Cyclist選出・サイクリストへお勧め図書⑰キングはいかにしてキングとなったのか『三浦恭資の必勝!自転車ロードレース』

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 Cyclist執筆陣を中心に、サイクリストにお勧め図書を紹介する本企画。今回は元ロードレーサーのライター、米山一輝が『三浦恭資の必勝!自転車ロードレース』(アテネ書房刊、三浦恭資著)を紹介します。日本ロードレース界の最強レーサーの一人としてかつて「キング」の名を轟かせた三浦恭資(きょうし)氏が、1990年代初頭に著した一冊です。

国内プロロードレースのさきがけとして活躍した三浦恭資さんによる『三浦恭資の必勝!自転車ロードレース』 Photo: Ikki YONEYAMA

26 years ago

 1993年4月1日初版の書籍です。ということは、もう26年も前の本。新品の流通はとうに途絶えているはずですが、まだ中古の入手は容易だったり、図書館にも割と置かれていたりしますし、今時のサイクリストの皆さんは逆に知らない本ではないかと思い、今回紹介することにしました。ところで1993年と言えば、私がスポーツサイクルに乗り始めた年です。「26年前」と自分で書いてびっくりしました(余談)。

 著者の三浦恭資さんは「キング」の別名を持ち、全日本ロードの優勝多数(氏の全盛期はプロアマ時代だったので、全アマだったり全プロだったりですが)、ロードレースでソウル五輪、マウンテンバイク・クロスカントリーでアトランタ五輪の日本代表、1990年の宇都宮での世界選手権ロード開催を機にプロ登録となり、その後も20年近く国内トップレーサーとして活躍しました。そんな三浦さんが、宇都宮のジャパンカップが始まってすぐの頃に、それまで10年あまりの選手生活を振り返った一冊になっています。

 表紙に書かれた売り文句としては「プロレーサー・ミウラが初めて語るレース必勝法」とあります。ですが、技術的な内容は少なめ。日本のロードレース界にキングとしてさっそうと君臨した三浦選手の、自転車人生における数々の壮絶な冒険談が詰まっています。巻頭の言葉に「読者のみなさんがそのまま真似するだけでは、僕には絶対勝てません」とありますが、正直言って誰も真似できないと思います。

根源的な強さとは

1990年のツール・ド・おきなわ優勝の表彰台。2位は森幸春さん、3位は浅田顕さん、4位は今中大介さんという、そうそうたる布陣 Photo: Ikki YONEYAMA

 ではこの本は役に立たない昔話なのか?となりますが、決してそうは思いません。近年自転車ロードレースでは、様々な面で近代化や科学的メソッドが取り入れられていますが、その本質的な部分で「旅」「冒険」の要素は今も色濃いです。どれだけパワーメーターを使ってトレーニングしたところで、それは一つの道具、手段に過ぎません。最終的にはいかに人生を賭けてペダルを一踏みでも多く回すか。そんな人間としての総合的な「強さ」が試されるのがロードレースなのです。ちょっとロマンチストすぎるでしょうか?

 ともあれ、そういった「ヒトとして強さとは一体何なのか?」ということを考えさせられる一冊です。当時最先端のトレーニングメソッドといった部分にあまり触れていないからこそ、逆に現在でも変わらず通用する内容を持った本になっているのではないでしょうか。

 二昔ほど前に一昔前くらいの事を書いた本なので、現在は監督として活躍する、大門宏さんや浅田顕さん、安原昌弘さんといった名前が現役選手として登場するのも楽しいところです。また途中、一時期文無しになって奈良の山奥にこもり、木を切ったり穴を掘ったりスズメバチの巣やマムシを取って売ったりという生活をするくだりがありますが、この時期に三浦さんが知り合ったのが現在キナン会長の角口氏だそう。この縁が後年ツール・ド・熊野の開催や現在のキナンサイクリングチームへとつながっていくのですが、それは本書のその後の話になっていきます。

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