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栗村修の“輪”生相談<146>40代男性「プロ選手の長期的な健康状態が心配です」

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 40代後半、ロードバイク歴5年で、ニセコクラシックやツール・ド・沖縄をメインレースとして日々トレーニングしています。

 自転車に乗るようになって体重も絞られ、体脂肪も低下し、健診の数値も改善、毎日食事もおいしく、大変健康的に過ごせていると思います。このような生活がずっと続くといいなぁと思いますが、一方でプロの選手たちの過酷なトレーニング、過酷なレーススケジュールを見ていると、彼らの長期的な健康状態について心配したりもします。

 そこで選手として走られていた栗村さんに質問ですが、プロの選手の引退後の健康状態ってどうなんでしょうか。みなさんその後も健康的に過ごされるのか、それとも意外に寿命が短かかったりとかあるんでしょうか。

(40代男性)

 自転車に限らず、スポーツの本質を突く重大なご質問です。一般に健康的なイメージがあるスポーツですが、取り組み方によっては健康にとってマイナスにもなりえるでしょう。

 僕も昔から感じていましたが、少なくとも自転車は、「競技」として乗った瞬間に過酷になる乗り物です。自分のペースでのんびりサイクリングするならともかく、レースなどで他人のペースで引きずり回されると、負担は大きくなります。厳しいレースの後は熱が出たり、お腹が痛くなったりしたものですが、それは体が悲鳴を上げていたのでしょう。ステージレースに至っては、毎朝起きるだけでも辛いくらいでした。

 ただし、これらのことは、自転車競技に限ったことではなく、世の中のほとんどのスポーツ、もっと言えば「すべての仕事(勉強)」に関しても同じことが言えるのかもしれませんね。「人に勝つ」「人より優れた結果をだす」ためには、人よりも多くの努力をする必要があり、その結果、どうしても無理をしてしまうことになります。

体を酷使する選手の健康が心配に(ロンド・ファン・フラーンデレン2018) Photo: Yuzuru SUNADA

 問題は、その「無理」が、どれだけのプラスの生み出し、逆にどれだけのマイナスに繋がってしまうか。それを考えなくてはなりません。競技としてスポーツに取り組めば、相応の負担が身体にかかり、年齢によっては様々なリスクを誘発しかねません。

 一方で、運動を全くせずに暴飲暴食し、飲酒・喫煙している人のリスクと比較すると、競技としてスポーツに取り組んでいる人のリスクの方が相対的に低いようにも感じます。また、「見た目」の若々しさ(カッコよさ)は間違いなくスポーツをしている人に軍配があがるでしょう。

 本当に健康のことだけを考えて身体を動かす場合は、ご自身が心地よく感じるかどうかを「健康的かどうか」の基準にするといいかもしれませんね。

 質問者さんは、40代後半とのことです。検診の数値が改善されたのは良かったですが、こういうご質問をされるということは、そもそもこの先、今の強度で趣味を続けていって大丈夫なのかという不安があるのかもしれません。

 私自身の経験で言いますと、元競技者の寿命や健康寿命などが平均よりも明らかに短い、と感じたことはありません。むしろ自転車に乗っている人たちは普通の人よりも若々しいと感じます。

昨年のジロ・デ・イタリア会場に姿を見せた51歳のマリオ・チポッリーニ氏 Photo: Yuzuru SUNADA

 僕は引退するとき、「ああ、もうつらいトレーニングをしなくていいんだ」と心から解放感を味わった記憶があります。僕は嫌々練習するタイプでしたし、ダイエットにも苦しみました。引退後は一時暴飲暴食もしましたね。

 ただ、最近は健康に気を使うようになってきました。1日1万歩以上歩くようにしていますし、時間を見つけて自転車に乗ることもあります。面白いのは、最近になって、ゆっくり乗ることの楽しさを知ったことです。元選手ですので、昔は乗るともがいてしまいがちでしたが、スピードだけが自転車の楽しみではなかったんですね。これは発見でした。

 現在の質問者さんは、比較的「高強度の自転車」を楽しまれていると思うので、楽しいと感じるうちは今のままで良いのかな、とも思います。一方で、自分を追い込むことだけが自転車の楽しみではありませんので、少し疲れたら、のんびり乗ることをおすすめします。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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