデーレースで結果を残した。アルデンヌクラシックでは、リエージュ~バストーニュ~リエージュで2位争いを制し、表彰台の一角を確保。ブエルタを経て迎えたロード世界選手権では、優勝争いに残ってみせた。頂点に立つことこそかなわなかったが、殊勲の銅メダル。結果的にアルデンヌを盛り上げる選手たちが上位争いを繰り広げたことを考えると、クラシックのタイトルに手が届くところまでその実力が到達していると見てもよいだろう。

 ウッズの強みは、2年前のブエルタで個人総合7位を経験しているように、大小さまざまな上りをしっかりこなせるところと、人数が絞り込まれる中でも対応できるスピード。世界選手権ではアシストが手薄な状況ながら上位進出を果たすなど、展開に合わせてレースを組み立てられるスマートさも持ち合わせる。

UCIロード世界選手権では3位。大小さまざまな上りに対応できるのがマイケル・ウッズの強み =2018年9月30日 Photo: Yuzuru SUNADA

 タイトル獲得へ期待が高まるが、まずはアルデンヌ3連戦に照準を定めることになる。距離が長く、3つのレースの中でもとりわけハードなリエージュこそ、ウッズの見せ場でもあるが、2年前には11位でフィニッシュしているフレーシュ・ワロンヌも、その気になれば狙えるレース。急坂への適性ももちろんあり、決戦の場となるユイの壁を攻略できれば大きな結果が得られるかもしれない。

 早速快調な出足を見せている今シーズン。サントス・ツアー・ダウンアンダーでは、個人総合7位。第4ステージの勝負どころとされたコークスクリューの上りでアタック合戦に加わったほか、最終・第6ステージのウィランガ・ヒルでの頂上決戦も7位とまとめた。選手間では個人総合優勝候補にも挙がるなど、すでに一目置かれる存在であることを示した。

 また、1月30日から2月3日まで開催されたヘラルド・サンツアーでは、第2ステージで優勝。このときは、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)とのマッチアップを制しており、2日間リーダージャージを着用。個人総合こそ3位だったが、この時期にしては上出来だ。

 年齢的には32歳と、すでにベテランの領域に入っているが、サイクリストとしてのキャリアは25歳からと遅いデビューだった分、まだまだ伸びる余地はありそうだ。本人もそれを感じているとしており、2019年シーズンはより強いウッズの姿が見られそうだ。

ツール落車負傷の雪辱に燃えるウラン

 クラシックがウッズなら、グランツール路線はウランが不動のリーダーとなる。ジロ・デ・イタリアで2回、ツールでは1回の個人総合2位を経験。今年もツールを狙うことが濃厚で、パリ・シャンゼリゼのポディウムとともにグランツールレーサーとしての復権を目指すシーズンになる。

グランツールでは絶対エースとなるリゴベルト・ウラン。途中リタイアとなった昨年のツールの雪辱に燃える =ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第15ステージ、2018年9月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2年前のツール総合2位の活躍を受けて、本人も「残すは頂点だけ」と意気込んで臨んだ2018年大会。ステージを追うごとに総合でのポジションを上げていたが、第9ステージで発生した大規模落車で負傷。調子を落とし、第12ステージのスタート前に大会を去った。しかし、その後のクラシカ・サンセバスティアン6位、ブエルタ個人総合7位、イル・ロンバルディア4位と、しっかりと結果を残してみせたあたりは彼の意地と言えるだろう。

 とはいえ、トップ10圏内で満足するレベルの選手ではないことも確か。好調であれば、鮮烈なアタックで山岳ステージをモノにし、その勢いのままに総合争いでも優位な位置に立つのが得意のパターンだ。大崩れすることもなく、安定して上位戦線に身を置くあたりも豊富な経験からきている。ライバルは多いが、今のプロトンに絶対王者がいないだけに、群雄割拠の様相となっている中でチャンスがめぐってくる可能性も十分にある。

経験・実績十分のティージェイ・ヴァンガーデレンが加入。山岳アシストとしてウランを支えることになりそうだ =ツール・ド・フランス2018第17ステージ、2018年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 何より、その可能性を高めているのが山岳アシスト候補の充実だ。険しい山々に対応できるクライマーがそろっており、ウランの脇を固めることになる。有力視されるのが、今シーズン加入のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)やタネル・カンゲルト(エストニア)、このほど個人TTで国内王者に輝いたばかりのダニエル・マルティネス(コロンビア)やジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)の名も挙がる。総合エースとしても走ることのできる実力者だけに、棲み分けが行われることも考えられるが、誰がウランを支える役割を担うのかも、今年のツールでは注目ポイントになってくる。

 なお、ウランは2月12日開幕のツアー・コロンビア(UCIアメリカツアー2.1)でシーズンイン。ウインタートレーニングも順調にこなしたといい、その仕上がり具合が楽しみなところだ。

パヴェ、スプリントにも頼れるエースが控える

 現時点で27選手によって編成される(7月に1人加入予定)チームは、計算できる戦力がそろっており、戦ううえでの方向性が定まっている印象だ。

石畳系クラシックでのビッグタイトル獲得が望まれるセップ・ファンマルク =パリ〜ルーベ2018、2018年4月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 セップ・ファンマルク(ベルギー)がリーダーとなる石畳系クラシックは、そろそろビッグタイトルが欲しいところ。毎年大きな期待をされながらも、あと一歩のところで表彰台の頂点を逃してきたファンマルクを、力のあるアシスト陣がどう盛り立てるか。状況次第では自らも勝負に打って出ることができるテイラー・フィニー(アメリカ)や、ベテランのセバスティアン・ラングフェルド(オランダ)らの働きもポイントになる。

