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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<283>勝利量産へ絶好のスタートダッシュ ドゥクーニンク・クイックステップ 2019年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 南半球を中心に2019年のロードシーズン開幕を告げるレースが展開中。その中にあって、ドゥクーニンク・クイックステップは早くも複数勝利を挙げ、今年も勝利量産を予感させている。エーススプリンターのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)、昨年のツール・ド・フランス山岳賞のジュリアン・アラフィリップ(フランス)といった、いまをときめくスターに限らず、フィリップ・ジルベール(ベルギー)といったベテラン、そしてエンリク・マス(スペイン)という新星も控え、どこからでも戦える体制を整える。ベルギー伝統のチームは今年、どこまで強さを見せつけるのか。2019年の戦いを展望してみよう。

1月27日のカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースを制しトロフィーを手にするエリア・ヴィヴィアーニ。最高のシーズンインとなっている ©︎Tim de Waele/Getty Images

充実のときを過ごすヴィヴィアーニ

 おなじみとなったブルー基調のジャージが、2019年に入っても躍動を続ける。その筆頭格に挙がるのが、今シーズンすでに2勝を挙げているスーパースプリンター、ヴィヴィアーニだ。

カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースで悲願の優勝を果たしたエリア・ヴィヴィアーニ(右)。2位だった昨年のリベンジを果たした ©︎Tim de Waele/Getty Images

 彼は昨年のイタリアチャンピオンとあって、前述のブルー基調のジャージではないものの、グリーン・ホワイト・レッドのイタリアンカラーでそのスピードを見せつけている。UCIワールドツアー開幕戦のサントス・ツアー・ダウンアンダー第1ステージを制したのに続き、カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースでも快勝。直近の優勝となった後者に関しては、昨年2位だったこともあって、今年のリベンジには相当なこだわりがあったことを明かしている。

 オーストラリアでのシーズンインを成功裏に収めたヴィヴィアーニだが、改めてフィニッシュ前での爆発的なスピードとアグレッシブさを証明した。特にダウンアンダーの第1ステージは、スプリントトレインが崩壊しながらも自らラインをこじ開けての勝利。勝負勘の鋭さというよりは、本能的な攻めの姿勢と、現在のトップスプリンターの中では群を抜くフィニッシュ前数百メートルでの加速力が決め手になっているといえる。

 一方で、カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースでは、ミケル・モルコフ(デンマーク)とのホットラインが機能。チームとしてスプリントに向けた主導権を確保できれば、パーフェクトな形でヴィヴィアーニを発射させることができることも明白となった。

サントス・ツアー・ダウンアンダー第1ステージを制したエリア・ヴィヴィアーニ。シーズンインから絶好調だ =2019年1月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 冬にはバックボーンであるトラックレースにも参戦。6日間レースに積極的に出場したことも、現時点での好コンディションに現れているといえるだろう。果たして、この調子がどこまで維持できるか。当面の目標には3月23日のミラノ~サンレモを挙げる。レース終盤の丘越えは問題なくクリアできると自信を見せており、あとはレース展開をどう構築していくかがポイントになる。また、グランツールはひとまずジロ・デ・イタリアには出場する見通し。その後のツール・ド・フランスについては流動的だが、出場となればポイント賞のマイヨヴェールの有力候補となるのは間違いない。

 今年の2月に30歳を迎え、いまがまさにライダーとしてのピークに差し掛かっているスピードスター。昨年はシーズン最多勝となる18勝を挙げたが、今年はそれを上回るだけの勝ち星を重ねる可能性も大いにある。

ブレイク再燃を狙うアラフィリップ

 2018年シーズンに大ブレイクを果たしたライダーの1人、アラフィリップ。2015年のアルデンヌクラシックですい星のごとく現れ、以来クラシックハンターの一角としてすっかりトップライダーの仲間入り。2017年に膝のけがでクラシックシーズンを棒に振ったが、そのシーズンの後半に息を吹き返すと、その勢いはとどまることを知らず。そして昨シーズン、ついにその才能が開花した。

ツール・ド・フランス2018第16ステージで独走勝利を決めた際のジュリアン・アラフィリップ。この大会では山岳賞のマイヨ・アポワを獲得した =2018年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 激坂決戦でおなじみのフレーシュ・ワロンヌでクラシック初制覇。アルデンヌの主役世代交代を印象付ける活躍を見せると、ツールではステージ2勝をきっかけに山岳賞のマイヨ・アポワをゲット。地元フランスのファンを熱狂させた。

 また、あまり注目されていない点として、出場したステージレースの多くでステージ優勝を挙げる勝負強さも発揮。9月に出場したツアー・オブ・ブリテンとツール・ド・スロバキアでは個人総合優勝を果たしている。

 この活躍の要因に本人は、シーズン初戦で臨んだコロンビア・オロ・イ・パス(今年からツアー・コロンビアに改称)でのステージ優勝を挙げる。1年の早い段階で好調であることや実力の向上を感じられたことで、自信をもって大きなレースでも戦うことができたとする。

