Cyclist選出・サイクリストへお勧め図書⑰世界で活躍するための処世術も 欧州ロードレースのリアルがわかる『挑戦するフォトグラファー』

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 Cyclist執筆陣を中心に、サイクリストにお勧め図書を紹介する本企画。今回はCyclist編集部の大澤昌弘が『挑戦するフォトグラファー 30年の取材で見た自転車レース』(未知谷刊、砂田弓弦著)を紹介します。本場ヨーロッパのサイクルロードレースのリアルをフォトグラファー視点から書き記した一冊です。

ロードレースのリアルを写真家視点から描いた『挑戦するフォトグラファー』 Photo: Masahiro OSAWA

読み方の視点はひとつではない

 本書を端的に言えば、「30年におよぶ取材で見てきた本場ヨーロッパのサイクルロードレースのリアル」がわかる一冊です。著者の砂田弓弦氏が渡欧し、フォトグラファーになり、海外で身を立てるまでの苦労話が記されています。ホテル、クルマ・オートバイ、撮影機材のトラブルなど、実体験をベースにした記述は、”知りたい”という欲求に十分に応えてくれるものでした。

 しかし、そうした読み方だけではもったいないのが本書です。お勧めは「1レースで12台しか走れないオートバイに乗ったサイクルフォトグラファーに、砂田氏がなぜなれたのか」という視点を持って読むことです。

目次がシンプルだからこそ読者が目的を持って能動的に読もうとすることで得られるものが大きく変わるとも感じた Photo: Masahiro OSAWA

 著者が渡欧したのは1989年。もちろん、インターネットは存在せず、情報収集の手段がかなり限られていました。海外で暮らすことのハードルの高さは今とは比べ物になりません。

 そうした時代に、日本人のいない自転車の本場で自分の足場をどうやって築いていったのか。数多くの欧州のフォトグラファーが活躍するなかで、日本人である著者が本場で認められるには何が必要だったのか、という視点を持って読み進めれば、単にロードレースの知識を得るといった以上のものが得られます。

文化の違う相手に認めてもらう

 その答えともなりそうなのが、本書に記されている「歴史観」です。著者はロードレースの歴史を学び、取材相手と対等に話せることが重要だと本書のなかで説きます。そのために、昔のレースの歴史を猛烈に勉強し、歴史観を身につけたと記しています。

 単なる過去の出来事の把握にとどまらず、事実に解釈を加えた歴史観にまで昇華させるには、ものすごい時間と努力を要したはずです。そこまでしてでも、歴史観を得ようと考えたのは、なぜか。当時の時代環境を想像しつつ、著者が本書に記した様々なエピソードを合わせていくことで、著者の真意をうかがい知ることができるはずです。

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