 スプリント路線も充実。エーススプリンターのサーシャ・モードロ(イタリア)はもとより、ダニエル・マクレー(イギリス)がヘラルド・サンツアー第1ステージでセンセーショナルな勝利。一気にモードロに続く存在へと名乗りを挙げた。ここに移籍組のモレノ・ホフラント(オランダ)も加わり、スピード重視のメンバー編成を組みやすい布陣となった。こうした選手たちをベテランのミッチェル・ドッカー(オーストラリア)や、フィニー、ファンマルクといった平地系ライダーが支え、ホットラインを形成する。

 チームは今年のヨーロッパ初戦として、2月7~10日のエトワール・ド・ベセージュ(UCI2.1)に出場。ホフラント、ラングフェルド、モードロ、ファンマルクのほか、マッティ・ブレシェル(デンマーク)、ローガン・オーウェン(アメリカ)、ジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ)の7人がスタートラインにつく予定だ。

エデュケーションファースト 2018-2019 選手動向

【残留】
マッティ・ブレシェル(デンマーク)
ネイサン・ブラウン(アメリカ)
ヒュー・カーシー(イギリス)
サイモン・クラーク(アメリカ)
ローソン・クラドック(アメリカ)
ミッチェル・ドッカー(オーストラリア)
ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)
アレックス・ハウズ(アメリカ)
セバスティアン・ラングフェルド(オランダ)
ダニエル・マルティネス(コロンビア)
ダニエル・マクレー(イギリス)
サーシャ・モードロ(イタリア)
ローガン・オーウェン(アメリカ)
テイラー・フィニー(アメリカ)
トム・スクーリー(ニュージーランド)
リゴベルト・ウラン(コロンビア)
ジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ)
セップ・ファンマルク(ベルギー)
マイケル・ウッズ(カナダ)

【加入】
ショーン・ベネット(アメリカ) ←ヘーゲンズバーマン・アクセオン
アルベルト・ベッティオル(イタリア) ←BMCレーシングチーム
ヨナタン・カイセド(エクアドル) ←メデジン
モレノ・ホフラント(オランダ) ←ロット・スーダル
タネル・カンゲルト(エストニア) ←アスタナ プロチーム
ラクラン・モートン(オーストラリア) ←ディメンションデータ
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ) ←BMCレーシングチーム
ルイス・ビラロボス(メキシコ) ←エーボロ ※7月1日加入予定
ジェームス・ウェーラン(オーストラリア) ←ドラパック・EF

【退団】
ブレンダン・キャンティ(オーストラリア) →未定
ジュリアン・カルドナ(コロンビア) →アンドローニジョカトリ・シデルメク
ウィリアム・クラーク(オーストラリア) →トレック・セガフレード
キム・マグヌソン(スウェーデン) →リワル・レディーネス
ダニエル・モレノ(スペイン) →未定
ピエール・ロラン(フランス) →ヴィタルコンセプト・B&Bホテルス
トム・ファンアスブロック(ベルギー) →イスラエルサイクリングアカデミー

今週の爆走ライダー−ダニエル・マクレー(イギリス、EFエデュケーションファースト)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 その名が轟いたのは、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト(現チーム アルケア・サムシック)の一員として出場した2016年のツール。ステージ3位を含む4度のトップ10フィニッシュ。それが特に大会序盤だったこともあり、驚きをもって彼は知られることとなった。

ヘラルド・サンツアー第1ステージでステージ優勝。勝利量産が期待されるダニエル・マクレー Photo: Con Chronis Photography

 だが、その頃には下地がすでに固められていた。17歳で世界トップクラスのイギリスナショナルチーム入りを果たすと、翌年にはマディソンでジュニア世界チャンピオンを経験。その時のパートナーが、いまをときめくグランツールレーサー、サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)だった。

 当時ともに走ったイェーツ兄弟とは道のりは違えど、ロードのトップシーンで顔を合わせる立場となった。現チームに加入した昨年はチーム事情もあり出場レースが限定されてしまったが、今年はヘラルド・サンツアーでシーズン初勝利。エンジン全開でアピールに燃える。

 とにかく今年はやる気満々だ。強敵が多いことは認めながらも、「特定のスプリンターがシーズンを支配するとは思わない」と言い、自らにもチャンスがめぐってくることを期待する。そして1つ勝ったことで、大きな手ごたえをつかんだ。ここから勢いに乗って勝ち星を重ねられるか。

 6歳で乗り始めたという自転車。中学生まではラグビーと並行していたというが、好成績を収めていた自転車を選択。もっとも、本人いわく「運動音痴」で、自転車かラグビーしか選べなかったのだとか。どうやら、そのチョイスは間違っていなかったようである。

ジュニア時代から各年代のトップを走ってきたダニエル・マクレー。ロードシーンでのブレイクも間近だ =サントス・ツアー・ダウンアンダー2019第1ステージ、2019年1月15日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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