 今年は昨年以上の活躍を期待されるところだが、本人はいたって冷静。まずは昨年のブレイクをフロックではないことを今後の戦いぶりをもって示したいとしている。すでにシーズンインをしており、現在参戦中のブエルタ・ア・サンファン(アルゼンチン)第2ステージではアタックを決めて鮮やかに勝利。幸先のよいスタートを切っている。

1月28日のブエルタ・ア・サンフアン第2ステージで勝利。幸先の良いシーズン序盤となっている ©︎Sigfrid Eggers

 平地・上りを問わないオールラウンドな対応力と、タフな展開になった時の巧みなレース運びは26歳とは思えない老獪さ。以前は早めのアタックで自滅するケースもあったが、最終局面まで勝負を焦らずとも勝ちきるだけの強さを身につけている。ここぞという時のスプリントも魅力だ。

 いま一番波に乗っているクラシックハンターのシーズン前半の目標は、もちろんアルデンヌクラシック。チーム内に実力者がそろっている関係から、単独エースとの立ち位置になることはないとみられるが、レース展開次第では2011年のジルベール以来となる、アムステル・ゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ~バストーニュ~リエージュの3レース完全制覇の偉業を達成することだってあり得る。

 クラシックシーズン後は、ツールに向けて調整する予定。まだ3週間を上位戦線で戦うことは難しいが、昨年マイヨ・アポワを獲得したように、狙ったステージでは上級山岳をしっかりと走ったこともあり、山岳賞2連覇を目指すことも考えらえる。

ビッグタレントをそろえて昨年の73勝以上を目指す

 資金繰りからフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAE・チームエミレーツ)やニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)といった主力の放出を余儀なくされたとはいえ、どこからでも勝利を狙える戦力の充実はこれまで同様。エースクラスに限らず、ニュースターが生まれても不思議ではないところも、このチームの魅力だ。

パリ〜ルーベ制覇を夢見るフィリップ・ジルベール。2018年には11年ぶりの出場を果たした =2018年4月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今年7月で37歳になるジルベールは、まだまだやる気。「モニュメント全制覇の実現」がモチベーションになっているといい、いまだ勝てていないミラノ~サンレモとパリ~ルーベでの戴冠を夢見る。ミラノ~サンレモはヴィヴィアーニやアラフィリップらとの共闘になる。また、パリ~ルーベに関しては昨年、11年ぶりの出場となったが、15位とまとめており、レース適性には問題がない。とはいえ、チームメートとの関係性を崩してまでタイトルを獲りにいくつもりはないとしており、そのあたりはベテランらしくレース展開に合わせた走りを重視する心積もりだ。

 今年はグランツール路線の動向も注視したいところ。昨年のリエージュ~バストーニュ~リエージュを制したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)と、ブエルタ・ア・エスパーニャで個人総合2位の大躍進を遂げたマスが総合エースとして確立できたことで、チームとしてのシーズンの送り方にも幅が生まれている。

 ユンゲルスはこれまでもグランツールでは結果を残してきたが、今年は得意のジロを狙っていく。得意のタイムトライアルで順位アップが狙えるステージ構成とあり、自己最高位である2016年の個人総合6位を上回るリザルトが現実的な目標となりそうだ。

2018年のブエルタ・ア・エスパーニャで大躍進の個人総合2位。エンリク・マスは2019年、ツール・ド・フランスデビューが予定されている =2018年9月16日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、24歳のマスは今年、ツールデビューが内定。昨年のブエルタでは第3週で一気に調子を上げたが、ツールでも同様に大会終盤の浮上で上位進出なるか。山岳ルートが厳しくなればなるほど力を発揮するあたりはブエルタで証明済み。また、こちらもタイムトライアルに強みがあり、僅差でTTステージを迎えることになれば順位を一気にジャンプアップさせることも。

 チーム事情により山岳アシストを豊富に揃えられない見込みだが、その辺は本人も織り込み済み。昨年のブエルタも単騎になる場面が多かったとし、ライバルの動きを見ながら適切な判断を下していけるあたりのスマートさも若くして強さを発揮している要因と見ることができる。何より、ツール出場がかなえば、新人賞のマイヨブラン候補筆頭に挙がりそうだ。

北のクラシックのエース候補、イヴ・ランパールト。ベルギーチャンピオンジャージが目を引く =ツール・ド・フランス2018第2ステージ、2018年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このチームの「お家芸」である北のクラシックは、新エース候補のイヴ・ランパールト(ベルギー)とゼネク・スティバル(チェコ)が控える。この2人にジルベールが加わって、トリプルリーダー態勢で臨むことになりそう。

 ヴィヴィアーニが軸のスプリントについても、アルバロホセ・ホッジ(コロンビア)とファビオ・ヤコブセン(オランダ)の1996年生まれコンビが台頭しており、平坦レースを席巻する勢い。モルコフのほか、マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)、ファビオ・サバティーニ(イタリア)、フロリアン・セネシャル(フランス)といったリードアウトマンがそろっており、どのような組み合わせを施していくのかも注目。

注目のスーパールーキー、レムコ・エヴェネプール。現在出場中のブエルタ・ア・サンフアンでは第2ステージまでを終えて新人賞首位に立っている ©︎Sigfrid Eggers

 もう1人、忘れてはならないのが、1月25日に19歳になったばかりのスーパールーキー、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)。昨シーズン、ジュニア年代で無敵を誇った若武者は、飛び級でプロ昇格。現在参戦中のブエルタ・ア・サンフアンでは上位陣と混じってフィニッシュをするなど、早くも高いレベルに適応しつつある。当面は無理はさせず、適性を見ていくことになるが、ルーキーイヤーから驚きの走りを見せることがあるかもしれない。なお、UCIワールドツアーデビューは、2月24日開幕のUAEツアーが予定されている。

 ちなみに、チームタイトルスポンサーであるドゥクーニンク社は、ベルギーの建材ブランド。2021年までのスポンサー契約に合意をしていることが地元メディアの取材によって明らかになっている。

ドゥクーニンク・クイックステップ 2018-2019 選手動向

【残留】
ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
カスパー・アスグリーン(デンマーク)
エロス・カペッキ(イタリア)
レミ・カヴァニャ(フランス)
ティム・デクレルク(ベルギー)
ドリス・デヴェナインス(ベルギー)
フィリップ・ジルベール(ベルギー)
アルバロホセ・ホッジ(コロンビア)
ファビオ・ヤコブセン(オランダ)
ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
イーリョ・ケイセ(ベルギー)
ジェームス・ノックス(イギリス)
イヴ・ランパールト(ベルギー)
ダヴィデ・マルティネッリ(イタリア)
エンリク・マス(ベルギー)
ミケル・モルコフ(デンマーク)
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)
ファビオ・サバティーニ(イタリア)
フロリアン・セネシャル(フランス)
ピーター・セリー(ベルギー)
ゼネク・スティバル(チェコ)
ペトル・ヴァコッチ(チェコ)
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)

【加入】
レムコ・エヴェネプール(ベルギー) ←ジュニア
ミケルフレーリク・ホノレ(デンマーク) ←チーム ワオー

【退団】
ローレンス・デプルス(ベルギー) →ユンボ・ヴィスマ
フェルナンド・ガビリア(コリンビア) →UAEチームエミレーツ
ジョナタン・ナルバエス(エクアドル) →チーム スカイ
マキシミリアン・シャフマン(ドイツ) →ボーラ・ハンスグローエ
ニキ・テルプストラ(オランダ) →ディレクトエネルジー

今週の爆走ライダー−レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 順調なオフを過ごし、サントス・ツアー・ダウンアンダーでシーズンイン。オーストラリアではヴィヴィアーニをスプリント勝利に導くなど、大きなミッションに従事した。

シーズン初戦としてサントス・ツアー・ダウンアンダーに臨んだレミ・カヴァニャ =2019年1月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 プロ3年目の23歳。アンダー23カテゴリー時代は個人タイムトライアルで強さを発揮。次々と新鋭が現れるフランス自転車界にあって、TTスペシャリストとして期待が高まった。

 プロ入り後は走りの幅を広げるべく、TTにとどまらずあらゆるチャレンジをしている段階。昨年はシーズン最終戦のツアー・オブ・広西で個人総合4位。ステージレースでの走りに手ごたえをつかんだという。

 あこがれはジルベール。身近に目標がいることはプラスになるばかり。レースを一緒に走り、必要に応じて得られるアドバイスがモチベーションを高めている。

 ただ、ジルベールの領域に到達するまでは、もう少し時間と経験が必要であることも理解している。ビッグクラシックのメンバー入りにばかり執着するのではなく、小さなレースであってもひとつひとつ大切にすることを意識する。その先に、夢のツール・デ・フランドル制覇があると信じている。

 今年の目標は、パリ~ニースのステージ優勝とフランス選手権優勝。グランツールはジロかブエルタになる見通しで、出場がかなえばステージ優勝を目指す。

 チームの強さの理由に「選手間の信頼関係の強さ」を挙げる。どんな犠牲を払ってでもチームの勝利につなげることをみんなが認識していることがすべてだと。でもやっぱり、勝つチャンスがあるならモノにしたい。「自分に合ったレースプログラムが与えられると思う」との言葉からは、今シーズンを成功させる自信を感じさせる。

サントス・ツアー・ダウンアンダー第1ステージを走るレミ・カヴァニャ。この日はエリア・ヴィヴィアーニの勝利に貢献した。2019年はパリ〜ニースとフランス選手権に照準を定める Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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チーム展望2018-2019 週刊サイクルワールド

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